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第114話 : 野生のワンワン!素早さ3のギャル絶体絶命?なんですけどぉ!

 本日の課外授業はルクレシアとペアを組んで行う事でチャームを奪還するチャンスではあるけれど、同時にガチの野生児とタイマンを張るという、戦闘力1の凛愛にとっては命がけのイベントである。


「よし、リアちゃん! 早速、訓練場へ移動するワン!」


 お昼寝から起きて元気いっぱいのルクレシアに腕を引っ張られ、凛愛は引きずられるようにして広大な訓練場へと連行された。


 モッフモフの耳をピコピコと動かす彼女の尻尾の先では、例のハートのチャームが依然としてキラキラと虚しく揺れている。


 髪の中からチュンペーが『おいバカ人間、あの駄犬、完全に遊ぶ気満々だぞ。隙を見てあの尻尾のチャームを毟り取るのだ!』と過激な作戦を囁いてくるが、そんな簡単にいったら苦労はしない。


 訓練場の中央に立つと、ルクレシアはフンスと鼻を鳴らして今日の訓練課題を発表した。


「今日の訓練課題は、速さと反射神経を競う鬼ごっこバトルだワン! リアちゃん、ワンから3回逃げ切れたらリアちゃんの勝ちだワン!」


(速さと反射神経……あぁ…嫌いなヤツ!!)


 現在の凛愛のステータスにおいて、素早さはわずか「3」。

 人界の一般人よりは多少マシかもしれないが、魔界の、しかも獣族のトップエリートであるルクレシアの爆速に比べたら、カタツムリと新幹線ほどの差がある。


「あ、あのさ、モッフルちゃん? あたし運動神経とかマジで皆無っていうか、走ったら5秒で脇腹痛くなるタイプなんだけど……」


「モッフルちゃん?大丈夫だワン! リアちゃんは強いから、ワンも手加減なしの全力で行くワン!」


 ルクレシアは獰猛かつ無邪気な笑みを浮かべ、クラウチングスタートの姿勢をとった。

 その瞬間、彼女の周囲の空気がピキピキと爆発的な魔力で震え始める。


 スキル「魔力感知?」のおかげで、凛愛にはその野生のプレッシャーが「なんかヤバい地鳴りがする」というレベルの恐怖としてリアルに伝わってきた。


 魔界一と謳われる圧倒的な神速を誇る獣族のルクレシア。


 対するは、戦闘力皆無でありながらもスキル「逃走の極意」で必死に対抗する星凛愛。


 疾風怒濤の勢いで迫り来るルクレシアの猛追を、無駄のない最小限のステップで奇跡的にかわしながら、凛愛のゲーム脳にひとつの記憶がフラッシュバックした。


(待って……? あたし、人界の試練で、なんか音速を超えるレベルの爆速スピードで逃げ回った記憶があるんだけど!? これマジでワンチャンいけるんじゃない!?)


 生存本能がリミッターを解除したときに見せる、あの世界の理を置き去りにする超スピード。

 それさえ発動すれば、魔界一の駄犬が相手だろうと完全勝利を収められると確信した凛愛は、髪の中の相棒に向かって邪悪なギャルスマイルを向けた。


「あ! チュンペー! いいこと思いついちゃった! あたしが、この勝負に勝ったらハートのチャームをモッフルちゃんから返してもらうって約束、今すぐ取り付ければ良くね!?」


 勝負に便乗して一気にプレゼントを奪還する。完璧な作戦だと胸を張る凛愛に、チュンペーは髪の毛をぎゅっと掴みながら呆れたような念話を返した。


『フン、勝てる見込みがあればの話だな? 夢を見るのは勝手だが、あの駄犬の野生の力を舐めるなよ?』


「大丈夫だって! モッフルちゃんがどんだけ魔界一のスピードとか言われてたって、さすがに生身の身体で音速までは超えないっしょ! こっちは極意よ?スキルの勝利ってやつを見せてあげるから!」


 勝負が始まる前から完全な勝利宣言フラグを叩き込む凛愛。


 すると、対戦相手のルクレシアがもふもふの耳をピンと立て、尻尾をブンブンと激しく振りながら満面の笑みでこちらをロックオンした。


 尻尾の先でハートのチャームがチカチカと不穏に輝く。


「リアちゃーん? 用意は良いかワン? いっくよー! よーい、ワンッ!」


 ルクレシアの足元から、文字通り空間が爆発したかのような衝撃波が吹き荒れる。


 魔界一のスピードと、運60全振りの音速の逃走劇。予測不能のデッドヒートが、今ここに爆速でスタートするのだった。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・音速への挑戦フラグ: 「音速は超えないっしょ」という盛大な前振りを完了し、フラグ建築士としての才能を遺憾なく発揮している。

 ・逃走の極意: ルクレシアのカウントダウンに合わせて、身体が勝手に最も逃げやすい「後退の構え」を構築中。

 ・相棒チュンペー

 ・冷や冷や雀: チャームが戻ってくる期待を持ちつつも、凛愛の圧倒的なフラグの高さに、『このバカ人間、絶対にこのあと音速を超えた駄犬に背後を取られて泣きを見るぞ……』と戦慄している。

 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・音速への対抗心: 「なんと! 音速だと!? よいな凛愛、ワシを本気で振るえば、光速すら超える衝撃波が出せるぞ! さあ、今すぐワシを抜いて光の速さで……」と、相変わらず無茶な張り合い方をしている。

 ・周囲の状況:

 ・ルクレシア: 「よーいワン」の掛け声とともに、本当に音速というかソニックブームの壁をぶち破りそうな超圧縮魔力を足元に溜めてワクワクしている。

 力: 1

 体力: 1

 素早さ: 3

 知力: 2

 魔力: 0

 運: 60

 スキル: 逃走の極意、魔力感知?

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