第17話:流刑者の行軍と最初の戦利品
巨竜の巣は、まるで大口径砲の弾着跡のように俺たちの前に広がっていた。未だ猛烈な熱放射を放ち続ける、黒くガラス固化した焦土の砂漠。後退する時間などない。俺たちの背後では、通路の『岩蜜』の泥がすでに音を立てて泡立ち始めていた。地底の熱流が地表へとせり上がってきている証拠だ。ここでもたついていれば、あのドロドロの熱泥の中で生きたまま煮込まれることになる。
「ドワーフの旧換気口への出口は、あの焦げた窪地の向こう側よ」
コリンはハンドクロスボウで窪地の中央を指し示した。その攻撃的な口調は、十三歳の指先の震えを隠すためのものだった。
「真ん中を突っ切るわ。灰を踏み越えていくの。もし遅れるようなら、アタシ一人で先に行くからね。神々に誓って置いていくわよ」
『唯一の退避ルート:特定』
フレヤの背中の毛布ハーネスに揺られながら、俺は脳内でログを更新した。
『高熱の危険地帯。タイムファクターは極めて深刻だ』
行軍が始まった。フレヤは腰の革ベルトに結びつけたキャンバス袋――金貨と剣の重みを引きずりながら、確かな足取りで前に進む。だが、この穴ぐらの冷酷な現実(環境ペナルティ)は、すぐに幼児の肉体へとツケを要求してきた。巣の床を埋め尽くしていたのは、巨竜の黒い鱗の破片が混ざった、熱を帯びた濃厚な灰の絨毯だった。焦土の熱量はあまりにも高く、大気がゆらゆらと陽炎を立てている。
フレヤは裸足だった。泥とお漏らしで汚れた神殿の衣服が、熱い灰の上を引きずられていく。窪地に侵入して数メートルもしないうちに、十一歳の彼女の身体が恐怖とは違う激痛で硬直するのが分かった。奥歯を噛み締めた隙間から、湿った短い呻き声が漏れる。熱い灰が彼女の足の裏を無残に焼き、一歩歩くごとに柔らかい皮膚に水ぶくれを膨らませていた。
それでも、彼女は俺を離さなかった。短い脚を俺の身体に回し、頭の角から生じたあの純粋な怒り(濃密な炎)だけを燃料にして、前傾姿勢で荷物の重さに耐えながら進み続けた。だが、行軍速度は明らかに低下していく。彼女の限界が近づいていた。
二メートルほど先を進んでいたコリンが足を止め、凄まじい嫌悪感を顔に浮かべて振り返った。己の貧困を隠すための、あの社交界のような傲慢な蔑みの表情。
「さっさと動きなさいよ、こののろま!」
コリンはツギハギの革の靴で灰を乱暴に蹴り上げながら怒鳴り散らした。
「行き倒れの乞食みたいな歩き方しないでよ! 熱泥が追いついてアタシたちをスープにする方が先よ。このダンジョンじゃ、弱いってのはそれだけで罪(死刑宣告)だって言ったでしょ! 早くしなさいよ!」
フレヤは何も答えなかった。角の紫色の光に照らされた瞳でコリンをじっと睨み据え、荒い息を吐きながら、絶対に涙を流そうとはしなかった。もう一歩踏み出そうとしたが、足の裏の激痛に身体が大きく傾き、今にも熱い灰の上に膝を突きそうになる。
俺は彼女の肩越しに身を乗り出し、幼児の拙い言葉を口にした。動く方の右手で、ダークエルフの少女のポーチを指差す。
「ねえちゃん、いたい(痛い)」
俺は最高に無垢な子供の声を装いながら、その赤い瞳を真っ直ぐに見据えて言った。
「あし、あちち(熱い)。わるいおねえちゃん、ふくろ(袋)の中に、くつ(靴)、あるの。ダリオ、みたよ」
コリンの身体が弾かれたように硬直した。
三歳の幼児が、自分の略奪袋の中身を正確に記憶していたという事実に、奴は激しい衝動的な怒りで奥歯をギリリと鳴らした。コリンはフレヤを見つめ、それからフレヤが引く金貨の詰まったキャンバス袋を見つめ、最後には酷くプライドの傷ついた表情でチッと舌打ちをした。
「へん、反吐が出るね。見てられないわ」
コリンは吐き捨てるように言うと、革のポーチに乱暴に手を突っ込んだ。そして、頑丈に補強された、泥まみれだがまだ破れていない一足の革の軍靴(登山靴)を取り出し、フレヤの足元へと乱暴に投げつけた。
「さっさとそれを履きなさいよ、こののろま! それは上の通路の『84人目の死体』から剥ぎ取ったやつよ。あんたらがこの巣の真ん中で焼け死んだら、アタシ一人じゃその重い金貨の袋を運び出せないじゃない。貧乏は罪だけど、巨竜の巣を裸足で歩くのはただの間抜けよ。さっさと動きなさい!」
『功利主義的なシンパシー(利害一致)を確認』
俺は心の内で冷徹にログを更新した。奴の強欲さが、結果としてパーティの生存確率を底上げしている。
『物資調達(インベントリ拡張):成功。最初の耐熱フットウェアを確保』
フレヤは躊躇わなかった。数少ない冷えた岩の上に膝を突くと、死者から剥ぎ取られたその革靴に素足を突っ込み、紐をきつく結びつけた。サイズは少し大きかったが、分厚い革のソールが、灰の地獄から彼女の足を完全に隔離してくれた。
立ち上がった瞬間、彼女の指先で踊る紫色の炎が、一段と激しく輝きを増した。彼女はコリンを見つめた。感謝ではなく、この地下世界の新しいルールを理解した者の乾いた視線だった。
「ありがとう、泥棒のおねえちゃん」
塹壕で補給物資を受け取った兵士のようなトーンで、フレヤは言った。
「うるさい! さっさと歩きなさい!」
コリンは激しい気性のまま怒鳴り返し、再び猛烈な速度で暗黒の通路の先導を始めた。
「アタシを二度とその名前で呼んだら、ここに置いていくからね!」
俺たちは再び、焦土の巣を強行軍で駆け抜け始めた。足を守られたフレヤの歩調は迅速で、一切のブレがなくなっていた。ダークエルフの機敏な背中を追いながら、古代のドワーフの旧換気口へと突き進む。
迷宮は深く、呪われ、天災の傷跡に満ちている。だが、俺の工作兵としての知識、奪った資本、そして死者から剥ぎ取った軍靴を武器に、俺たちは確実にこの地底のルールを上書きし始めていた。




