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ep.97 深刻な相談

 第三学年 九月五日 日曜日

 阪急神戸三宮駅付近 某ハンバーガーショップ


「友里、どう?これ似合う?」


「涼子、すごい似合うでそれ、よかったやん!」


 買ったばかりのシルバーのリングをつけて見せる川本に、自分のことのように嬉しげに村瀬が応じると「ほんまに、ほんまに?」と、川本は笑みを溢した。


 頑張って買ったアクセサリー、異人館でお姫様に変身したこと、妙に美味しかったソフトクリーム、駆け抜けた一日の話が一段落つくと、フライドポテトを片手に川本が優しい口調で訊いた。

「で、今日のほんまの話は何なん?」


「え、ほんまの話って?」

 パッチリした瞳を大きく開いて驚く村瀬に、川本は微笑みながら続ける。


「なんやかんや言うて友里とも長いからな、何か相談あるんやろ?言うてみ、」


 困惑の表情を浮かべる村瀬を見て、これはかなり深刻な話やなと川本は直感した。


「言いたくないんやったら、無理せんでええねんで、」と気遣う川本に、低く細々とした声で村瀬は俯き言った。

「ううん、涼子にしか、こんなこと話せへんから・・・、聞いてくれる?」


 その深刻な村瀬の様子に川本は生唾を飲み静かに頷いた。


「実は、今な、好きな人ができてん・・・」


「す、好きな人・・・だ、誰なん?」

 嫌な予感ほど的中するものだ。

 この言い古された言葉が珍しいくらいにピッタリと予感は的中したのだ。


 躊躇した様子ながらも村瀬は言った。

「岡君・・・」


「お、岡君か・・・」

 川本はどこか寂しい気持ちで応じた。


 それを知ってか知らずか村瀬は申し訳なさそうに言った。

「ごめん、一年生の時、涼子が岡君のこと好きやったんは知ってるで。

 だからこんな相談するのは可笑しいかなって思ってんけど。

 でも、こんなん相談できるんって涼子くらいしかおらんかったから、ごめん・・・」


「ええねん、私のはもう過去のことやから、今はもう、ただの友達やからな、」

 村瀬を気遣い明るく言った川本の声は僅かに震えていた。


「ありがとう、涼子・・・」


「ええんよ、そんなことより、言いにくいねんけど・・・」


「佐那のこと?」


「知ってたん?岡君が佐那のこと好きなん、」


「好きな人のことやもん、見てたら分かるやん。それに佐那も岡君のことを、」


「うん、そやな、それでも頑張るん?」


「うん、そのつもり、何もしないで終わるのは嫌やから」

 そう言った村瀬の瞳には先程までの弱々しさはなく、挑戦者の光が灯り始めていた。


(何もしないで終わるか・・・)


 複雑な気持ちを抑え川本は訊いた。

「それで、どうするつもりなん?」


「十月七日の私の誕生日に岡君を家に呼んで、そこで告白するつもり」


「佐那のこともあるし、岡君、来るかな?」


「だから、涼子にお願いがあるねん」


「お願いって?」


「うん、私の誕生会するって、みんなに声掛けてほしいねん」


「みんなに?なんか永嶋君の告白みたいな、」


「うん、あの時の永嶋君には感動してん。

 だから、私も堂々とみんなの前で勇気を出そうって思ってん。

 そうすればきっと・・・」


「きっと・・・」変に気を遣い過ぎる佐那が岡君をあきらめると・・・

 頭の中にふと生まれた言葉はさすがに声にしなかった。

 いや、これはただの嫉妬なのかも知れないと川本はどこか居心地が悪い思いさえした。


 二人を少し離れた席から無精髭を延ばした男がじっと見ていた。

(十月七日の君の誕生日に、最高のプレゼントをあげるよ)

 暗く澱んだ光を瞳に湛えて男は甘く囁いた。


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