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第103話:除菌レベル100の聖なるライトで学級崩壊!?残ったのはヘロヘロ妖精と限界ネイリストなんですけどぉ!

 ネクロスが完全に消失したというのに、教室内は何事もなかったかのように動き出していた。


 ただ一人、星凛愛だけがその場でガタガタと震えながら呆然としている。

 ヴァル=エリクスとライゼルのガチバトルを、床に落ちていたネクロスを物理的な盾(肉壁)にして完璧に、そして冷徹に止めたミラ。


 ライゼルはまだ苛立ちを隠せない様子でフンと鼻を鳴らし、自分の席に戻って大人しく自習を再開している。


 そして、あれだけ現場を焚き付けた張本人であるヴァル=エリクスにいたっては、買ってきたばかりの首輪を自分の首にカチャリと装着し、手鏡の前で具合を確かめ出していた。


(な、なんなの? マジであり得ないんだけど! ジジィが、粉々になって消えたんだよ!? これが魔界の普通なの!? 怖すぎる……!)


 常軌を逸しすぎている冥王クラスメイトの日常に、凛愛のゲーム脳は完全にフリーズして硬直、一言も言葉が出てこない。

 そんな凛愛の傍らに、ミラが静かに、だけど確実に距離を詰めてきた。


「さあ、リア様! 騒ぎは収めましたわ! ネイルの続きを始めましょう?」


 これで見返りがもらえると信じて疑わない吸血鬼の姫君。

 しかし、それを許さないのがスマホを両手でガッチリと抱えたままの爆弾妖精だった。

 ティアリスが短い手足をバタつかせながら叫ぶ。


「たわけが! 妾が先じゃと言うておろう! 離れぬか、この下郎め!」


「あら……リア様ぁ、私、あの羽虫がギャーギャーうるさくて怖い……」


 ミラはそう言うと、ティアリスへの当てつけのように、さらに凛愛へと体を密着させてきた。


(いぃやいやいやいや!!貴女の方が怖いですからぁ!!!)


 豊満な胸が凛愛の腕に柔らかく押し付けられ、はさまれていたチュンペーの顔が再びミラの肉の壁に埋もれていく。

 この究極のラッキースケベ(ただし命がけ)に、腰の聖光剣が本日一番の大興奮で震え出した。


「た、たまらん! これぞ至高の弾力! そうだ、もっと近う寄れ! 凛愛、そのまま右腕を固定するのじゃあぁぁ!!」


(エロ剣テメェ!!てか、チュンペーが窒息死しかけてるから!!)


 自分が下郎呼ばわりされた上に、凛愛とイチャイチャし始めたミラを見て、ティアリスは完全に処刑モードへと突入した。

 その小さな手から、スマホごと世界を消し去りそうな神聖魔力がバリバリと膨れ上がる。


(あぁ…….終わった。あたしの人生、ここで終了のお知らせだわ……)


 凛愛が死を覚悟したその瞬間。修羅場の中心に、空気を全く読まない電子音が響き渡った。


 ピピッ。


 ティアリスの処刑マジ魔力を遮るかのように、彼女が抱えるスマホからメモリエルが淡々と告げる。


「ティアリス、この魔界にあって異質な貴女の聖属性は非常に心地が良いですね。私のエネルギーが、先ほどから急速に満たされています。優秀な自家発電機として認定します」


「……ぬ? なんじゃ?じ、じか、はつでん……?」


 急にスマホから褒めちぎられたティアリスは、処刑モードのまま動きをピタリと止めた。

 怒りの魔力を電気信号に変換して我が物顔で吸収し始めたスマホ(メモリエル)のおねだり戦術。


 ネイリストの命を救ったのは、まさかのデジタルによる「ヨイショ」だった。


 ティアリスの純粋な聖属性の魔力に共鳴したメモリエルは、急激にその輝きを増し、スマホの画面からまるでクラブのレーザー照明のような眩い光を放ち始めた。


 その圧倒的なホワイトアウトは、教室内を隅々まで埋め尽くしていく。


 さっきまで世界を滅ぼさんばかりの処刑モードだったティアリスは、スマホ(メモリエル)に「心地よい」と褒めちぎられた上に、自分好みのキラキラした光に包まれて、一瞬でデレモードへと移行していた。


「な、なんじゃ? 妾の力をこれほど正しく理解するとは、憂いヤツじゃのう……! ますます気に入ったぞ!」


 この妖精、感情の起伏の激しさも、チョロさも、文句なしの超一流。


 ティアリスはスマホを小さな胸に抱きしめ、頬をスリスリしながら、完全にただの甘えん坊妖精と化していた。


 しかし、そんな微笑ましい(?)爆弾妖精を尻目に、周囲の純魔族たちにとっては、この聖なる光はただの「不快極まりない嫌がらせ」でしかなかった。


「な、なんだ!? この不快な光は……! 魂が拒絶反応を起こしているのだが!?」


 ライゼルが自習の手を完全に止め、顔を歪めて自身の身を焦がすような光を睨みつける。


「あぁ……! 私の白磁の肌に悪いですわ! なんですのこの有害な光線は!?」


 ミラも凛愛への密着を急いで解除し、嫌そうに顔を背けた。

 その胸元からポロッと床に転がり落ちたチュンペーは瀕死の声にならない声を上げている。


「おいおい……冗談はやめてくれよ? ボクの美しい血の魔力が蒸発しそうだ。その変な光を止めてくれないか?」


 首輪をつけたままのヴァル=エリクスも、さすがに余裕の笑みを消して不快感を露わにする。

 吸血鬼の兄妹にとって、聖属性の直射日光は美肌の大敵どころかガチの天敵だった。


 しかし、空気を読む機能が搭載されていないメモリエルは、彼らの苦情を無視するどころか、「充電効率120%を達成。さらなる聖属性の供給を確認」とばかりに、光の出力をさらにドンと増していく。


 もはや教室の中は、目が潰れるレベルの真っ白な空間になっていた。


「チッ、まともに自習すらできん! 出るぞ!」


「お兄様、避難いたしますわ!」


 居ても立っても居られなくなったライゼルとブラドレイン兄妹の3人は、耐えかねて大慌てで教室から脱出していった。


 静まり返った(ただし超眩しい)教室で、それを見送ったティアリスは、スマホを掲げながら勝利の高笑いを炸裂させる。


「キャハハッ! これは痛快じゃ! 妾の光に恐れをなして、邪魔者どもが一斉に出て行ったわ! リア、これからは妾と其方、そしてこのすまほの3人で仲良く過ごそうぞ!」


(いや、ジジィは消滅したし、ヤンキーと吸血鬼は除菌されて出て行ったし、あたしのクラスの人間関係、放課後前に完全崩壊したんですけどぉぉ!!)


 光の中で一人だけ取り残された戦闘力1のネイリストは、あまりにもチョロすぎる爆弾妖精を前に、涙目で自分のスマホの有能すぎる(暴走気味な)おねだり機能を呪うのだった。


 現在のステータス

 ・名前: 星凛愛ホシ・リア

 ・状態:

 ・ホワイトアウト: 聖なる光が眩しすぎて、自分の手元すら見えないレベルで視界不良。

 ・ボッチ回避(?): 怖い魔族たちが去ってくれたのはいいが、主導権を完全にティアリスに握られてしまい、別の意味で頭が痛い。

 ・相棒チュンペー

 ・床からの復活雀: ミラの胸元から奇跡の生還を果たすも、光の眩しさに『おのれ……我が元魔王でなければ、この聖なる光で浄化されて消滅するところだったぞ……』と床に這いつくばっている。

 ・聖光剣アルスカイゼリオン:

 ・怒りのエロ剣: 「メモリエル!おのれぇ!ミラ殿が逃げて行ったではないかっ!」と鞘の中で大騒ぎ。

 ・周囲の状況:

 ・廊下: 避難したライゼルが「あの女、絶対に許さん」と復讐を誓い、ブラドレイン兄妹が日焼け止めを探している。

 ・教室: ティアリスの機嫌がマックスになり、机の上のネイルチップの小瓶(無事回収済み)が光を反射して怪しく輝いている。


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