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王立植物園の魔女は恋がしたい〜恋多き落ちこぼれ魔女の正体は、最強の愛し子です!〜  作者: 海空里和@電子書籍2冊発売中!
第五章 終わりに向かう魔女の恋

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終わりに向かう魔女の恋④

 ケイが義兄である兄とカフェの中に入っていくのを見届けて、エイミーは心配になった。


(ケイは帝国で大切にされていなかったんだよね……?)


 ケイが心配で様子を見にきたと言っていたドレイクは、優しそうな笑みを浮かべていたが、瞳の奥は冷たいように感じた。


(それに……何か嫌な感じがした……)

「うにょ!」


 考え込むエイミーのポシェットの中から従霊が顔を出す。最近はポシェットの中にいるのがお気に入りらしい。これならケイや他の人から隠して側にいられるため、エイミーも身に付けていた。


「うにょうにょ!」

「え? 本当? ありがとう、ウニョちゃん!」


 ウニョはケイを心配するエイミーに、精霊をこっそりカフェの中に侵入させると言ってくれた。


(それなら何かあっても助けられるよね)


 エイミーが安堵していると、バーナードとセレナがやってきた。


「あれ、どうされたのですか?」

「ドレイク皇子をここまで連れてきたのは俺だからな」

「そうだったんですね」


 エイミーは園長からドレイクを案内するよう言われたので、バーナードが来ているとは思わなかった。


「バーナードは騎士団でよくドレイク殿下と魔物退治してるからね」

「ケイのお兄さんと仲がいいんですか!?」


 セレナの説明に、エイミーはバーナードへ前のめりになった。ケイの兄がどういう人なのか、バーナードの話を聞きたい。

 しかしバーナードは、見つめるエイミーから視線を逸らすと、真っ赤になって震えた。


「~っ、~っ……ちっ、色気づきやがって!」

「うええ!?」


 答えはなく、いつもの暴言を吐かれてエイミーは目を丸くした。


「あはは。バーナードはね、エイミーの可愛さを周囲にばらされて怒っているんだよ」

「はい?」


 笑うセレナにエイミーは首を傾げた。


「そのために前髪を伸ばさせていたんだもんねえ?」

「うるせえ!」

「ええっとお?」


 セレナは何を言っているのだろうか。バーナードは義務感からエイミーの婚約者として振舞っているわけで、けしてエイミーを好きなわけではないのだ。


「目立ってしまったのを怒られているのですよね? でも、今でも精霊たちは王都を中心にこの国を守っています。それは、わたしが務めを果たしている証拠になりますよね?」


 エイミーは特級愛し子であることを隠さなくてはいけない。だからこそあまり目立たないように気を付けてきたわけで。

 でもケイと出会って、考え方が変わった。

 エイミーは人と関わってもいいし、目立ってもいい。自由なのだ。要は、愛し子としてこの国に貢献さえしていれば問題はない。


(守ってもらえるのはありがたいけど、それだけじゃ一生引きこもりだもの……わたしはケイを守れる人になりたい)


 じっと見つめるエイミーに、バーナードは眉を吊り上げた。


「お前、言うようになったじゃないか」

「褒められた……」

「褒めてねえ!」


 ふにゃりと笑えば、いつものように怒られてしまった。それからバーナードは、エイミーの腕を乱暴に掴んで告げる。


「いいか? 結婚するまでの間だと今は目をつぶってやっているだけだ。ケイの留学期間ももうすぐ終わる。くれぐれも気を許すなよ」

「ちょっと、言い方……」

「セレナは黙ってろ!」


 間に入ろうとしてくれたセレナをバーナードが大声で制する。エイミーはセレナにふるふると首を振った。心配そうに眉を下げつつも、セレナは後ろに下がる。


「ケイとはどうせ別れるんだ。返事」


 命令口調で告げてくるバーナードに、エイミーは目を伏せた。


「い、嫌、です!」

「はあああ!?」


 案の定、バーナードから怒りの声が降り注いだが、エイミーは負けずに叫んだ。


「だってわたしはケイが好きなんです! バーナード様とは結婚できません!!」

「はああああ? てめえ!」


 怒り心頭のバーナードにエイミーは両頬をつねられる。


「い、いひゃい、いひゃいです!!」

「いいか? お前が嫌だろうがなんだろうが、俺と結婚することは国が決めてんだよ!」


 そんなことはエイミーもわかっている。でも、ちょっとくらい抵抗してもいいじゃないか。エイミーがバーナードに頬をつねられ続けていると、ドレイクが一人でカフェから出てきた。


「お待たせしました」

「ああ」


 エイミーから離れ、バーナードが騎士の顔になる。

 ドレイクはバーナードからセレナに視線を向けると、手を胸にあてて軽く頭を下げた。


「セレナ嬢。お噂はかねがね。私もあなたのツアーに参加してみたいのですが、もう帰国しなければなりません。今お願いすることは可能でしょうか?」

「えっ、ええ。わたくしは構いません。メンデス護衛隊長はどうですか?」


 瞬時に聖女の顔をするセレナはさすがだ。感心しながらエイミーは横にいるバーナードに視線を向けた。


「はい。護衛をつけさせていただきますが、構いませんよ」

「ありがとうございます!」

「ではこちらへ……」


 バーナードが合図をすれば、後ろに控えていたセレナの護衛が出てくる。その護衛を伴い、セレナはドレイクを連れていった。


「じゃあ、ツアーが終わるまでじっくり話そうか」

「ひいいいい」


 ぐるりと凶悪な顔を向けてきたバーナードに、エイミーは震えあがった。そして肩に置かれた腕からちらりと見えた火傷に気づく。


「バーナード様、また火傷されているじゃないですか!」

「あ? ああ。いつものことだし、大したことねえよ」


 バーナードは騎士服の袖をまくり上げると、火傷を見た。その火傷は痛々しく、大したことありそうである。


「どうして薬を取りにこなかったんですか?」


 そういえば最近バーナードに薬を処方していなかった。エイミーが疑問を口にすれば、バーナードは唇を曲げた。


「お前の側にはいつもケイがいるから、薬なんて貰いにいったらバレんだろーが」

「だから我慢を?」

「お前の薬は苦いから嫌なんだよ!」


 魔法による火傷は、エイミーが作る薬でしか治せない。それなのにバーナードはエイミーの秘密がバレないよう、自身を犠牲にして我慢していたようだ。


(本当に真面目で正義感の強い人だなあ)


 エイミーはポシェットの中から丸いガラス瓶を取り出した。


「バーナード様、これなら苦くないですよ」

「あ?」


 エイミーはガラス瓶の蓋を開け、中の塗り薬をバーナードの火傷部分に塗布した。


「レンデュカの花が咲いたので、作ることができました!」

「ああ……お前の畑のか」

「はい! 塗り薬なら苦くないし、火傷に直接塗布できるからいいと思いまして! そのためにはレンデュカが必要不可欠で……」


 意気揚々と説明しながら薬を塗るエイミーの手の上に、バーナードが手を重ねる。


「俺のために……?」

「はい……?」


 なぜかバーナードが真剣に見つめてきている。エイミーは首を傾げた。まだ話は途中なのだ。


(ケイのおかげでレンデュカが育って、この薬を作れたんだって説明しないと!)


 エイミーが口を開こうとしたところで、バーナードが重ねた手に力をこめた。


「エイミー……俺は……」

「バーナード様?」


 どうしたのだろう。バーナードはいつもの怒っている顔だが、顔が赤いように思える。


「俺は、お前と……」


 バーナードの顔が近付いてきたと同時に、切り裂く悲鳴のような声がエイミーを呼んだ。


「エイミー!!」

「ケイ!?」


 カフェの入口にはケイが立っていた。遅れて出てきたようだが、顔色が悪い。


「ケイっ……大丈夫!?」


 エイミーはバーナードの手を振りほどくと、ケイのもとに駆け寄った。


「えっ……ケイ!?」


 エイミーの手を繋ぎ、ケイが歩き出す。


「おい!?」


 後ろでは引き留めるように叫ぶバーナードの声が聞こえる。

 エイミーはケイに手を引かれ、その場から連れ去られてしまった。

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