第125 話:ジジイの精神突入と、ギャルの脳内がカオスすぎて迷子になるネクロスなんですけどぉ!
どぉれ、おじゃまします。
実体のないネクロスは、声のトーンだけは妙に礼儀正しくそう告げると、身動きの取れない凛愛の額へと、冷たい霧のような精神体を滑り込ませてきた。
「やぁだぁあああ! うぁ……入って、くんな……っ!」
凛愛の口から、悲痛な絶叫が極寒の空へと響き渡る。
人間の頭の中に直接、他人の、しかもシワシワの死霊術師の意識がズブズブと侵入してくる感覚は、不快という言葉すら生温い。
脳みそを冷たい泥水でかき回されているかのような強烈な違和感に、凛愛の意識はみるみるうちに朦朧としていく。
『おいっ! バカ人間! 気を許すな! 意識を手放すんじゃない! 貴様! それでもあのセリアの女が認めた勇者か!!』
髪の毛の中から、チュンペーがこれまで聞いたこともないような必死の形相で怒鳴り散らすが、その声も今の凛愛の耳には、まるで水の中にいる時のように遠く、ぼやけて聞こえていた。
一方その頃、凛愛の精神世界の中へと自在に移動し、侵入を果たしていたネクロス。
彼は勇者の肉体を完全にコントロールするため、精神の最深部を目指して進んでいたのだが、その足取りはすぐにピタリと止まることになった。
「ウィッヒ! なんとも、物欲と雑念が渦巻いておるな……。どれ、もっと深層を覗いてやろうと思ったが、これは一体何じゃ……?」
ネクロスが足を踏み入れた凛愛の精神世界。
そこは、通常の人間であれば記憶の破片や魂の輝きがあるはずの場所だった。
しかし、目の前に広がっていたのは、きらびやかなネイル、カラコン、大量のアクセサリー、そしてゲームのHPゲージやレベルアップのポップアップといった、一貫性のない物欲と雑念のホログラムが無限に大渋滞しているカオスな空間だったのだ。
あまりの情報の濁流に、声だけのネクロスも流されそうになりながら、どうにか精神の主導権を握るための「核」を探そうとする。
だが、どれだけ空間を進み、精神の奥底へと潜っていっても、本来ならそこに鎮座しているはずの本人の核――すなわち精神の玉座が、どこを探しても全く見当たらない。
「ぬぅ……どうなっておる? この小娘の精神構造、一体どうなっておるんじゃ!? 玉座どころか、思考の軸となる柱すら一本も見当たらんぞ……!?」
それもそのはず、星凛愛のステータスにおける知力はわずかに「2」。
普段から何も考えておらず、その時々の直感とハッピーなゲーム脳だけで生きているギャルの精神世界は、ネクロスのような超一流の死霊術師が解析しようとしても、そもそも解析するための「中身」が存在しない、完全なるバグ領域(虚無)だった。
勝ちを確信して精神を乗っ取りにきたはずのジジイが、ギャルの脳内の圧倒的な中身の無さとカオスっぷりに足元をすくわれ、精神世界の中でまさかの迷子になるという、運60が引き起こした想定外の二次災害が始まっていた。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・意識朦朧(ただし脳内は無敵): 肉体側は白目を剥きかけてピンチだが、精神世界側は知力2の防壁によって、ネクロスの侵略を無自覚に完全シャットアウト中。
・相棒:
・超絶パニック雀: 凛愛の意識が遠のいていくのを見て、『おのれ、本当にこのまま乗っ取られてしまうのか……! 立ち上がれバカ人間!』と、涙目で彼女の頬をペチペチ叩いている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・美女に夢中: 「むふふ、お姉さん、もっとワシの柄の部分を……。おや? 凛愛の様子が何やらおかしいな? まあ、あやつはいつもあんな顔をしておるから大丈夫じゃろう!」と、完全に現実逃避している。
・周囲の状況:
・ネクロス(精神世界で迷子): 「ウィッヒ!? 右を見ても左を見ても新作のギャル服とゲームの攻略情報しか流れてこん! どこじゃ! この小娘の魂の核はどこにあるんじゃーー!」と、凛愛の脳内で精神的ダメージを受け始めている。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




