第14話:深層の地図作成と最初の火花
高熱が俺の脳を解放し始めた頃、俺は目を覚ました。左肩の鎖骨骨折の痛みは相変わらずで、この三歳児という忌々しい器の脆さを嫌というほど主張していたが、精神はすでに冷徹さを取り戻していた。
前回の暗転による完全な暗黒は、わずかに変化していた。目を凝らし、探検家のような合理主義で周囲を分析する。ここは単なる地殻の割れ目ではない。地下1キロメートルの花崗岩の壁は、空気中の水分を吸収して淡い青色に発光する燐光菌の群生に覆われていた。気圧は高く、太陽を知らない臓物の網の目には、深淵から這い上がってくる一定 of の熱流が満ちている。
『高気圧、オゾン飽和、環境と絶え間ない湿度』
地底の気候変動を、俺は心の内で冷徹に記録した。
『下にアクティブな生態系がある。床を流れる水は北へと向かっている。水の流れと空気の循環があるということは、さらに深く進むことを意味していても、必ず出口があるということだ』
胸の上に温かい重みを感じた。フレヤが俺を抱きしめたまま、瓦礫から回収した古い毛布に包まって眠っていた。神殿の聖職衣は未だ恐怖のお漏らしで湿り、汚れていたが、薄青い光の中でその顔を見つめた瞬間、明確な変化に気づいた。あの聖職者が執拗な調教( manoseos )と脅迫によって植え付けたあの従順で怯えた表情は、もうそこにはなかった。眠っていても、その眉根は強く寄せられている。彼女の脳内で指揮系統が書き換わったのだ。彼女は被害者であることをやめ、戦争に赴く新兵の顔をしていた。
静寂を破らぬよう、慎重に身体を動かす。熱せられた剣のせいで水ぶくれの潰れた右手が、隣にあるキャンバス生地の包みに触れた。
『資材の確認』
戦術的な前進の快感を感じながら、俺は脳内でリストをめくった。
『金貨と銀貨の袋は2つとも無事。重量は約12キログラム。あの部屋から奪った2本の高品質な細身の剣。今の俺の腕ではただのクズ鉄だが、工具や物術の触媒としては一級品。変異体の解剖学に関する禁書、そしてあの【濃密な炎】の魔導書』
潜入作戦の基本装備は揃っている。足りないのは、それを実行するための圧倒的な『力』だけだ。
フレヤが弾かれたように目を開けた。身体を硬直させ、指先が反射的に石の床を掻いたが、暗黒の恐怖が彼女に悲鳴を上げさせる前に、俺は動く方の右手で彼女の指を強く握りしめた。
「フレヤ」
幼児の拙い言葉を使い、無害なカモフラージュを維持しながら、俺は囁いた。
「おきて。ここ、ダリオ、いるよ」
彼女は瞬きをし、キノコの薄青い光の中で俺を見つめた。それから深く息を吸い込み、恐怖を無理やり飲み込むと、泥で汚れた顔を手の甲で拭いながら身を起こした。
「ダリオ……大丈夫? 肩、痛い?」
十一歳の彼女の声は、もう以前のようには震えていなかった。奈落の底で獲得した、荒々しくも新しい成熟がそこにあった。
「いたい、ないない」
幼児の笑みを浮かべながら、俺は嘘を吐いた。
「でも、真っ暗、フレヤ。ひかり、いるの。たくさん」
湿ったキャンバス地から覗く、あの厚手の革装丁の魔導書を小さな指で指差した。あの執務室にあった魔導書だ。
「わるい本、やりかた、書いてある」
フレーズを区切り、新兵をしごく工作兵のように彼女を誘導する。
「ねえちゃんの、つのおっきい(角)。つの、炎、ぽんって、するの。フレヤの、ほのお」
彼女は本を見つめ、それから自分の手を見つめ、頭の両側にある二つの小さな黒い突起へと指を伸ばした。聖職者に玩具にされたトラウマが一瞬、彼女を躊躇わせた。その肉の変異のせいで異端と呼ばれた記憶が、彼女を恐怖の檻へと引き戻そうとする。
「できないよ、ダリオ……神父様はこれが罪だって言ってた。神様にお仕置きされるって……」
古い罪悪感に囚われた目で、彼女は呟いた。
「しんぷ、しんだ(死んだ)」
俺は幼児の顔のまま、その目を氷 of の瞳で射すくめて言った。
「かみさま、ここ、見てない。1キロした(下)、神様、見えないよ。ここは、フレヤのばしょ(場所)。ほのお、だして。ダリオ、こわいの」
『幼児の無力を演じる』という戦術は、完璧な起爆剤となった。三歳の従弟が怖がっているという事実が、彼女の脳内から教会の罪悪感を一瞬で消し去った。フレヤは拳を固く握りしめた。目を強く閉じ、頭頂部で脈打つあの濃厚な熱へと全神経を集中させる。
『生体エネルギーの伝導』
俺は沈黙の中で、この世界の魔術のメカニズムを観察した。
『あの角は熱誘導のコイルだ。頭蓋の基部に圧力を蓄積させている』
キチキチという鋭い摩擦音が、洞窟の静寂を破った。
フレヤの二つの黒い角が明滅を始め、キノコの青を切り裂くような、ドス黒い紫色の輝きを放ち始めた。彼女は右手の人差し指を前方へと突き出し、努力のあまり身体を震わせながら、あの聖職者への嫌悪、触られた不浄のトラウマ、そして喪失の怒りのすべてをその一点へと凝縮させていく。
――爆ぜた。
油のように濃厚で、水銀のように重い小さな紫色の火花が、彼女の指先から揺らめき立った。通常の炎のように爆ぜることはなく、ただ一定の質量を持って浮遊し、地底の迷宮をバイオレットの残光で照らし出す。彼女自身の肉体から生み出された、【濃密な炎】の最初の安定した火花だ。
フレヤは息を荒くして目を見開いたが、指先の上で踊る炎を見た瞬間、純粋な『力』への陶酔がその唇に野性的な笑みを刻んだ。彼女はもう、誰の物言わぬ所有物でもない。
「できたよ、ダリオ……」
猛烈な歓喜を孕んだ声で、彼女は炎を見つめた。
「光が、ある」
「きれいな、ひかり、フレヤ!」
俺は幼児のフリをして不器用にパチパチと手を叩きながら、内なる軍人の脳で、バイオレットの光が映し出した地底のルートを急速にマッピング(地図作成)していった。
「さあ、あるこう。おうち、さがしにいくの」
大人のいない、深層迷宮のサバイバル(生存戦略)が正式に幕を開けた。俺たちには金があり、鋼鉄があり、禁書の知識があり、 shadow『盾』となるフレヤ自身の破壊兵器が手に入った。この地獄を1メートルずつ支配してやる。俺たちのペリメーター(防衛線)に踏み込もうとする害虫どもは、軍人の戦略と異端の炎が交差した時、一体どんな屠殺場が完成するかをその身で知ることになるだろう。




