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第126 話:ただのギャル、だけど譲れないあたしの物語なんですけどぉ!

 カオス極まる凛愛の精神世界を彷徨い、その濁流に流されかけながらも、ネクロスの精神体はついに最奥の領域へと辿り着く。


 そこは、それまで脳内を埋め尽くしていた騒がしいゲームの通知音も、派手なネイルのホログラムも、きらびやかなガチャの確定演出も存在しない、驚くほど静かで、どこか厳かな純白の空間だった。


「ウィッヒヒ! 見つけたぞ……! ここがこの小娘の精神の核、魂の玉座じゃな!」


 勝利を確信したネクロスが、歓喜の声を上げる。

 だが、そこにいたのは彼が警戒していた伝説の勇者セリアではなかった。


 いつもの制服姿のまま、愛用のスクールバッグを大事そうに胸元に抱きしめて、ちょこんと体育座りをしている星凛愛。


 精神の核に漂う声の主は、予想外のあまりの普通さに激しく困惑する。


「……誰じゃ、お前」


 凛愛は顔を上げ、知力2のいつも通りのトーンで、呆れたように即答した。


「いや、誰って……見れば解るじゃん、あたしだけど?」


「小娘が……! 儂を騙したな! 貴様は勇者セリアの器ではないのか!?」


「だから違うって言ってるじゃん。あたしは星凛愛。どこにでもいる、ただのギャルなんですけど?」


 ネクロスは、実体のない精神体を激しく波立たせて怒鳴り散らした。


「ええい、認めんぞ! 小娘自身に価値など無い! 儂が欲しいのは、勇者セリアの強大なる魂の力じゃ! お前のような物欲まみれの空っぽな人間に、その肉体を宿らせておく価値など万に一つも無いわ!」


 ジジイの理不尽すぎる暴言。

 だが、凛愛は怒るでもなく、ただ不思議そうに首を傾げた。


「ふ〜ん、でもさ……」


 凛愛の唇が、静かに、そしてどこか優しく微笑む。


「な……何じゃ?」


「セリアさんはね、こんなあたしのこと、ちゃんと見ててくれたんだよ。セリアさんが……あたしを信じて託してくれた」


 凛愛は真っ直ぐにネクロスの気配を見つめ、言葉を紡ぐ。


「だから、あたしはあたしでいいの!ジジイのお前に否定される筋合いなんて1ミリもないわけ」


 その瞬間。


 精神世界のいたるところに散らばっていた、これまでの無数の記憶の破片が、一斉に目も眩むような光を放ち始めた。


 ネイルの予約や修学旅行。

 お気に入りのアプリが詰まったスマホ。

 徹夜でやり込んだ大好きなゲーム。

 自分のテンションを上げるための可愛いネイル。

 人界で待ってくれている、大切な友達。

 そして、魔界に来てから出会った、

 いつも髪の中でうるさく怒鳴ってくるツンデレなチュンペー。

 優秀だけど、どこか抜けてるナビゲーターのモリエ。

 美女に弱くてポンコツだけど、いざという時は頼りになるエロ剣。


 その全部が、凛愛にとって生への執着と精神力を高めていた。


 ネクロスは、その溢れ出る光の濁流に呑まれかけ、初めて目の前の少女の本質を理解する。


「バ、バカな……! 空っぽでは……空っぽではなかったのか……!? なぜただの小娘の記憶が、これほどの輝きを放つんじゃ……!」


「うん。難しい理屈とか設定は、あたし知力2だからよく分かんない」


 凛愛は立ち上がり、スクバを肩にかけ直して不敵に笑う。


「でもね、あたしにとって何が大事なものかくらい、ちゃんと分かるよ」


 精神世界全体が、限界突破した純白の輝きに包まれる。

 足元を縛り付けていたネクロスの魔力の鎖が、その聖なる光に耐えきれず、パキパキと音を立てて粉々に崩れ始めた。


「な、なぜじゃ!? なぜ儂の死霊魔術が通じん! なぜ支配できぬのじゃーーー!?」


 絶叫するネクロスを、凛愛はギャル特有の最強のメンタルで見据えた。


「知らない。システムのエラーなんじゃない?」


「訳のわからぬ事を――」


「あたしの人生なんだから、ジジイの居場所なんて、ココに無ぇんだよっ!!」


 その瞬間。


 凛愛の精神世界に眠っていたセリアの残響が、チュンペーとの深い絆が、メモリエルの記録が、すべて一つの大きな渦となって共鳴した。


 姿なき死霊術師ネクロスは、その人生で初めて、本当の「恐怖」というものを味わっていた。


 目の前にいるのは、伝説の勇者セリアではない。

 だが、間違いなく。

 セリアが世界の未来を託した、最強にハッピーで無敵の少女だった。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・魂の共鳴(完全覚醒へのプロローグ): ジジイに侵入されたことで逆に自分の「譲れないもの」を自覚し、知力2の頭ではなく、魂の直感でセリアの聖光と完全にリンクを果たす。


 ・ギャルメンタル無敵化: 「あたしの人生のコントローラーを他人に握らせるわけないじゃん!」と、ゲーム脳特有の強固な意志でネクロスを完全拒絶。


 ・相棒チュンペー

 ・涙目で見守る雀: 凛愛の肉体から放たれ始めた、あのグラディアスの時をも凌駕する純粋な神聖魔力を前に、『……バカ人間。貴様、本当にあのセリアの女に「そのままで良い」と認められておったのだな』と、髪の中で震えながらも誇らしげに目を細めている。


 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・強制システム再起動: 凛愛の精神から放たれた極大の聖光に感応し、「お、おおお!? 身体の奥から凄いエネルギーが湧き上がってくるぞ! ……って、美、美女たちよ、すまぬ! ワシはやっぱり凛愛の剣じゃあぁぁ!」と、ようやくエロの呪縛から解き放たれて輝きを取り戻し始める。


 ・周囲の状況:

 ・ネクロス(精神崩壊寸前): 「バカな……! 魂の強さなら儂の方が圧倒的に上のはず! なぜこの物欲まみれの小娘の記憶ごときに、我が死霊の深淵が押し返されるのじゃーー!?」と、ギャルの大切な思い出の輝きに魂を焼かれながら絶叫している。


 力: 1

 体力: 1

 素早さ: 3

 知力: 2

 魔力: 0

 運: 60

 スキル: 逃走の極意、魔力感知?

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