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アイヲンモール異世界店、本日グランドオープン!  作者: 坂東太郎
『第九章 はあ、魔力が宿るとこんなことになるんですね。へえ』

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第七話 はあ。昨日今日といろいろあったなあ。重なりすぎだろ、なんなんだコレ

今章のまとめです


「はあ。昨日今日といろいろあったなあ。重なりすぎだろ、なんなんだコレ」


 独り言に返事はない。

 バックヤードにある従業員用休憩室でうるさくするとまわりの目がキツくなるものだけど、いまは俺一人しかいない。

 まあクロエもアンナさんもバルベラも、コレットとファンシーヌさんも、行商人一家もここを使わないから一人なのはいつものことだけど。


 休憩室で独り言を呟きながらノートパソコンでカタカタ打ち込んでも、ここなら迷惑にならない。

 アイヲンモール異世界店の従業員用休憩室なら。


「『俺の体に魔力が馴染んだ』からって、見えるものが変わるって。髪や瞳の色はいいけど、バルベラの尻尾がいままで見えてなかったって、なあ」


 クロエの髪は水色に、瞳は金か黄色に。

 見た目10歳でツノがあったバルベラの、尻尾が見えるようになった。尻尾の先には小さな火が灯ってて、感情にあわせて大きくなったり小さくなったりするらしい。

 いままでと違って見えるのは、俺の体に魔力が宿ってそれが馴染んだからだと。

 アンナさんが説明してくれたけどイマイチ納得できない。


「それはいいとして。よくはないけど店長業務には関係ないからいいとして」


 まあ見た目が変わるぐらい小さなことだろう。

 これが日本だったら「さすがにその髪色はちょっと」って注意するけどここ異世界だし。

 なんならもっと派手な人もいるし。イグアナは喋るし。見た目が人間っぽければ問題ないんじゃないでしょうか。


「それよりこっちだこっち! 発注できるようになったし入荷できるようになったのはデカい!」


 アンナさんいわく魔力の流れが変わって、小規模なら〈転移ゲート〉を使えるようになった。

 データの送受信は三日から一週間に一度。

 この、謎の模様? 魔法陣? が描かれたノートパソコンで発注を確定しておけば、繋がった時にデータが送られるらしい。

 そのタイミングでまとめて送れるから、簡単な業務日報を書くことになったけど、それもまあいい。


「さーて、初回は何を発注しようかなあ。備品を依頼するか、今回みたいに販売してる商品にプラスオンできるものを頼むか」


 データの送受信より頻度は低いけど、二週間から一ヶ月に一度、魔力の波長が合った時にカゴ台車三台分の荷物が日本から届く。

 目標の月間売上一億円を達成するにはデカいアドバンテージだろう。いざとなったら高額商品を売ればいい。

 サイズ的に車は無理だし、電気はないから家電は意味がないし、装飾品はどんなものが高く売れるかわからないけど、『こっちには存在しない異世界のお酒』や『機械式の腕時計』なんかは高額で販売できるはずだ。いいヤツは日本でだって高級品だったし。

 あ、車も売ってるんですよアイヲンモール。日本一面積が広いアイヲンモールには販売店がテナントに入ってるんですよ。アイヲンやばい。


「けど、そうすると貴族なんかと取引するわけで。それはそれで、なあ」


 高級な商品も販売してるけど、アイヲンモールのメインターゲットはあくまで「一般家庭」だ。

 アイヲンモール異世界店でもそこは変えたくない。

 半年後までに月間売上が一億円いかなかったらアイヲンモール異世界店が閉店になるかもしれないらしいから、いざとなったらやるけども。背に腹は変えられない。


「よし。ひとまずこれでいいか。送信っと」


 とりあえず、今後書くことになった簡易的な「業務日報」の今日分を仕上げて送信ボタンをクリックする。


「——おわっ!? これ大丈夫なのか? 送れてるのか?」


 と、画面が魔法陣で埋め尽くされた。

 めっちゃ不安になる。

 あとでアンナさんに相談しようと、今回届いたスマホで撮影する。圏外だけど充電できるから通信機能以外は使えて助かります。

 画面の魔法陣はすぐに消えた。


「…………まあいいか。けど『魔力の波長次第で届くタイミングがわからない』ってのがやりづらいんだよなあ」


 でも、〈転移ゲート〉が半年に一回しか繋がらなくて、日本と連絡が取れなかった時よりはるかにいい。すばらしい。アイヲンさいこう。


「さて。じゃあ従業員用アパートの様子を見に行って今日はあがりにして、発注と今後の施策はゆっくり考えるかな」


 ぐっと伸びをしてから立ち上がる。

 アイヲンモール異世界店の営業は終わって夜になってるから、スケルトン総出で建設作業を進めてることだろう。お疲れさまでーす。

 予定ではあと二、三日で建て終わるらしい。不眠不休で働けるアンデッドと魔法すごい。


「家具、食器、家電、一人暮らしの日用品……俺は欲しいけど売れるか? こっちで一般的に使ってるものはあるわけだし、魔道具なんかもあるらしいし」


 歩きながらブツブツ言う。

 アパートが完成すれば俺もテナントスペースから引っ越すわけで、その辺が売れそうか調べるいい機会かもしれない。


「けど新ジャンルの商品になるしなあ。スーパーだってカンペキじゃないし、そっちに手を入れてからでも……」


 ブツブツ言いながらバックヤードを歩いてもすれ違う人はいない。だから不審な目を向けられることもない。

 あ、黒いモヤがひょいっと上半身出してきた。お疲れさまでーす。



 俺が店長になってから23日目のアイヲンモール異世界店の営業が終わった。

 明日から、いろいろ考えることが増えそうです。



 * * * * * * * * * * * * * * *


業務日報

2019年5月23日

アイヲンモール異世界店

店長/谷口直也


日間売上/549,000円

日間客数/191人

月間累計売上/9,841,000円

月間累計客数/3,019人


報告事項/

これで送れているでしょうか?

簡易日報ということでこうした形で失礼します。

納品物が届きました!

次回発注についてはただいま検討中です。

また、次回、各従業員の履歴書、および人員計画、および教育計画をお送りください。

それからこちらの言語で書かれた各種マニュアルも送付よろしくお願いします。

送付といいますか最初にいただけるとありがたかったので忘れずに用意して送れください!


 * * * * * * * * * * * * * * *


ということで、今章のまとめでした。

これで、書籍を読んでいただいてもスムーズにいきます!

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