第12話:三歳の盾
奈落の底の暗黒は、ただ光がないというだけではなかった。それは、死者たちの鉄の臭いや、焦げた大地の臭いと共に、肺の奥へと侵入してくる重苦しい空気だった。手のひらに握られていた剣は、すでに完全に冷え切っている。地表から1キロメートル以上も下の虚無の真ん中で、俺たちはただの目に見えない2つの肉体と化していた。
その時、掴んでいた聖職衣の布地が小さく動いた。
突然の、そして怯えたような呼吸の音が聞こえ、直後にフレヤの身体が頭から足の先まで激しく震え始めた。彼女が意識を取り戻したのだ。彼女の指先は、壁や光、あるいは叔父たちの痕跡を探して、完全に混乱しながら岩の地面を掻きむしった。
「ホセ叔父さん……? セレナ?」
彼女の声は引き裂かれた糸のように細く、暗闇の広大な残響の中に吸い込まれていく。
「真っ暗……何も見えない。みんなどこにいるの?」
恐怖が彼女の呼吸を乱暴に加速させ始めた。爪が必死に花崗岩を削る。このままでは、彼女は恐怖のあまり、この地底に響き渡るような悲鳴を上げてしまうだろう。もし近くに何か別の怪物がいたら、俺たちの場所が完全にバレてしまう。彼女をこのまま崩壊させるわけにはいかなかった。
俺は折れた鎖骨の、突き刺すような激痛を必死に堪えながら、滑らかな泥の上を這い進んで彼女の身体へと飛びついた。三歳児の短い両腕を彼女の首に回し、幼児の頬を彼女の頬へと押し当てる。彼女が一人ではないことを、肌で感じさせるために。
「フレヤ」
俺は耳元で、この年齢にふさわしい、たどたどしくて短い言葉を選び、できるだけ優しい声を絞り出した。
「ここ。ダリオ、ここにいるよ」
彼女は弾かれたように身体を硬直させたが、それが小さな俺の身体だと気づいた瞬間、骨をへし折らんばかりの力でその服にしがみついてきた。
「ダリオ! 何も見えないの! みんながいない! 地面が落ちて、全部壊れちゃった!」
彼女は俺の小さな肩に顔を埋め、激しく身体を震わせながら泣きじゃくり始めた。
「叔父さんたちはどこ? なんでこんな臭いがするの? 怖いよ、ダリオ……すごく怖い」
彼女から涙が溢れ出し、温かい水流となって俺の首筋を濡らした。ホセとセレナを失った痛みが、彼女の心を内側から引き裂いている。前世の三十三歳の肉体があれば、彼女を抱き上げ、武器を掲げてこの地獄から歩いて連れ出してやれるのにと、これほど強く願ったことはない。だが現実はこれだ。俺は傷ついた幼児であり、彼女は壊れた少女だった。
叔父たちを返してやることはできない。だが、彼女がここで完全に壊れるのを防ぐことはできる。俺は短い指で彼女の背中を強く抱きしめ、持てるすべての優しさで彼女を包み込んだ。
「なかないで、フレヤ」
俺は彼女の耳元で静かに囁いた。
「ぼく、ここに、いる。はなさない。ずっと」
「真っ暗だよ……」
彼女は自分の涙に咽びながら、さらに強く俺を締め付けた。
「だいじょうぶ」
幼児の、だが落ち着いた確かなトーンで俺は応じた。
「うえ、みて。せん、ある。ちっちゃい、ひかり」
フレヤは暗黒の中でゆっくりと顔を上げた。俺の小さな手が指し示す方向を追い、奈落の天井へと目を凝らす。
そこには、目眩がするほどの遙か上空に、地割れの隙間から細く惨めな灰色の一条の空がのぞいていた。かつての日常が、1キロメートル以上の深層に埋もれたことを告げる、天空の小さな傷跡。
「星……?」
彼女は、地上の遠い光を、奈落のあまりの深さゆえに星だと勘違いして、かすれた声で呟いた。
「うん、ほし」
俺はその優しい嘘を受け入れ、彼女の心を落ち着かせるためにその勘違いを利用した。
「ほし、みてる。フレヤ、ひとりじゃない。ぼく、フレヤ、まもる。ずっと」
彼女の呼吸のテンポが少しずつ落ち始め、激しい波の真ん中で最後の固い岩にすがるように、三歳の俺の肉体に頼りながら落ち着きを取り戻していった。喪失の傷は未だ彼女の脳裏で血を流し続けているが、破滅的なパニックは止まった。
俺は静かに彼女を抱きしめたまま、湿った石の床の上に座り続けた。数メートル先の暗闇には、隠された金貨の袋と剣の重みが沈んでいる。
戻るべき家もなく、守ってくれる大人もいない。だが、この肺に空気が残っている限り、この幼い肉体は、フレヤをいかなる恐怖からも遠ざける、決して破られない防衛の場となる。




