第131話:踏み抜いた最大級の地雷!小さな雀の大きな深淵!
完全に詰んだ。
頭上から迫る漆黒の死霊葬衣は、確実に凛愛の頭上を捉え、その若き魂を終わりなき死の葬列に加えようとしていた。
触れる寸前、死の冷気がギャルの前髪を凍らせていく。
しかし、その絶望が凛愛の肉体を飲み込もうとした刹那。
『凛愛っ!』
凛愛の髪の中から、銃弾のような勢いで飛び出してきたチュンペーの小さな身体が、身を挺してその致命的な一撃を代わりに受け止めたのだ。
「チュ、チュンペーーーっ!?」
凛愛の悲鳴が極寒の空に響き渡る。
小さな雀の身体は、迫り来る巨大な死の衣の影にあっさりと包み込まれ、完全に視界から消え去ってしまった。
「ウィッヒヒヒ! 哀れな使い魔如きが、主を守るために最後の悪あがきをしてみせたか! だが、儂の衣に触れたからには、その矮小な鳥の魂もろとも、永遠の苦悶の家畜となるだけじゃ!」
ネクロスが勝利を確信し、醜い高笑いを上げる。
死霊葬衣の触手がチュンペーの小さなすべてを飲み込み、その奥深くにある魂へと、冷酷な死の指先が触れた。
直後。
ネクロスの精神は、自らが引きずり込まれた未知の光景に、言葉を失って凍りついた。
雀の、あの小さくて丸い身体の、さらに奥。
魂の境界線を越えた、遥か、遥か彼方の精神の深淵。
そこには、ピンクの雪が降るファンシーな凍土など影も形もなかった。
天を突くほどに巨大な、禍々しくも圧倒的な威厳を放つ黒い玉座。
並の死霊術など一瞥で塵に帰すような、恐るべき強大な魔力を持った何か。
そして玉座の背後には、地平線の彼方まで果てしなく続く、漆黒の鎧を纏った軍勢が、じっと静寂を保って控えていた。
仇なすものを容易く圧殺し、ひれ伏せさせるほどの、魔界を覆う魔王の威圧。
ネクロスの精神が震える。
「なんじゃ……これは……」
愕然とするネクロスの意識へ、さらに濁流のような記憶が直接流れ込んでくる。
それは、かつて魔界の全土を完全に統一した、唯一無二の絶対的な王。
七大魔公爵を従えた、冷徹なる支配者。
魔族全ての頂点に君臨した存在。
⸻クロウヴァルド・シルフェリウス。
その名前を魂に刻み込まれた瞬間、ネクロスの声は恐怖のあまり見事に裏返った。
「あぁ…有り得ぬ!……断じて……貴様……あぁ…いや、クロウヴァルド……様」
ネクロスの精神体が、ガタガタと音を立てて激しく震え始める。
雀の姿に身をやつしてはいようとも、その魂の格、積み上げてきた絶望の質量は、大死霊術師でさえ触れて良いものでは決してなかったのだ。
(ぁあ、有り得ぬ……まさか………なぜ、あの伝説の魔王が……)
「このような、ただの人間の小娘を守っておるのじゃ……」
小さな雀を飲み込んだはずの死霊葬衣が、逆に内側から溢れ出る圧倒的な漆黒の魔圧によって、ミリミリと悲鳴を上げながら押し裂かれようとしていた。
ネクロスの完璧なはずの勝利の方程式は、魔界で最も怒らせてはいけない「雀の姿をした元魔王」の地雷を踏み抜いたことで、一瞬にして絶望的な崩壊へと向かうのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・超絶心配: チュンペーが自分の代わりに攻撃を受けたと思い込み、「チュンちゃん! 嘘でしょ、あたしのために盾になるなんて、そんな死亡フラグみたいな展開いらないから!」と、金色の目を潤ませて大パニックになっている。
・相棒:
・魔王の威圧(魂の限定解放): 死霊葬衣に魂を触れられたことで、眠っていた元魔王の深淵が現れる『おい、老いぼれ。我の可愛い相棒に手を出すだけでなく、魂の玉座をその汚い死霊の衣で汚そうとは……万死に値するぞ』と、脳内でネクロスを完全に見下ろしている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・懐しむ聖光剣 : 「500年前の闘いを思い出すわい!その威厳、些かも衰えておらんな!」と、セリアと共に挑んだ魔王との激戦を思い出していた。
・周囲の状況:
・ネクロス(精神崩壊・大パニック): 雀の魂の格があまりにも高すぎて、自分が編み上げた幾億の亡者たちが逆に怯えて服の形を維持できなくなっており、「バカな! 儂の法衣が、ただの鳥一匹に怯えておるだと!? 止まれ、止まらんか! 儂の魔術が逆流してくる!」と、本気の絶叫を上げ始めている。
・スキル: 逃走の極意、魔力感知?、魂の共鳴(完全発動・勇者モード)、魔王の庇護




