じつは魔法が使えるんだ
男達の情報は、メールで警察にわたした。
全員逮捕されたみたいだ。テレビですごく騒がれていた。なんとか犠牲者のプライバシーは保たれたみたいで、それについてはほっとした。
それでもう、【犯人探し】は、やめにした。こんどのことでよく分かった。
悪意は、悪意を生むだけだ。
真樹ちゃんが働く店は、おしゃれな駅前の通りで、カフェやスイーツの店が並んだ一画にある。生態系としては、裕福そうなお嬢様系の生物が、優勢な地位を示していた。
擦り切れた制服を着て、化粧もしていないあたしは、駆逐されたげっ歯類みたいな感じだ。
『ねぇ、千夏。店の前で一時間もうろうろしていたら完全な不審者だ。もう、いいかげん覚悟決めたら?』
通学カバンの中で、ケットシーの声がした。あたしはカバンから携帯を取り出した。
「わ、わかってるよ。もうちょっとだけ待って」
あれから、真樹ちゃんは電話に出てくれない。
だから、あたしは真樹ちゃんが働く店までやって来たのだ。
「ねぇ、ケットシーちょっと聞きたいんだけど」
『なに? 君のことなら、まだ通報はされてないみたいだよ』
「いや、そうじゃなくて、あの時のあれ、あれ、どうやってやったの?」
『お願いのこと?』
ケットシーは、面白くもなさそうに鼻をほじっていた。ケットシーは猫なのに、ちゃんと五本の指があるのだ。
「そうよ、あれ、普通じゃないよ」
『誰にも言っちゃダメだよ』と前置きして、ケットシーは画面に顔を寄せた。
「うん、なに?」あたしは秘密が知りたくて、うずうずしていた。
『ぼくはね、じつは魔法が使えるんだ』
真面目に聞いたあたしが、馬鹿だった。




