第117話:チョロい獣族と、いつか超えなきゃいけないイケメン悪魔の壁なんですけどぉ!
完全に課外授業のことなんて頭から吹き飛んで、大穴の底でキラキラのデコパーツに夢中になっているルクレシア。
そんな彼女を他所に、今回もまた、自分からは実質的に何もアクションを起こさないまま絶体絶命のピンチを乗り切ってしまった凛愛は、セリアが授けてくれた「運60」というステータスがガチのチート性能なのだと、身を以て実感していた。
「あはは、モッフルちゃん、マジでかわいいな〜! 今まで出会った冥王クラスの中で、一番チョロくて最高だったしぃ!」
チャームが戻ってきてご機嫌な凛愛は、へたり込んだままそんな風に呑気な感想を漏らす。
しかし、そのお気楽すぎるギャル脳に向かって、髪の毛の中にすっぽりと収まったチュンペーが、冷や水を浴びせるような厳しい苦言を呈してきた。
『ふん、調子に乗るなよバカ人間。
貴様のその悪運の強さは確かに群を抜いて異常だが……貴様自体の弱さは何一つ変わっておらんということを忘れるな!』
「むー、冷たいこと言わないでよ! 仕方ないじゃん! あたしのレベル、17で完全に成長カンストしちゃってるんだからさぁ! 力1、体力1のままなのは仕様なの!」
『だからこそ、ただの運頼みだけで済ませてはならんと言っているのだ。貴様、セリアが顕現した、あの時の覚醒をいつでも自在にできるようにならねば、この先は確実に詰むぞ』
「あ……」
チュンペーの言葉に、凛愛はハッとして言葉を詰まらせた。
あの時――グラディアスが引き起こした凄まじいマグマ地獄の中で、まさに絶体絶命の窮地に陥った際、凛愛の身体を包み込んだあの超圧倒的なパワー。
世界の法則を書き換えるかのような輝きを放った、全開の超絶覚醒勇者モード。
確かに、これから先の魔界でトップに君臨するような化け物たちと渡り合うには、周囲の勝手な「勘違いデマ魔人」という口コミの悪名だけでは、いつか限界が来るに決まっている。
「え〜、でもさぁ……あの時は確かに、セリアさんの神聖な意思というか、なんかすごいエネルギーが身体の奥からブワッて湧き上がるのを感じたケドさ。いまここで『あの状態になってみて』って言われても絶対にムリだし……ぶっちゃけ、あの時どうやって覚醒したのか自分でも全然分かってないんだよね」
ゲーム脳の凛愛としては、あの覚醒は一度しか使えないイベント専用の強制負けイベント回避ギミックのようなもので、コマンドを入力して自由に発動できるスキルだという実感が持てないのだ。
『フン、それが今後の最大の課題だな。自力であの覚醒を引き出せねば、アザエルという氷の悪魔を超えることなど、万に一つも有り得んからな』
チュンペーの鋭い視線が、先ほどまで自分たちをベランダから見下ろしていたアザエルのいた方向へと向けられる。
(アザエルさんかぁ……あの綺麗系ミステリアスイケメン、顔はマジでタイプだけど、目がガチの戦闘狂だったもんな……)
運60という幸運の盾の裏側で、じわりと突きつけられた「自力での覚醒」という超高難度の無理ゲーミッション。
レベル17の限界ギャルは、魔界の放課後の空を少しだけ真面目な顔で見上げるのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・課題の山積み: 自力覚醒という、知力2の頭ではマニュアルすら読めない超難解システムを突きつけられて困惑中。
・アザエルへの意識: 「アザエルさんを超えるとか無理ゲーすぎだけど、もし覚醒して勝てたら、もっとあたしに夢中になってくれるかな?」と、ゲーム脳特有の恋愛フラグをまだ期待している。
・相棒:
・教育パパ雀: 凛愛の成長『あのセリアの力を引き出すには、やはり何かしらの感情のトリガーが必要か……』と、真剣にバカ人間の育成計画を練り直している。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・覚醒への期待: 「おお! あの輝きをまた見せてくれるのか! ワシもあの状態で握られている時が一番、刀身の艶が良いのじゃ! ワシがワシではない感覚なんじゃ!」と、無茶振りをしている。
・周囲の状況:
・大穴の底: ルクレシアがキラキラパーツを顔に貼り付けて尻尾を振り回して大はしゃぎしている。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




