第119話:恐怖のルームサービス!?無能なエロ剣なんですけどぉ!
自力覚醒という超絶無理ゲーな精神論を突きつけられ、ベッドの上で芋虫のように丸まって悩んでいた凛愛。
そんな重苦しい空気の部屋に、トントン、と軽快にドアをノックする音が響き渡った。
「ん?……だ、誰ぇ? あたし魔界に友達とか一人もいないんだけど?」
人見知りのギャルがビクッとしながら警戒の声を上げると、ドアの向こうから、やけにやたらと軽い若い女性の声が返ってきた。
「ルームサービスでぇす!」
しかも声は一つじゃない。
どうやら複数人いるようだ。
「ルームサービス? ここ学生寮じゃなかった……?」
凛愛が首を傾げている間に、ガチャリと鍵が開いてドアが開き、派手な身なりの若い魔族の女が4人も一気に入ってきた。
「わたしたちはぁ、アザエル様に仰せつかってぇ、凛愛様のぉ、お部屋をぉ、お掃除しに来たんでぇす!」
「はぁ? アザエルさん、そんな至れり尽くせりな神サービスまで手配してくれんの? マジでイケメンすぎない?」
「そぉなんですぅ! なのでぇ、凛愛様にはお部屋をお掃除してる間にぃ、ちょっとだけぇ、廊下で待ってていただきたくてぇ!」
「そ、そうなんだ! ありがたいわぁ……。あたし、魔界に来てから毎日毎日変な魔族に絡まれて超絶疲れてっかんね、ぶっちゃけ部屋の掃除とかする暇マジで一切ないのよ!」
思わぬ家政婦サービスに感激して、知力2の頭で全力でホイホイと信じ込む凛愛。
そんなお気楽ギャルに、髪の毛の中からチュンペーが冷ややかな念話を飛ばした。
『ふん、バカ人間め。何を言っておる。貴様は暇があろうがなかろうが、もとから掃除などする気もなかろう。人界にいた頃から部屋が散らかり放題だったのを知っておるぞ』
「あー、はいはい! チュンちゃんうるさーい! じゃ、廊下で待ってるから、お姉さんたち、ちゃちゃっとやっちゃって下さーい!」
凛愛はチュンペーの小言を華麗にスルーしながら、4人の家政婦(?)たちを部屋に招き入れ、自分はチュンペーと一緒に廊下にあるふかふかのベンチへと腰を下ろした。
ガシャーーーン!!! と、部屋の奥から窓ガラスが派手に粉砕される大爆音が廊下まで響き渡った。
「えっ!? ちょ、大丈夫ですかーー!?」
何事かと驚いた凛愛が慌ててドアを勢いよく開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
ついさっきまでいたはずの4人の女たちの姿はどこにもなく、割れた窓から冷たい風が吹き込んでいるだけの、完全なるもぬけの殻だったのだ。
「え? え? な、なんなの!? 掃除って窓ガラスの破壊から始めるタイプのライフハック!?」
パニックを起こして部屋の中を見回す凛愛。しかし、元魔王のチュンペーは、その異常事態の「真の目的」にすぐさま気がついた。
『バカ人間! 混乱している場合か! 枕元を見よ! 聖光剣アルスカイゼリオンが無いぞ!!』
「へ……? あ、ホントだ、エロ剣がいない!!」
いつも「ワシを愛でよ!」とうるさく主張していた黄金の剣が、ベッドの脇から綺麗さっぱり消え失せていた。
アザエルの名前を騙った、謎の4人組によるエロ剣誘拐事件。
本来であれば魔族を拒絶するはずの聖なる防衛システムだが、この剣は「魔族であろうと美女にはとことん弱い」という致命的なバグを抱えていた。
運60の最強ギャルから最強の(エロい)武器を盗み出した命知らずな犯人は一体誰なのか、冥王寮にギャルの怒号が響き渡るのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・愛剣の紛失(困惑): 「掃除してくれるって言ったのに、エロ剣だけ盗んで窓から逃げるとか、あいつら実家がリサイクルショップか何かなの!?」と、ズレた怒り方をしている。
・相棒:
・ガチギレ雀: バカ人間が騙されたこと、そして自分の威厳に関わる勇者装備が奪われたことに、『おのれ、我が目を離した隙に魔王の部屋(凛愛の髪)の前でコソ泥を働くとは……万死に値するわ!』と怒髪天を突いている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・誘拐され中: 「むふーーーっ! 素晴らしい! なんと素晴らしい弾力と柔らかさじゃ! おい、もう少しワシの黄金の護拳を胸元に深く抱きしめても良いのだぞ……!」と、連れ去られながら脳内で大はしゃぎしている。
・周囲の状況:
・逃走中の女たち(魔族): 「やったわ! あの恐怖の魔人・星凛愛から、ついにあの『伝説の魔剣』を無傷で奪取したわよ!」「あのお方の手を煩わせずに済むわ!」と、別の意味で大いなる勘違いをしながら爆走中。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




