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ep.91 強打者
第三学年 七月六日 火曜日
武庫川沿い某バッティングセンター
剛速球コースのバッターボックスに銀平がバットを構えて立っている。
ブンと空を切る音はこれで十三連続だ。
十回目を過ぎたあたりから、照れ隠しなのか空振りする度にバックネット裏の一文字と正輝のほうに引き攣った笑みを向けてくる。
それはうけない漫才をみせられているような感覚とダブり、どこか切なくて、見ているほうも居た堪れない気持ちにさせられる。
「それにしても、あの場面で告白とは永嶋の奴もごっついことしよったな」
「そのことやねんけど、林が自分で言っとった。
私がなかなか告白せえへんから、最後の勝負に出たんやろうなって、ゲラゲラ笑っとったで」
「永嶋のやつ、可哀想になあ~」
「まあ、正直なところ、林は顔は悪くないやろ」
「せやな、顔は悪くないな・・・」
一文字と正輝が友人の今後に思いを巡らせて深い溜息をついていると、銀平がファールチップ一回だけというすごい記録を引っさげて、照れ笑いで己の不甲斐なさをごまかしながらバッターボックスから出てきた。
気の毒なその姿に一文字はどこか胸が詰る想いがした。




