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アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!  作者: 坂東太郎
『第十章 いまの売上の中心であるスーパー部門を充実させます!……お魚、食べたいし』

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第一話 次にやるのは、生鮮食品の拡充だ! 主力商品を揃えて『スーパー』を形にするぞ!


「どうだナオヤ、今日のお客さまの数は! 今日も200人を超えてしまったか!?」


「超えてたらよかったんだけどなあ


 俺が店長になってから24日目のアイヲンモール異世界店。

 営業を終えて締め作業をしてると、ノリノリのクロエが話しかけてきた。


 二度目のドラゴンセールでは、来客数387人と新記録を更新した。

 21日目以降も今日も、セール前より客数は増えた。けど、日に200人を超えたのは一度だけだ。

 いまのペースじゃ月間売上一億円を超えるのは不可能だろう。

 今月はもちろん、来月も。


「日本から入荷できるようになったし、次の手を考えないとなあ」


「次の手だとッ!? ま、まさかナオヤは手を増やし! いくつもの手で私に襲いかかっていろんなところを同時に触って蹂躙しようと! くっ、殺せ!」


「手って増やせるの? 妄想が悪化してないかクロエ?」


「ふふ、がんばれば増やせますよ、ナオヤさん。ちょっと痛いかもしれませんけど、麻酔もありますから。改ぞ——手術しましょうか?」


「へえ増やせるんだ異世界ってすごいなあ。ところでアンナさん、いま改造って言いかけませんでした? 高位のアンデッド、リッチによる人体改造って絶対ヤバい気がするんですけど」


「……使う?」


「尻尾の次は手を調理して売り出しましょうってことじゃないから。落ち着けバルベラ、手をしまってくれ」


 閉店作業を終えたのか、クロエに続いてアンナさんとバルベラも集まってきた。

 くすくす笑いながら言ってくるあたり、アンナさんは冗談のつもりなんだろう。アンデッドジョーク笑えないです。


「店長さん、わたしがんばります! なんでもしますからね!」


「あらあら、コレットったら。ですが……ナオヤさん。私たちはナオヤさんに救われた身です。ナオヤさんのためならなんでもいたします。なんなりとお申し付けくださいね、なんでも」


「いまなんで二回言ったんですかファンシーヌさん? なんか熱っぽい目なのは仕事熱心ってことですよね? 狂信者感あるんですけど?」


 尻尾をぱたぱた振ってやる気を見せるコレット、手を組んで俺を見上げてくるファンシーヌさん。

 すぐアイヲンモール異世界店に馴染んで働けるぐらい優秀な二人だけど、クセのある人材なところは他の従業員と変わらなかった。常識人枠ぅ……。


「見たことのない異国、いえ、異世界の商品を入手できるお店の次の手、ですか。興味深いですねえ」


 無料送迎馬車の片付けを終えた行商人さんも近寄ってきた。

 うしろには奥さんと娘さんもいる。

 よかった、常識人枠の従業員はここにいた。直雇用じゃなくてテナントの従業員だけど。

 御者を別に雇ってお店に働いてもらおうかなあ。


「次にやりたいことは決まってるんです。ハードルは高そうだけど」


「むっ、何をするつもりなのだ?」


「教えてください、ナオヤさん。高い障がいも、みんなとなら越えられるかもしれません」


「……飛ぶ?」


 今日の営業数字をプリントした紙から目を上げると、8人の従業員が俺を見つめていた。

 何を言い出すのか、わくわくした瞳で。

 あと背後にエプロン付きスケルトンたちが整列していた。瞳はない。

 着ぐるみゴーストも並んでる。作り物の瞳が光を反射する。

 営業時間が終わったからみんな集まってきたらしい。お疲れさまでーす。

 俺は、期待に満ちた様子の8人とアンデッドたちに宣言した。



「次にやるのは、生鮮食品の拡充だ! 主力商品を揃えて『スーパー』を形にするぞ!」



 スケルトンと着ぐるみゴーストは喋れないからいいとして、8人の反応はない。

 クロエを見る。


「生鮮……闘争鶏、突撃イノシシ、角牛、それに目玉のドラゴン肉はもうあるだろう? 肉を揃え、ま、まさかナオヤは『こちらで肉欲を満たしてください』などと! 私の肉を性的に食べさせようと! くっ、殺せ!」


「誰が性的って言った。肉から離れろ肉食エルフ」


 顔を赤らめてくねくねするクロエに言い放ってため息を吐く。

 バルベラを見る。


「……生鮮?」


 ぼんやりした顔のまま、コテンと小首を傾げるバルベラ。

 見た目10歳の女の子だけど中身はドラゴンでもう騙されない。可愛いけど子ドラゴンだ。幻想種だ。ドラゴンセールで大変お世話になっております。

 アンナさんを見る。


「鮮(・)やかな生(・)者……わかりました。生を際立たせるには『死者の王』たる私の存在は不可欠ですね? 期待に応えるべく死力を尽くします」


「不吉な発言はやめてください絶対そういうことじゃないんで。あと死力を尽くすってもう死んでますよね?」


 ぐっと拳を作って張り切るアンナさんを止める。

 生を際立たせるために全力を尽くすリッチって怖すぎるんですけど! 冗談ですよね?

 コレットを見る。


「生鮮食品……お母さんに聞いたことあります! お野菜と果物、お肉、それにお(・)魚(・)をそう呼ぶのよって!」


「おお、すごいぞコレット、ほとんど正解だ! 優秀でまっすぐでこれからもよろしく頼む」


 頭を撫でると、コレットは目を細めてゆったり尻尾を揺らした。

 ファンシーヌさんを見る。


「魚介類を販売するのですね。港町までは距離があります。問題となるのは輸送方法でしょうか」


「あっはいその通りです。……ファンシーヌさん、あとで経歴を確認していいですか? あっさり理解したことといい商人ギルド長との関係性といい、いろいろ気になってきました」


 顔が引きつる。

 生鮮食品の拡充って言った以上、『魚介類』を当てられるのは予想してたけど、懸念点までズバッと言い当てられるとは思わなかった。

 優秀すぎてそれはそれで怖いです。


「なるほど、魚介類。港から離れたこの地では入手が難しいでしょう。しかし可能なのであれば、肉や野菜と一緒に購入してもらえることが考えられる」


「それに調味料もあわせて買うと思いますよ、あなた」


「ご夫婦とも、さすがに行商してただけありますね。日用品の販売と御者にしておくのが本気で惜しくなってきました」


 ファンシーヌさんに続いて、行商人さん夫婦も俺のアイデアに頷いている。

 理解が早い。

 馬車一台に荷を乗せて行商して、生活を成り立たせてただけある。失敗すれば路頭に迷うわけで、優秀じゃなきゃやっていけなかったんだろう。

 ところで契約やめて直雇用になりませんか? アンデッドも受け入れてくれてるしイケませんかね?


「けど輸送が問題なんだよなあ。アイヲンモール異世界店から港町まで、馬車で二週間。『アイテムポーチ』に氷を入れれば腐りにくくなるんだっけ? それにしても生は無理だろうし」



 俺が店長になってから24日目のアイヲンモール異世界店。

 流通が発展していない世界では、スーパーの営業も大変みたいです。

 冷凍でも冷蔵でも輸送できて、なんなら産地直送も海外からの輸入もできる元の世界の流通すごい。

 異世界でも流通革命起きないかなあ。



 * * * * * * * * * * * * * * *


業務日報

2019年5月24日

アイヲンモール異世界店

店長/谷口直也


日間売上/516,000円

日間客数/181人

月間累計売上/10,357,000円

月間累計客数/3,202人


報告事項/

月間売上がようやく1000万円を超えました。

スーパー部門を充実させるべく、次は魚介類の仕入れルートを模索します。

データの送受信や搬入日が不安定なため、発注は仮でしておきました。

修正が間に合わない場合は現在の発注内容でよろしくお願いします。


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