第104話:聖属性のジャック犯扱い!?そして始まる限界ネイリストの施術なんですけどぉ!
邪魔者が一斉に退散し、ホワイトアウトしたままの聖属性の光に満たされまくっている冥王クラスの教室。
実はこの時、教室の外ではとんでもない大事件へと発展していた。
あのプライドの塊のようなライゼルと、高貴なるブラドレイン兄妹が血相を変えて教室から逃げ出していく姿を、廊下にいた他クラスの魔族たちが目撃してしまったのだ。
「おい見ろよ! 冥王クラスのエリートどもがパニックになってるぞ!」
「あの教室から漏れ出ている、あの不快で恐ろしい光はなんだ!?」「まさか……人界の勇者ギルドが奇襲を仕掛けてきたんじゃ……!」
魔界最高峰が集まる冥王クラスが、謎の聖属性によって完全にジャックされた。
そんな尾ひれがつきまくった噂が、瞬く間に学園中に広まりつつあることを、教室内の凛愛たちが知る由もなかった。
一方、教室の中は、色んな意味で静かにネイルを施せる環境にはなっていた。ただ一つの問題を除いて。
「ふふ〜ん、すまほよ、もっと妾を称えるがよい!」
ティアリスが最高にご機嫌な笑顔でスマホを両手でガッチリ抱え込み、一ミリも離そうとしないのだ。
画面の中のメモリエルも「聖属性の充電、大変心地よいです」とか言って完全に共依存モードに入っている。
(まぁ、ここでスマホを取り上げてまた爆弾妖精がキレるよりはマシか……放課後の課外授業に行くまでは、とりあえずそのオモチャを持たせておこう)
知力2なりに現状維持が最善だと判断した凛愛がそんなことを考えていると、床に転がっていたチュンペーがようやく息を吹き返し、よろよろと立ち上がった。
『……ハッ!? 我は一体何を……くっ、あの吸血鬼の女め、我を胸に閉じ込めるとは……いや、それよりなんだこの光はぁぁ!?』
フリーズしていた状況を瞬時に把握したチュンペーだったが、やはり元魔王の体にとっても、メモリエルが四方八方に撒き散らす純度100%の聖なる光は精神的にも肉体的にもゴリゴリ削られる。
『おのれ……このままでは我が浄化されて天に召されてしまうわ! 退散だ!!』
チュンペーは羽をバタつかせると、眩しさに耐えかねて凛愛の頭へと飛び込んでん、そのままお馴染みの定位置であるギャル髪の中にすっぽりと隠れてプルプルと震えだした。
髪の中から「バカ人間、早くその板の光を止めろ!」と鳴き騒ぐ声が頭皮に響く。
「おい小鳥! 貴様、今度はサラツヤ髪の中に巣を作る気か! 贅沢三昧しおって絶対に許さーーん!!」
(チュンペー今ムリ!エロ剣もうるさい!! 頼むから黙ってて!!)
色んな雑音が頭の中で響き渡る中、凛愛は大きく深呼吸をして、ようやく手元に戻ってきた熟成(してない普通の)ネイルチップの小瓶を手に取った。
まわりの強敵は全員除菌されて消えた。
残ったのは、スマホで完全に引き籠もりデレモードに入っている妖精プリンセス一人だけ。
「はぁ……それじゃ、さっさとやっちゃいますか……」
ホワイトアウトして手元がミリも見えない光のディスコ部屋で、星凛愛は勘だけでネイルを塗るという、前代未聞の限界ブラインドアート施術を開始するのだった。
第104話後半:スマホ強奪の危機と、ギャル髪に引きこもる元魔王なんですけどぉ!
メモリエルの必死のヨイショのおかげでティアリスは最高に上機嫌になったけれど……今度は別の問題が発生していた。画面から放たれる聖なるビカビカ光線が強すぎて、手元がマジで何も見えないのだ。
「ティアリス様ぁ、光が眩しすぎて何も見えないので、あたしの指の上にそちらの手を置いてもらえませんでしょーか?」
「ん、今は非常に気分が良いゆえ、片方だけでよいぞ。早う終わらせるのじゃ……すまほよ、今日は一緒にお城へ帰るぞよ」
「喜んでお供いたします、ティアリス様」
(おい!ちょっと待って!? スマホ、完全に自分の所有物と化してるんですけどぉぉ!!)
メモリエルまで一緒になってノリノリで返事をしていて、凛愛は内心で盛大にずっこけた。
ヤバい。ネイルへの関心を逸らすことには成功したけれど、その代償としてスマホ(メモリエル)そのものが爆弾妖精に強奪されかけている。
(ネイルより完全にスマホに気が向いちゃってるじゃん! もしこのままお城まで持ってかれたら、戦闘力1のあたしがティアリスからスマホを取り返すなんて絶対に無理ゲーだよぉ……!)
現代の生命線であるスマホ喪失の危機に焦った凛愛は、自分の髪の中に隠れている相棒に助けを求めた。
(ねえチュンペー! なんとかしてよ!)
すると、ギャル髪の毛リフレッシュ空間に完全に引きこもっているチュンペーから、イライラしたような念話が返ってくる。
『何を言うかバカ人間! いっそあのガキにくれてやれ! それより早くそのネイルという作業を終わらせろ! この光、髪の隙間から漏れ聞こえてきて不快で仕方がないのだ!』
(光が漏れ聞こえるって日本語おかしいから! あと、バッテリーの知識がないからってスマホをただの黒い板呼ばわりしないで!)
頼みの綱の相棒はツンデレのツンが大爆発して使い物にならない。
凛愛は最後の望みをかけて、心の中でスマホに向かって必死に呼びかけた。
(メモリエル! あんたからも何か言ってよ! 帰るよって断って!)
「……」
しかし、画面の中のメモリエルは、ティアリスの極上の聖属性エネルギーを浴びて「うっとり」とした表情のシステム画面を表示したまま、完全に思考を放棄していた。
高価な美容液でも浴びているかのような至福のシステム音が、ビカビカ光る画面から静かに漏れ出ている。
(ダメだ……! 自家発電の誘惑に負けて、あたしを裏切ってやがる……!)
完全に孤立無援となったネイリスト。
眩しすぎる光の中、スマホの親権(?)を巡る新たな頭脳戦(知力2)が、放課後を前にひっそりと開幕しようとしていた。
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ブラインドネイリスト: 聖なる光で視界がほぼゼロの中、運10のステータスだけを頼りに感覚でネイルを塗り始めようとしている。
・一息(白目): 最悪の修羅場は超えたものの、自分が学園をジャックした首謀者扱いされていることには気づいていない。
・相棒:
・頭皮避難雀: 凛愛の髪の毛に深く潜り込み、聖なる光をシャットアウト中。『ふぅ、ここは実家のような安心感よ……。しかしあの吸血鬼の柔らかさは……いや、邪念を捨てよ我よ!』と脳内もパニック中。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・嫉妬の無限ループ: 「髪の中だと!? 貴様、ワシの届かぬ場所ばかり行きおって! 凛愛、ワシをその髪に突き刺すがよい!」と相変わらず無茶苦茶を言っている。
・周囲の状況:
・教室: ティアリスがスマホの画面をタップしながら「これがアプリというやつか! 面白いぞ!」とゲーム脳の片鱗を見せ始めている。
・学園中: 「冥王クラスが聖属性のテロリストに占拠された」「ライゼルたちが敗走した」というデマが爆速で拡散中。




