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アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!  作者: 坂東太郎
『第十二章 ダンジョン攻略の便利アイテムを探すのは間違っているだろうか』

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第五話 ダンジョンに入っても稼げないものなんだな。特にお宝もなかったし

遅くなりました


 俺がアイヲンモール異世界店の店長になってから35日目。

 俺たちは、ダンジョン『旧市街地下墳墓(カタコンベ)』を出て、街道を歩いていた。

 早朝のうちに活動をはじめたから、いまはまだ朝だ。


「どうだナオヤ、商売のタネは見つかったか?」


「んー、まあ候補はいくつか。戻ったら検討してみようと思ってる」


「ふふ、楽しみですね」


 ダンジョンに行ったのは異世界っぽいことをしてみたかったから、じゃない。

 普通の冒険者の日常を模擬体験してみて、売れそうな商品を探すためだ。


「明かりの魔道具がわりのLEDランタンや懐中電灯、テントとかチェアみたいなキャンプ用品、持ち運びできるコンロ、簡単に料理できるレトルトとか携帯食料なんかも売れそうだよなあ」


「おおっ! わずかなダンジョン体験でそれほど思いつくとは! アイヲン社員はすごいのだな!」


「やめてくれクロエ、これぐらいは誰でも思いつく、と思う。あー、防寒具みたいな衣料品とか、リュックなんかも売れそうだよな」


「む? そのあたりは最寄りの街にも港町にも存在するぞ?」


「ああ、知ってる。けど元の世界の商品はクオリティがぜんぜん違うからなあ」


 そう、最寄りの街も港町に、ざっと見た感じではけっこう発展してた。

 この世界には魔法や魔道具があるから、モノによってはこっちの方が便利なものもある。


 衣料品は流行もあるし種族によっては必要とする形が違うから、日常やオシャレ着となったらきついだろう。

 けど、機能に特化した衣料品なら通用するはずだ。

 なにしろこっちには、化学繊維がないから。

 モンスター由来の不思議製品はあるけども。


「けど、まあ、うん。収穫はあった。ダンジョンに行ってよかった」


「うむ、そう言ってもらえると案内した甲斐がある! どうだナオヤ、これからも継続的にダンジョンに——」


「……アンデッドがいないダンジョンなら」


「ナオヤさん? アイヲンモール異世界店にも、アンデッドはいますよ?」


「いやあ、それとこれは別というか。みなさんは従業員ですし夜は近づかないようにしてくれてますし、少なくとも不意打ちはないし襲おうともしてきませんからね」


「お、おそッ!? ま、まさかナオヤは襲われる方が好みだと言うのかッ!? 『くっ、俺に何をするつもりだ、なっ、そこは』などと!? ふ、不潔なッ!」


「いま襲われたくないって話してただろクロエ。なんで逆になった」


「で、ではやはり襲う方が!? 『さあて、好きにさせてもらおうかなあ』などとニヤつきながらッ! くっ、殺せ!」


「そういうことでもないぞクロエ。朝から面倒臭いなこれ」


 顔を赤くしながらばたばたと手を振るクロエ。

 アンナさんはクスクス笑って、全身甲冑(フルプレートメイル)で体と顔を隠したスケルトン隊長がガシャガシャと鎧を鳴らす。

 隊長のマントの陰からとひょっこり顔?を出したゴーストは首をかしげてる。顔も首も見えないけどなんとなく雰囲気で。


「そういえば。ダンジョンに入っても、稼げないものなんだな。特にお宝もなかったし……魔石?ってヤツもあの大きさならそんなに高く売れないんだろ?」


「うむ、ゆえに『旧市街地下墳墓(カタコンベ)』は不人気ダンジョンなのだ! 縁起が悪くとも『稼げる』となれば、足を踏み入れる冒険者も出てくるだろう!」


「はあ、なるほどねえ。俺たちの収穫が少なかったわけではないと」


「少ない方ではあるな、私たちはすべて『浄化』して、鎧や武具さえ消し去ったのだから! 低品質ゆえ二束三文と言えど、多少のお金にはなったはずだ」


「あー、そっか。普通に倒せば武器や鎧を持ち帰れるのか。ボロボロだったから安いけど、ってことね」


「それに、収穫がなかったわけではありませんよ?」


「……そうでした。アンナさんにとっては、念願が叶ったことの報告も、アンデッドの浄化もありましたね」


「はい。それだけではありませんけど」


「……え?」


 満足げなアンナさんの声音が気になって振り返る。

 アンナさんは微笑んでいる。

 隣に並んだスケルトン隊長も、ガシャッと胸を叩いて誇らしげだ。

 なんのことかわからないのか、ゴーストはまた首をかしげてる。

 そういえば朝の光を浴びても、ゴーストも無事なんですね。単なるゴーストじゃなくて上位種のレイスって言ってましたもんね。

 そうそう、隊長の鎧の隙間から出てきたヤツみたいに、普通のゴーストは陽光は苦手らしいですもんね。


「…………あれ?」


 目をこする。

 スケルトン隊長のマントの肩口から、ゴーストはひょっこり顔?を出している。

 お腹を見る。

 また、ゴーストがちらっと出てきてすぐ引っ込んだ。


 陽光が苦手な、普通のゴースト?

 アイヲンモール異世界店から連れてきた従業員ゴーストのほかに、もう一体?


「………………これ、増えてません?」


「はい。旧市街の墓地で祈っていたところ、働きたいという子を見つけたんです」


「おおっ、新たな従業員か! よかったではないかナオヤ、月間一億円の売上目標を達成するには従業員を増やさないと、としきりに言っていたからな!」


「かつての街とはかかわりのない子のようですが……好奇心旺盛なんでしょうね」


 アンナさんが優しい目でスケルトン隊長の腹部を見つめる。

 陽光がしんどいはずなのに気になるのか、また黒いモヤ、もとい、ゴーストがちらっと出ては引っ込んだ。


 ゴーストは、新人さんらしい。

 ちなみに俺は店長だけど、アンナさん配下のアンデッドについては人事権がない。

 なにしろ給料もアンナさん分しか払ってない。


 そっかあ。

 ウチで働いてるアンデッドがこうやって増えることもあるんだなあ。

 たしかに、浄化の前に意思確認してたしなあ。

 ブラック企業も真っ青の条件だったしまさか応じる人? がいるとも思わなかったけども、ここ異世界だもんなあ。


 空を見上げる。

 さわやかな朝の空気をいっぱいに吸い込む。

 頭を抱える。


「おおおおおお! 勧誘してるなあとは思ってましたけども! みんな昇天を選ぶもんだから油断してたぁぁぁぁあああああ!」


 俺がアイヲンモール異世界店の店長になってから、35日目。

 知らない間に、従業員が増えてたみたいです。

 ……まあいまさらか。

 エプロン付きアンデッドもアンデッド部隊も着ぐるみゴーストもその他アンデッド各種も、いまだに全体を把握してないしな。

 うん、いまさらだ。

 24時間年中無休で働いてくれる人材が増えたってことでね。

 うん。


 俺は、無理矢理に自分を納得させた。

 納得したことにした。

 じゃないと異世界で店長なんてやってけないからね! 仕方ないね!




ひさしぶりに予定より遅くなりました&短めで申し訳ありません……。

次話はいつものペースで、1/31(金)18時更新予定です!



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※なおこの物語はフィクションであり、実在するいかなる企業・いかなるショッピングモールとも一切関係がありません!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「うむ、ゆえに『旧市街地下墳墓カタコンベ』は不人気ダンジョンなのだ! 演技が悪くとも『稼げる』となれば、足を踏み入れる冒険者も出てくるだろう!」 大根役者御用達ダンジョン?
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