第112話:失われたプレゼントと、元魔王の不器用すぎるツンデレの誓いなんですけどぉ!
朝食を平らげ、休校日の特権である幸せな二度寝の体勢に入ろうとした凛愛。
ふと、枕元でそっぽを向いているチュンペーの首元に視線をやったとき、違和感に気がついた。
いつも彼の首元で、ギャル好みのテイストでキラキラと主張していたハズの、あのハートのチャームが見当たらないのだ。
「あれ? チュンペー、チャーム落とした? どこかに忘れてきちゃった?」
それは人界にいた頃、凛愛が、何も身につけていないチュンペーに無理矢理プレゼントした、赤いマフラーと、お揃いのハートのチャーム付きネックレスだった。
だけど今の彼の首元には、赤いマフラーしか巻かれていない。
その指摘を受けた瞬間、チュンペーの小さな体がビクッと跳ね上がり、あからさまに気まずそうなオーラを放ちだした。
『あ、あれはだな……! 貴様にあの、ネイルチップを取り返しに行かされた際に、あの獣族の駄犬に奪われたのだ!』
「えぇ……モッフルちゃんに盗られちゃったの!?」
『仕方なかったのだ! ネイルを回収せねば爆弾妖精が教室を爆破するという一分一秒を争う状況のうえに、あの鼻の利く駄犬の相手などまともにしていられる状況でもなかったのだからな!』
チュンペーは羽をバタつかせながら、必死の形相で念話を飛ばしてくる。
愛用していたアクセサリーがモッフル(ルクレシア)の手に渡ってしまったと知り、凛愛は一瞬涙目になった。
だけど、昨日の爆弾妖精ティアリスのタイムリミットや、あの修羅場まみれの教室の光景を思い返せば、確かにチュンペーが必死だったのも事実である。
「……そっか。そうだよね、あの時はそれどころじゃなかったもんね。うん、仕方ないね……」
凛愛はポツリと呟き、ベッドに寝転がったまま顔を伏せた。
納得はしたものの、口調とは裏腹に、自分が贈ったプレゼントを失くされたショックで、お気に入りのネイルが剥げたとき並みにあからさまに気落ちしている様子だ。
いつもはギャーギャーと騒がしいバカ人間が、借りてきた猫のように静かにシュンとしている。
そのあからさまな落ち込みっぷりを見かねたチュンペーは、ふん、と短く鼻を鳴らすと、凛愛の頭の上にピョンと飛び乗って言った。
『……勘違いするなよバカ人間。完全にくれてやった訳ではないぞ? あれは我が必ず、あの駄犬の巣から力ずくで取り返してやる!』
その言葉に、凛愛はぱっと顔を上げて鏡越しに頭の上の雀を見つめた。
「え? チュンちゃん……あのチャーム、そんなに大事に思ってくれてたんだ?」
『ふ、ふん……! 勘違いするなと言うておろうが! あ、あの駄犬如きに我が身に付けし物を奪われたままであっては、元魔王としての我が威厳が著しく損なわれるからな! ただの不名誉の雪辱じゃ!』
チュンペーは凛愛の髪の毛の中にバタバタと潜り込みながら、顔を真っ赤にして必死の照れ隠しに走るのだった。
相棒の不器用な優しさに少しだけ元気を貰った凛愛。
しかし、相手はあの嗅覚お化けでフリーダムな獣族のモッフルである。
戦闘力1のネイリストと、現在はただの鳴き騒ぐ雀と化している元魔王にとって、奪還作戦のハードルはエベレスト級に高いのであった。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ちょっと復活: チュンペーのツンデレな誓いのおかげで、気落ちモードから少しだけ持ち直している。
・二度寝モード: ひとまず安心したため、運60の加護を感じながら再び布団に潜り込もうとしている。
・相棒:
・赤面隠蔽雀: 本音を突かれて大パニックを起こし、凛愛のサラツヤ髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜながら身を隠している。『おのれ駄犬め、次に出会った時は必ずやあのハートのチャームを毟り取ってくれるわ……!』と脳内でリベンジを誓っている。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・謎の対抗心: 「なにいぃ!? 凛愛、ワシにはそんなマフラーもチャームも貰っておらんぞ! ワシのこの美しい黄金の刀身にも、何かギャルっぽい装飾品を施すがよい!」と、朝からおねだりを始めている。
力: 1
体力: 1
素早さ: 3
知力: 2
魔力: 0
運: 60
スキル: 逃走の極意、魔力感知?




