第18話:鉄の要塞と罠の糸
背後で沸騰する『岩蜜』の轟音は、ルーン文字が刻まれた巨大な鉄の隔壁の向こう側へと封印された。コリンが悲鳴のような叫び声を上げてレバーを引くと、古代ドワーフの金属扉が花崗岩の枠に重く噛み合い、俺たちを硫黄ガス、巣の息詰まる熱気、そして焦土の百人の死体からようやく隔離した。
俺たちは生き延びた。少なくとも、環境の脅威からは。
避難所は、古代の地下換気およびポンプステーションだった。天井は低く、錆びついた鉄骨で補強された石造りの部屋は、妙に冷たく乾燥しており、焼けた俺たちの喉に最高の抱擁をくれた。フレヤはキャンバスの包みを床に放り出すと、その場に膝から崩れ落ちた。コリンに投げつけられた頑丈な死者の軍靴に守られた十一歳の脚は、強行軍の疲労のあまりガクガクと震えていた。
姉は何も言わず、毛布の即席ハーネスから俺の身体を解放すると、壁際に並んで横たわり、次の瞬間には深い眠りに落ちていた。肉体の限界と、精神的ショックが決壊したのだ。
部屋の反対側の隅では、コリンが鉄のチェストの上に腰掛けていた。奴の赤い瞳が、発光菌の薄青い光の中で、俺たちの姿を上から下まで値踏みするように睨み据えている。ダークエルフの十三歳の指先が、巨竜の巣を突破した恐怖で未だに震えているのを隠すように、奴はあの地上の貴族のような傲慢な蔑みの表情(仮面)を維持していた。奴は短剣を引き抜くと、湿った布で刃を拭き始め、俺たちの毛布の間に鎮座する金貨の袋の輪郭を執拗に監視していた。
『一時宿営フェーズ:移行』
三歳児の呼吸を安定させ、眠ったフリをしながら、俺は脳内でログをめくった。
『外部の生物的脅威はシャットアウトした。内部の脅威が来る。あのコリンは、俺たちが完全に無警戒になったと判断した瞬間、インベントリの略奪を仕掛けてくるはずだ』
俺は眠らなかった。案内人と塹壕を共有しているときに、工作兵が眠るわけがない。
数時間が経過した。フレヤの呼吸は深く、一定になった。コリンは短剣を収めた。奴は耳を澄ませて静寂を確認し、地上の『不具の赤ん坊』と『浮浪児』が完全に無力化したと確信したのだろう。
奴はダークエルフ特有の俊敏な足取りで、床の上を音もなく這い進み始めた。金貨の袋と魔導書が詰まったキャンバスへと近づく。奴の細い指先が袋の結び目に触れ、その薄汚れた唇に強欲と勝利の笑みが浮かび上がった。俺たちを身ぐるみを剥いで地獄に置き去りにするつもりなのだ。
『パッシブ・カウンター(自動トラウマ罠)の作戦発動』
俺の肉体は三歳で立ち上がることもできないが、フレヤが眠る前に、周囲の警戒線の工作は済ませてあった。前哨基地のチェストで見つけた動物の腱のロープを使い、暗闇の中で、一端を金貨の袋の結び目に、もう一端をジェレミアスの高品質な細身の剣の柄へと結びつけておいたのだ。剣は、キャンバスの真上にある折れた鉄骨の梁の上に、絶妙な均衡で立てかけてある。
――重力を利用した、工作兵の古典的なトラップだ。
コリンがキャンバスの紐を力任せに引き抜いた。
――ヒュンッ!
腱の紐がピンと張り詰め、梁の上に均衡を保っていた重い細身の剣が落下した。鋼鉄が空気を切り裂く鋭い金属音を立て、ダークエルフの少女の指先から『数ミリ』の石の床へと容赦なく突き刺さった。
刃先が花崗岩をバキィと割って深く埋まり、激しく残響を震わせる。もし奴が一センチでも手を前に出していれば、その右手は肉片ごと床に縫い付けられていたはずだ。
「ひっ……!?」
コリンは悲鳴を上げて後ろへと飛び退いた。その灰色の顔は、死の切っ先が自分の指に触れた恐怖で完全に土気色に変わっていた。
金属音に弾かれたようにフレヤが目を覚まし、頭の角をドス黒い紫色に激しく明滅させながら、いつでも【濃密な炎】を放てる姿勢を取った。
部屋を支配する一触即発の緊張感の中、俺は毛布の上でゆっくりと身を起こし、動く方の右手で眠たそうに目をこすりながら、最高に間抜けで無垢な三歳児の表情を作ってみせた。床の上でガタガタと震えているコリンを見つめ、小さな指で奴を指差す。
「あー!」
幼児の甲高い声を上げ、満面の無邪気な笑みを浮かべた。
「おねえちゃん、おもちゃ(剣)降ってきた! 上から、ぽんって! わるいおねえちゃん、ダリオの袋さわったから、おもちゃ怒ったの! おねえちゃん、ばかちん、おてて、危ないないよ!」
コリンは、床に深く突き刺さって震える剣と、三歳の俺の顔を交互に見つめたまま、完全に硬直していた。その赤い瞳は、極限の屈辱、衝動的な怒り、そして脳裏を支配した圧倒的な『恐怖(戦慄)』で見開かれていた。
強欲な泥棒の脳内で、ついにパズルのピースが噛み合ったのだ。――この三歳の赤ん坊が、暗闇の中で完璧な死の罠を仕掛け、自分を床の上からコントロールしていたのだと。奴のプライドは、フレヤの目の前で粉々にへし折られた。灰色の顔が、激しい羞恥と怒りで真っ赤に染まる。
「あんた……この、不具の化け物がっ!」
コリンは拳を固く握りしめ、俺を蹴り殺さんばかりに足を踏み鳴らしたが、フレヤの紫色の炎が激しいきしみ音を立てて膨張し、奴の突進を物理的に遮断して隅へと押し戻した。
「アタシを殺す気!? アタシはただ……金貨が湿ってないか確認しようとしただけよ!」
「ちがう(違う)」
俺は幼児の短い言葉を口にしながら、一ミリ秒だけ、奴の目を軍人の氷の瞳で射すくめた。直後、再び子供の笑みに戻る。
「これ、ダリオの。おねえちゃん、あっち。またさわったら、おもちゃ、お頭(頭)に、ぽんって落ちるの。バキッ、するよ」
コリンは激しく唾を飲み込み、失われた尊厳を保とうとフンと鼻を鳴らしたが、そのまま鉄のチェストの上にドサリと腰掛け、腕を組んで床を睨みつけた。その背中には、ヒステリックなまでの絶対的な『敬意(恐怖)』が刻まれていた。もし次にもう一度小細工を弄すれば、この三歳の幼児に地底で生きたまま埋められると、奴の生存本能が理解したのだ。
フレヤは角の炎を落ち着かせ、誇らしげな、静かな笑みを浮かべながら、俺の肩に毛布を掛け直してくれた。
俺たちはドワーフの要塞の片隅で、知略によって屈服させたダークエルフの略奪者と夜を共有した。この迷宮は未だ広大で、冷酷で、呪われている。だが、地底の最初の拠点で、パーティの指揮権と戦利品の安全は、三歳児のベテランの戦術によって完璧に守り抜かれたのだ。




