ep.95 あなたの言葉2
そうこうしているとゾロゾロと一文字、正輝、永嶋、棚橋がトレイを手にやってきた。
林の両脇に陣取った一文字と正輝はトレイをテーブルに置くなり、掌底で林の口が飛び出すほどに頬を挟み込んでほざいた。
「レッツゴーさぁっ、ぶっ!」皆まで言う前に炸裂した林の裏拳の前に二人は撃沈した。
ともあれ食事がはじまり、一文字がとんこつラーメンをすすっていると、林が辺りを見回し挑発的に言った。
「なあ、この中で誰が一番ボケが上手いん?」
サッと条件反射で手を挙げる二人、一文字と正輝だった。
「あほ、俺の方が上手いに決まってるやろ!」
「なに言うとるねん!
幼少の頃より笑い王の名をほしいままにしてきた俺やぞ!」
互いに譲らない二人をみて、溜息まじりに林が提案した。
「じゃあ、私が適当にツッこんであげるから、みんなボケてみ」
「みんな!」
永嶋と棚橋がなんで俺らもやねんという思いをありありと顔に浮かべている。
「あんたも他人事やないで」
「え、私も?」
林の言葉が、それまでニコニコと微笑んでいた佐那の顔に動揺を走らせた。
「ほらほら、もうはじまってるねんで」林が急かしたとき、最初に奴が動いた。
一見普通に日替わり定食を食べる永嶋にどこか違和感がある、箸の先端が妙に太いような・・・
「箸が逆!」
(王道?)
ガタン!激しい音とともに棚橋は勢いよく立ち上がると、紙コップに入ったお茶をしつこいように飲みはじめた。
何度も何度もしつこく飲み続ける。
「もう、お茶入ってないから、ね、もう、入ってないから・・・」
気の毒そうに両手を前に出し、諭すように林が言ったが、それでも棚橋は飲み続ける。
「もう入ってへんっちゅうに!」めんどくさいので林は頭をひっぱたいて終止符を打つ。
(あれ?)
隣でとんこつラーメンをすすっている一文字が小刻みに震えているのに気が付いた。
チラリと横目で見やると尻が椅子についていない。
(空気椅子? あほちゃう・・・)
とりあえず何も言わずに放っておいた。
「お前、今、こっち見たやろ、はよツッこめや!」
膝をガクガクいわしながら抗議する一文字を聞き流していると逆サイドからくちゃくちゃと粘っこい音がしてきた。
パッと視線を送ると正輝が素手でカレーを食べていた。
「インドの人?」
(体張ってるけど、大しておもろないな、)
(そう言えば対面の佐那は?)
特に変わった様子のない佐那を見やるとやっぱり変わった様子はない。
じっと見ていると妙に食べるのが遅いことに気付く、
「食べるの遅い!」とツッこませるつもりなのか?
それやったら最悪やなと不安を抱きつつ林は訊いてみた。
「で、佐那は何してるん?」
「一度、胃に入れた物を口に戻して今噛んでるねん」
「牛かい!」
林は容赦なくひっぱたいた。




