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王立植物園の魔女は恋がしたい〜恋多き落ちこぼれ魔女の正体は、最強の愛し子です!〜  作者: 海空里和@電子書籍2冊発売中!
第五章 終わりに向かう魔女の恋

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終わりに向かう魔女の恋⑦

「お前、何をしたかわかっているんだろうな?」


 ケイとともに森を出れば、腕組みをしたバーナードが入り口で待ち構えていた。


「ケイ、お前のことも報告させてもらうからな」

「……どうぞ」


 厳しく責めるバーナードから庇うように、エイミーはケイの前に立った。


「バーナード様、すべてはわたしの判断でしたことです! ケイは関係ありません!」

「エイミー、いいんだよ。君だけ咎められるのは嫌だ」

「ケイ……」


 ケイはエイミーの肩に手を置いて、横に並んだ。いつだって守ってくれようとするケイがエイミーの胸を締め付ける。


「おい」


 怒りを含んだ声に振り向けば、バーナードが怖い顔でエイミーたちを睨んでいた。


「下手したら、ケイを騎士団で拘束することになる。わかってんだろうな、エイミー」

「バーナード、エイミーを責めるのに僕を使うなんて卑怯だね?」

「ケイ……てめえ余裕だな。お前は見ちゃいけないものを見たんだ。このまま帝国に帰すわけにはいかねえぞ」

「ははっ。たぶん、大丈夫じゃないかな? だって僕の身体にはこの国の血が半分流れているんだよ?」


 ケイとバーナードの言い合いを聞いていたエイミーは、ぎゅっとワンピースの胸元を握りしめる。バーナード側までスタスタと歩いて行くと、顔を近付けて囁いた。


「バーナード様、あそこはわたしだけが許された聖域。そしてわたしと精霊が許せば、()()()入れます」


 エイミーの言葉にバーナードはぴしりと固まった。

 あの森には結界があり、エイミーと精霊が許した人物だけ通ることができる。立ち入り禁止にはしているが、本来誰も入ることはできないのだ。そして、精霊はこの国の要。その精霊が認めたとなれば、文句を言える人などいない。


「……それでもケイは帝国の人間だ。看過することはできない」

「わかっています。わたしも国王陛下に説明します」

「国王陛下!? エイミー……君は……」


 その後の内容はケイにも聞こえたようだ。驚いた表情でこちらを見ている。


(もうケイには明かしていいんじゃないかな? ケイとはずっと一緒にいるつもりなんだから)


 エイミーは愛し子であることをケイに告げようと、精霊の木の前で決意してきたのだ。


「おい、やめろ、エイミー」


 それに勘付いたバーナードが止めようとする。エイミーが口を開こうとしたそのとき、騎士団の一人が走り込んできた。


「メンデス護衛隊長!! セレナ嬢が攫われました!」


 その報告に、ケイの顔が一気に青ざめていく。セレナの心配とともに、エイミーの不安は膨らんでいった。



「セレナはドレイク殿下を案内していたはずだろう」


 エイミーたちは、セレナが攫われたという現場までやってきていた。


「それが……殿下がこちらのベンチで休んでいる間に、セレナ嬢がカフェまで水を取りに行かれまして……。なかなか戻ってこないセレナ嬢を殿下と探しに来てみれば、ここに水のカップが落ちていたというわけです……」


 たどたどしく説明する男は、セレナを護衛していた騎士だ。

 セレナは植物園内だから大丈夫だと、この騎士にドレイクの側についているよう命じたらしい。


「申し訳ございません!! 処分はいかようにも……!」

「そんなものは後だ! 殿下はどうしている?」

「はい……騎士団にご滞在いただいています」


 バーナードと騎士のやり取りを聞きながら、エイミーは辺りを見回した。

 ここは一般開放されている場所から一本それた道で、職員しか通れない場所だ。ここを通ればカフェまですぐなので、セレナは近道として使ったのだろう。道に落ちたカップはそのままにされ、水たまりができていた。


(セレナ様の魔力……)


 しゃがみ込んでカップに触れれば、バーナードが後ろから叫ぶ。


「おいエイミー、()()()だろ?」

「もちろんです!」


 返事をすると、エイミーはすぐに精霊にセレナの魔力の痕跡を辿らせる。

 魔法は魔力と引き換えに精霊から力を借りて使うもの。普段精霊と密に接する魔術師の魔力を辿るくらい、精霊には簡単だ。


「お前はケイを寮まで連れて行け。あと団長に報告。セレナは俺たちが追う」


 バーナードは部下の騎士にそう告げると、エイミーを見た。


「おい、ウニョを連れてるな? 行くぞ」

「はい!」


 返事をしてバーナードとともに出立しようとすれば、ケイに腕を掴まれた。


「待って!? どうしてエイミーが行くの? 危ないよ」


 ケイの顔色はまだ良くないようだ。エイミーはケイを安心させようと笑った。


「ケイ、大丈夫だから。待っていて」


 ケイはぐっと唇を噛みしめると、エイミーの腕を掴む手に力をこめた。


「僕も行く」

「はあ!?」


 最初に声を上げたのはバーナードだ。バーナードはこめかみに青筋を浮かべると、苛立ちを隠さずに告げる。


「これは俺たちの国の問題だ。他国の皇族が介入していいことじゃない」

「でもエイミーが心配だ」

「こいつは大丈夫なんだよ!」

「エイミーが留守番で、僕とバーナードが行けばいいじゃないか」


 ケイはバーナードに食い下がって引かない。ちっとバーナードが舌打ちをした。


「……バーナード様、ケイにも来てもらいましょう」

「はあ? 何言って……」


 呆れた表情で振り返るバーナードに、エイミーは続けた。


「力のある人が多いに越したことはないはずです。ケイは、今は植物園の仲間です」

「わかったよ! 犯人が何人いるかわからないしな。おいケイ、自分の身は自分で守れよ?」

「騎士は連れて行かないの?」

「三人いれば十分だ」


 バーナードの言葉を不可解に思ったのだろう。ケイは顔をしかめていた。


「じゃあ行きましょう!」


 さっそくセレナの魔力を感知した精霊が道案内に立ったのを見て、エイミーが声をかける。


「エイミー、僕が守るから」

「ありがとう……」


 ケイの表情にはどこか焦りを滲ませている。それはエイミーを心配してくれているからなのか。


「おい! ケイと俺が前で、エイミーは後ろからついてこい!」

「はいはい」


 怒鳴るバーナードに返事をすると、ケイは前に出て走り出した。その後ろをエイミーもついていく。


(ケイ……なんでそんなに辛そうなの?)


 ケイは森で涙を流していた。そのことを思い出せば、エイミーの胸に再び不安が湧き上がる。

 ケイが抱えるものの大きさを、エイミーはいまだ知らない。そのことが不安を余計に大きくさせていた。

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