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第11話 理由

―俺たちは重々しい雰囲気のまま、寿司を口に運んだ。


 いや、正確には3人だけが味わって食べるというような状態ではなく、吉永父だけが上機嫌で食事会を終えた。


(しかしまいったな。吉永《あいつ》から出ているのが魔力の素なら、この婚約のことについて聞き出す必要がある。)


 あくまでも第3者かつこういった話に無縁の俺があれこれ探りを入れる真っ当な理由が無いしな。


・・・仕方ない、戻ったら豊島に動いてもらうか。


◇◇◇


【そういうわけで俺は動きにくいから、お前の方から清宮さんに連絡とって聞き出せたりしないか?】


【まぁ、一応連絡先は交換してるからできるけど、本当にあのイケメンからそれっぽいの出てたんだよね?私情とか挟んでたら許さないよ?】


 当然だ。これは魔導書の使い方を確立するための立派な調査であり、不幸な若者たちを救わんとする俺のような神の使途に向かって何たる口の利き方だ。


【それとさ、一個だけ注意しとくけどあの二人が自力で婚約破棄まで持っていったら魔力は溜まらないからね?】


・・・言われてみればそうか。この婚約が進めば進むほど吉《ナメ》永《クジ》にとっての不幸だとすれば、簡単に解決すれば今以上の負の感情が湧かないということだ。


(だとすると、ある一定のラインまでは俺自らの手で婚約を進めさせないといけないってことか!?)


 そんな肉を切らせて骨を断つような真似をしないといけないなんて正直やっていられないし、ほっといても本人たちが婚《リ》約《タ》破《イ》棄《ア》するならこのままでいい。


 ただまぁ、昼の様子からすると吉永《むすこ》は父親に逆らえないんだろうと見ている。とりあえずは豊島の聞き取り調査待ちか。



―終業のチャイムが鳴る。



「主任すいません、今日はもう定時で上がります。」


「・・・すいません、僕も上がります。対応必要な業務あれば机上に置いといてください。」


・・・調子が狂う。二人同時に退勤ということは、一緒に帰るということか。

 正直気に食わないことこの上ないが、今はまだ手の出しようがない。


 今夜あたりに豊島が電話で聞くとのことだったのでしばらく残《サービス》業《対応》で時間をつぶしてから帰ることにした。


―帰宅後。


「よお。うまいこと聞き出せたか?」


『あー、アタシが婚約の話知ってるのはおかしいから適当に恋バナの流れにもってったんだけどさ、結構ややこしいみたいよ?』


 豊島の話によると、清宮家と吉永家では二人が幼いころから婚約の話があったそうだが清宮父はその場のノリの話だと思っていたそうだ。


 それが最近になってからやけにその話ばかりするようになり、清宮父としても議員の吉永父に会社設立の世話になったことから、冗談で済ませるのが難しくなったようである。


「本人たちが乗り気じゃないのは何か言ってたか?」


『それは・・・清宮さん自体がどうこうってのはないんだけど、向こうのイケメン君には高校くらいの時から付き合ってる彼女がいるっぽいよ?』


 ぃよっしゃああぁぁぁぁぁ!!!


 ということはアイツは清宮さんとくっつこうとする意図はさらさらないということだ。これからはもう少しマシな扱いをしてやろう。


『・・・なんか息遣い荒いけど大丈夫?・・そんで、その付き合ってる彼女ってのが清宮さんの幼馴染なんだってさ。』


 清宮さんにとっては後ろめたいことこの上ないな。

それにしたって吉永はさっさとそのこと親父に言えばいいだろうに、本当にナメクジじゃあるまいし何をウジウジしているんだ。


『そんで、その幼馴染のお父さんってのがイケメンパパとだいぶ仲が悪い議員さんだったらしいのね。』


・・・そういうことか。


 あの吉永《クソ》父《オヤジ》は議員としては清廉潔白を地で行く性格をしている。

 そのため、役場の怠慢や不正のみならず議員の怠慢や不正にも相当厳しいので、同じ議員連中でも毛嫌いしている人物は多い。

 

 更に詳しく聞いたところ、その議員というのはかつて議会の中で堂々と不正をバラされ、議員辞職することになった人物のようだ。

 

 今では娘同士の親交の関係から清宮《おとう》父《さん》の会社で雇われ、生活を維持しているとのことだった。


「そうなってくると、その子と吉永がくっつくには父親同士が和解するしかないし、清宮さんが婚約するとかえってその子の父親は解雇の危機に晒されるな。」


 解雇なんて今のご時世簡単ではないが、なにしろ相手は地元の有力議員だ。

 それになにより、後ろ暗い過去を持ってしまっているなら、会社都合を突き付けるのはいくらでも方法がある。


(しかしどうにかしてその子と接触を図りたいな。)


 吉永ですら、負の感情をむき出しにしているのだ。


 この婚約で最大の被害者と言っても過言ではないその清宮さんの幼馴染であれば、親子の生活と親友との絆をぶち壊されて全方向に負の感情が爆発しているはずだ。


「なぁ、どうにか俺とその子の接点を持つ方法って何かないか?」


『いや、そっからはもうアンタの仕事でしょ。イケメン君の相談乗るふりして会わせてもらえばいいじゃん。』


 

―やっぱそうなるか。ガキどもの恋愛事情なんざどうでもいいが、婚約をぶち壊して魔力が手に入るなら俄然そちらの方が良いだろう。

拝読いただき厚く御礼申し上げます。

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