第122話:声だけのジジイと、捕まりやすさナンバーワンの限界ギャルなんですけどぉ!
そこに佇んでいたのは、先日ヴァル=エリクスとライゼルの凄まじい衝突に巻き込まれ、肉体を粉砕されて実体を失ってしまったはずのネクロスだった。
しかし、そこはさすがに骨と魂を操る死霊族のトップ。
肉体という実体を失うこと自体、彼らにとってはあまり意味を成さないらしく、今は不気味な声だけが城の門番のようにその場に漂っている。
「ウィッヒ! 先日の冥王クラスでの体験は実に有意義じゃったぞぉ〜? おかげで、あの神聖なる聖光剣も難なく我が手……とはいかぬが、完全に我が領域内、このグリムヴォイドの城の中に収めさせてもらったわい!」
声だけのクセにやたらと尊大な態度で勝ち誇るネクロスのジジイ。
悔しいけれど、これには凛愛もぐうの音も出ない。
現にあのバカエロ剣は、美女4人に鼻の下を伸ばしてあっさりとここまで拉致されてしまっているのだから。
「な、何が目的なわけ!? 実体もないくせに、なんでわざわざ、あたしの剣を盗んだりするのよ!」
凛愛が防寒着の中で身構えながら、知力2の頭で精一杯の警戒の声を上げる。
「ウィッヒ! 何故か、と訊くかぁ……イイッヒッヒッヒ!」
ネクロスが邪悪に歪んだ声で嘲笑った、その瞬間だった。
ガサガサッとピンクの雪を突き破って、地面から干からびた白い骨の手が何本も突き出してきた。
そして、信じられないほどの素早さで凛愛の両足首をガッチリと掴み、その場に縫い付けたのだ。
「げっ!? ちょっ、まっ、何これキモーーーいっ!!」
素早さ3、力1、体力1という、戦う前から完全に詰んでいる一般人未満のステータスしか持たない凛愛である。
何のひねりもなく、実にあっさりとその場に捕まって拘束されてしまった。
『おのれバカ人間! 何を無抵抗で掴まれている! 逃走の極意はどうした!』
髪の中からチュンペーが激しく怒鳴るが、足元を骨の手でガッチリ固められては、逃げるポーズすら取れない。
「ムリムリムリー! 骨の手とかガチで無理だし! 掴まれてる感触が冷たすぎてマジで鳥肌が限界突破なんですけどぉ!」
「イイッヒッヒ! 抵抗しても無駄じゃ! 聖剣を失い、我が骨の檻に囚われたお前に何ができる! さあ、じっくりと我が計画の礎となってもらうぞ!」
姿なき死霊術師の笑い声が極寒の空に響き渡る。
エロ剣に続いて自分まで難なく捕まってしまうという、かつてない大ピンチに陥った凛愛。
キモい骨の感触に涙目になりながら、この絶望的な状況をどうハッピーに勘違いさせるか、必死に脳内シミュレーションを始めるのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・完全拘束(キモ涙目): 骨の手に足を掴まれ、「冬服のコーデが汚れるじゃん!」というズレた方向の絶望感でパニックになっている。
・相棒:
・舌打ち雀: 実態のないネクロスの精神体に手出しができず、『おのれ、あの老いぼれめ、肉体が無いことをいいことに調子に乗りおって……!』と、髪の中で地団駄を踏んでいる。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・城の最奥で軟禁中: 「おいネクロス! ワシを運んできたあの素晴らしいお姉さんたちはどこへ行ったのじゃ! 早く次の美女を連れてこい! むふーっ!」と、自分が人質(剣質)であることにまだ気づいていない。
・周囲の状況:
・ネクロス(声だけ): 星凛愛をノータイムで捕獲することに成功し、「やはり儂の知略は完璧じゃ! あの恐怖の魔人も、聖剣がなければただの小娘よ!」と、完全に死亡フラグ(凛愛の運60)を踏み抜いた状態で大喜びしている。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




