第102話 : 魔力衝突の超修羅場!ネイルサロンがデスゲームに発展してるんですけどぉ!
喜怒哀楽のすべての感情が嵐のように渦巻く教室内。
ヴァル=エリクスの呑気なセリフを受け、ライゼルの瞳の奥にどす黒い炎が灯る。
「楽しむだと? ……七大貴族の出でない私が、血の噴き出す努力の結果を今ここで披露しても、楽しむと言えるか……!」
ライゼルの怒りは完全に頂点に達していた。
次の瞬間、バリバリと激しい音を立てて迸る雷光が彼の全身を包み込み、薄暗い教室内を強烈な青白い光で満たしていく。尋常ではない密度の魔力が大気を震わせる。
それに呼応するかのように、ヴァル=エリクスもまた、妖しく目を細めた。
彼の白い指先から一滴の血が滴り、床に落ちた瞬間、足元に巨大な赤い魔法陣が展開される。シュシュシュッと不気味な音を立てて、彼の周囲に無数の血の刃が突き出した。
「ひ、ひえぇぇ……!!」
二人の規格外な魔力が真っ向から衝突し、教室中のガラスがビリビリと悲鳴を上げる。
あまりの恐怖と圧力の凄まじさに、凛愛はついに口から泡を吹き、完全に白目をむいて硬直した。
そんな地獄のような絵面の中でも、ヴァル=エリクスは狂気すら感じる爽やかな笑みを崩さない。
「どうだい? 牽制し合うだけで、こんなに本気になった事なかったろ? 彼女の存在が、こんなにもボク達を高揚させてくれてるんだ!」
(高揚じゃなくて、あたしの命の灯火が消えかけてるの!! 誰かこの戦闘狂たちを止めてぇぇ!!)
泡を吹きながらも、凛愛の心の中のツッコミだけは涙目で悲痛な叫びを上げていた。
ネイルチップが戻ってきたと思ったら、今度はクラスメイト同士のガチの殺し合いに巻き込まれるという、運10のパラメータが全く仕事をしない最悪の展開へとなだれ込んでいくのだった。
二人の強大な魔力が真っ向から衝突し、教室そのものを跡形もなく破壊し尽くそうとした、その刹那だった。
ミラの美しい生足が、床でピクピクしていたネクロスを躊躇なく思い切り蹴り飛ばした。
「ウィイッ!?」という哀れな声を残し、ネクロスの体は弾丸のように二つの魔力の中心点へと正確に撃ち込まれていく。
ライゼルの迸る雷光と、ヴァル=エリクスの血の刃。その凄まじいエネルギーの激突の間に挟まれたネクロスは、まるで避雷針か何かのように全ての魔力をその身に吸い上げていく。
そして、瞬く間に光の中に飲み込まれ、教室の魔力は一気に収束していった。
「お二人とも、頭を冷やして下さらない? 教室が壊れたら、リア様にネイルをしていただく場所がなくなってしまいますわ」
ミラは何事もなかったかのように、はさんでいたチュンペーを胸元から優雅に引き抜いて机の上に置き、冷ややかな声で兄たちを窘めた。
「おっと、すまないミラ。ボクとしたことが、つい熱くなってしまったね」
ヴァル=エリクスは血の刃を消し去り、いつもの爽やかな笑顔に戻って頭をかく。
一方のライゼルも、少しやり過ぎた感を出してバツが悪そうにフンと鼻を鳴らし、纏っていた雷光を収めた。
「……フン、妹に救われたな……今回は引いてやる」
二人の戦闘狂が一瞬で大人しくなったのを見て、白目をむいていた凛愛は、別の意味で顎が外れそうなほど驚愕していた。
「あ、あ、あ……ジ、ジジィが……消滅した……!?」
さっきメモリエルに感電させられ、今度は肉壁(盾)にされて完全に光の彼方へ消え去ったネクロス。
その哀れな最期に凛愛がガタガタと震えている中、スマホを抱えたティアリスはふんと鼻で笑い、彼の消滅など全く気にも留めない様子でそっぽを向いていた。
(消えたクラスメイトを何とも思ってない!?やっぱ魔界怖えぇぇぇえ!!)
現在のステータス
・名前: 星凛愛
・状態:
・ガチ震え: 魔力の衝突は収まったものの、目の前でクラスメイト(ゾンビ)が消滅したショックで魂が抜けかけている。
・五体満足: 運10のおかげか、教室崩壊の巻き添えを喰らうことだけはギリギリで回避した。
・相棒:
・生還雀: ミラの胸元からついに解放され、机の上でペッと羽を整えている。『……あの吸血鬼の女、我が主を盾にするとは相変わらず恐ろしい執念だな』とネクロスのいた場所を見て戦慄中。
・聖光剣アルスカイゼリオン:
・安堵: 「ふぅ、助かった。あのジジイの犠牲は無駄にせぬぞ……まぁ、ワシは何もしておらんがな!」と、急に態度を大きくしている。
・周囲の状況:
・ネクロスのいた場所: 完全にチリ一つ残っておらず、彼が書いていたノートだけが虚しく床に落ちている。
・ブラドレイン兄妹: ミラが「さあ、リア様?」と再びネイルを催促し、ヴァル=エリクスがそれを笑顔で見守っている。




