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第115話 : 溢れ出たギャルのキラキラ罠!?駄犬のキャワワンッなんですけどぉ!

 スタートの合図と同時に、ルクレシアが足元の空気を爆発させて爆速で迫ってくる。

 その尋常じゃないプレッシャーに、凛愛は走りながら慌てて大声を出した。


「ま、待ってモッフルちゃん! あたしがもし勝ったら、その尻尾についてるハートのチャームもらうからね! 約束だよ!?」


 するとルクレシアは、時速数百キロは出ているであろう猛スピードのまま、驚くほど軽い足取りで凛愛の真横にピタリと並走してきた。


「いいワンよ! でもリアちゃん、ワンに勝てるかな? ここからは本気だワン!」


 ルクレシアは無邪気に笑うと、次の瞬間には風の鳴る音だけを残して、凛愛をあっさりと遥か彼方へと抜き去ってしまった。


「は? マジで? 速すぎでしょ! 音速どころの騒ぎじゃないんだけど!?」


 その頃、冥王クラスのベランダからはアザエルが腕を組んで二人のチェイスを静かに見下ろしていた。


「やはり、いくらあの星凛愛とはいえ、魔界随一の俊足を誇るルクレシアの速度には敵わないか……」


 訓練場には凄まじい砂煙が巻き上がり、もはやルクレシアの姿はおろか、残像すら見えない。

 ただ、空間が引き裂かれるような凄まじい風圧だけが訓練場を支配していた。

 髪の毛の中で暴風に耐えている相棒に、凛愛は涙目で悲鳴を上げる。


「チュンペー! ヤバい、これ絶対に負けちゃうってば!」


『ぬぅ……おのれ、駄犬の分際で光速に近い領域に達しておるとはな! 貴様の音速程度の逃走術では、物理的に叶うはずもない!』


 チュンペーもこれには驚愕を隠せない様子だ。

 完全に負け確ムードが漂い、凛愛が諦めモードで「もう無理〜!」と足を止めた、その時だった。


 焦りのあまり、凛愛は自分の足をもつれさせてしまい、盛大に地面へ向かって躓き転んでしまったのだ。


「いっ!」


 派手な音を立てて前のめりに転んだ拍子に、肩に下げていたスクバのチャックが全開になり、中の荷物が地面一帯に派手に散乱する。


 コロン、と転がったのは、凛愛が人界から持ち込んだデコ用のストーンや、予備の派手なネイルチップ、ラメ入りのグロス、そしてキラキラと太陽の光を反射するアクセサリーの数々。


 茶色い訓練場の地面に、突如として眩いばかりのギャルのキラキラが溢れかえった。


 その瞬間、凄まじいソニックブームの音が響く。


「キキーーーッ!」


 ちょうど凛愛を周回遅れにする勢いで、背後から光速で迫っていたルクレシアが、目の前に現れた謎の輝く物体群に目を丸くして猛烈な急ブレーキをかけた。


 光速からの一斉急ブレーキの代償は凄まじかった。


 ルクレシアの凄まじい脚力と摩擦力は、訓練場の頑丈な地面をガガガガガッと盛大に抉り取り、まるでブルドーザーのように土砂を巻き上げる。


 そして止まりきれなかった彼女の身体は、自らが作り出したその大穴の中へとズボボボボッと勢いよく埋まっていく。


 そこへ追い打ちをかけるように、凛愛のスクバからさらなる異変が起きた。


 ただのスクバに見えて、無限インベントリであるその鞄から、凛愛が今まで溜め込んできた大量のキラキラストーン、ラメ、デコパーツ、さらには予備のカラコンケースや謎のアクセサリーたちが、まるで決壊したダムのように次から次へと溢れ出たのだ。


 それらのギャルグッズが、ルクレシアが埋まった抉れた地面の穴へと、まるでキラキラの砂雪崩のように容赦なく降り注いでいく。


 しばらくすると、デコパーツと土砂で完全に埋まった地面の底から、くぐもった情けない声が響いてきた。


「キャワワーーンッ……!? なにこれ、動けないワン、キラキラ綺麗だワン……!」


 生き埋め状態になっているというのに、獣の習性でキラキラに囲まれてどこか嬉しそうなルクレシアの声。

 そのシュールすぎる光景を、地面にへたり込んだまま唖然と見つめていた凛愛は、髪の毛の中の相棒にそっと声をかけた。


「……ねえ、チュンペー……? これ、あたしたちの勝ちじゃね……?」


 すると、凛愛の髪の中からひょこっと顔を出したチュンペーが、フンと鼻で笑いながら、いかにも最初からすべて計算通りだったかのような偉そうな念話を飛ばしてきた。


『ふん、やはりただの駄犬だな。我らの敵ではなかったということだ……』


「いや、あんたさっきまで光速だの何だの言って一番ビビり散らかしてたじゃん!!」


 結果オーライとはいえ、運60の奇跡と無限インベントリの自爆によって、魔界一の韋駄天を生き埋めにして完全無力化してしまうのだった。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・ラッキー勝利: 転んだだけで魔界の猛者を一人沈め、「運60ってマジで物理法則バグらせるレベルじゃん……」と引き始めている。

 ・インベントリの片付け拒否: 散らばった大量のグッズを拾い集めるのが面倒くさくて、そのまま放置したい。

 ・相棒チュンペー

 ・ドヤ顔雀: 自分が何もしていないことを棚に上げ、『ふはは、我が知略(?)の前に平伏すがいいうさぎ……いや犬め!』と、勝ち誇った顔で髪の毛からふんぞり返っている。

 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・便乗称賛: 「見事じゃ凛愛! まさか鞄の中からキラキラの雨を降らせて敵の視界と自由を奪うとは! 泥臭くも華麗な戦術、ワシは感動したぞ!」と、相変わらず高度な戦術だったと誤解している。

 ・周囲の状況:

 ・ルクレシア(地中): キラキラストーンに埋もれながら、肉球でラメをいじって「これ、ワンの宝物にするワン!」と完全に戦闘意欲を喪失している。

 ・アザエル(ベランダ): 「無限の空間インベントリから質量兵器を召喚し、ルクレシアの突進エネルギーをそのまま自滅へと変換したか……。星凛愛、戦わずして勝つとはこのことか」と、さらに勘違いの解釈を深め、手帳にメモをとっている。

 力: 1

 体力: 1

 素早さ: 3

 知力: 2

 魔力: 0

 運: 60

 スキル: 逃走の極意、魔力感知?

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