第113話:教室の最前線と、尻尾の先のハートチャームなんですけどぉ!
週が明けた登校日。
いつも通り、凛愛が歩くだけで一般クラスの魔族たちが「ひぃっ! 魔人がお通りだぞ!」「目を合わせるな、魂を吸い尽くされる!」と勝手にモーセの十戒のごとく道を開けていく。
運60の圧倒的な威圧感(※ただの勘違い)にすっかり慣れてしまい、もはやビビる要素すら無くなった凛愛は、難なく冥王クラスの教室へとたどり着いた。
しかし、一般クラスの怯えっぷりはともかく、この冥王クラスだけは別だ。
一歩足を踏み入れるだけで、空気がガチで重たい。
「お、おはよーございまーす……」
引きつったギャルスマイルで挨拶する凛愛。
本日の教室には、先週メモリエルに魔力をスッカラカンにされてお城で寝込んでいるティアリスと、魂だけになって自動書記をしているネクロス以外の面々が顔を揃えていた。
席についた凛愛がそっと教室を見渡すと、そこには見事なまでの温度差が広がっている。
アザエルは不敵で美麗な笑みを浮かべてこちらを見つめており、逆にライゼルはプライドが傷ついたのか、凛愛に目をも向けようとしない。
そして、先週のメモリエルビカビカ聖光事件の際、教室の居残り組だったブラドレイン兄妹は、高貴な肌をちょっと日焼け(火傷)気味にしていて若干不機嫌そうだ。
何も知らないグラディアスはいつも通り筋トレでもしてそうな顔をしており、セルヴァインは依然として謎だらけのオーラを纏って佇んでいる。
そして……問題の獣族女子、ルクレシアである。
彼女は自分の机に突っ伏して、もふもふの大きな尻尾を大事そうに抱きかかえながらスースーと寝息を立てていた。
だが、凛愛の目はごまかせない。
その抱えられた尻尾の先には、キラリと輝く見覚えのあるハートのチャームが、まるでブラブラと揺れるおもちゃのように結びつけられていたのだ!
凛愛は髪の毛に隠れている相棒に向かって、口をほとんど動かさずに小声で呼びかけた。
「ち、チュンペー! みて! あそこ! あたしのプレゼント、思いっきり尻尾の飾りにされてるんだけど!」
髪の隙間から現場を目撃したチュンペーから、ギリィ……と歯噛みするような悔しげな念話が返ってくる。
『……わ、わかっている! 目を皿のようにして見ておるわ! しかしバカ人間、落ち着け。あの駄犬から今すぐ力ずくで奪い返した所で、我らがその板切れに過度に執着している姿勢を見せれば、奴の野生の勘だ、またすぐに奪い返されかねん……。ここは慎重に出方を伺うのだ……』
(元魔王のくせにチキってんじゃないわよ! ってか、それだけモッフルちゃんの嗅覚を警戒してるってコト!?)
二人がそんな風に机の下でヒソヒソと緊急家族会議を開いていると、アザエルが冷徹な声で告げた。
「今日の放課後の課外授業は、ルクレシアが担当する」
アザエルの無慈悲なアナウンスに、凛愛はガタタッ! と椅子を鳴らして心の中で絶叫した。
(まさかの、今日の担当モッフルちゃんだったーーー!!! チャームを取り返す大チャンスだけど、同時にマフラーまで身ぐるみの丸裸にされる大ピンチなんですけどぉぉーー!?)
運60のラッキーパワーが引き寄せたのは、因縁のハートチャームを持つもふもふ駄犬女子。
放課後のカウントダウンが、新たな波乱の幕開けを告げるのだった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ロックオン: ターゲット(チャーム)を発見し、どうやってルクレシアの尻尾から解き放つか知力2の脳みそをフル稼働させている。
・課外授業の恐怖: 「獣族のマンツーマン授業って、野生の王国みたいなガチのサバイバルだったらあたし力1だから確実に骨になる」と怯え始めている。
・相棒:
・作戦立案中雀: 自分のやらかしで奪われたチャームを前に、『あの駄犬め、我がマフラーの匂いまで嗅ぎつけようと執拗に迫ってきおって……。課外授業中に隙を見て一突きにしてくれる!』と髪の中で羽を逆立てている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・嫉妬の矛先変更2: 「ふん、あのフサフサの尻尾め、ワシの黄金の輝きより目立とうなどと10年早いわ! 凛愛よ、ワシの刃であの尻尾の毛を綺麗に刈り取ってやろうか!?」と、相変わらず物騒な提案をしている。
・周囲の状況:
・ルクレシア: 「ムニャ……リアちゃんの匂い……クンクン……」と、寝言を言いながら尻尾をピコピコと動かし、ハートチャームをこれ見よがしに揺らしている。
・アザエル: 凛愛の様子を見て「ほう、ルクレシアが相手と知って、早くも闘志を燃やしているな」と、今日も安定の100点満点の勘違いをしている。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




