ep.81 第三学年開始
第三学年 四月八日 木曜日
宝塚ゆずり葉高等学校 体育館
ついにやって来た、高校最後の学年、最初の登校日だ。
太陽の暖かい陽射しが差し込む体育館には、去年同様にキャスターの付いた移動式の掲示板に新しいクラス割が貼り出されている。
これまた去年同様に、神に祈りを捧げつつ、己と上原佐那の文字を懸命に探す。
隣の永嶋と正輝も真剣な眼差しでなにやら探しているようだが、それどころではない。
三年一組に『白山正輝』、そしてここには無い、さらば正輝・・・
三年二組、ここには無い・・・
三年三組に『上原佐那』、必死に同じクラスを探す、『林優子』とにかく今はどうでもいい、視線を先に送る、『永嶋勝』、『川本涼子』、『棚橋満』・・・・
(俺は?俺は?・・・)
『岡一文字』
(あった!)
今年もみんなと佐那と同じクラスだった。
ふと目に入った、『村瀬友里』も同じクラスだった。
聞いた噂を思い出した、去年の暮れに中谷と別れたとかどうとか。
まあ、今の一文字には何の意味もないのだが・・・
隣を見やると正輝が元気なくうな垂れていた。
視線を移すと永嶋と目が合った。
ふと溜息が聞こえた。
その方向を見やると、うな垂れ再び溜息を吐く正輝、そしてまた永嶋と目が合った。
一文字と永嶋は両目を見開きつつも必死に笑いを堪えた。
これから一年間を過ごす新しい教室の黒板には去年と同じく座席表が書かれていた。
窓際の前から四人目に佐那、その斜め後ろが一文字の席だった。
一文字の廊下側斜め後ろに川本、その後ろが村瀬だった。
今年も棚橋は最前列の真ん中だった、憐れな男のために一瞬吹きだしてやった。
いつも一緒だった永嶋さんは、遠い廊下際にすっ飛んでいた。
永嶋さんがノコノコとやって来て言った。
「岡、おしかったな」
「おお、とうとう俺らも離れ離れやな、後一年で記録作れたのにな」
「そうやない、後、一つ前やったらって、思っとるやろ?」
一瞬、鼻が出そうになったが、ここは高校三年生の大人っぷりを披露してやった。
「そうやな、佐那が隣やったら楽しいからな、なあ、佐那」
「うん、ほんまやね、残念やわ」
振り返り、微笑みながら佐那は応じてくれた。
(今回は俺の完勝や!)
一文字は、上から永嶋を見下ろしてやった。
佐那の元に賑やかなあの女がやって来た。
「佐那~、また岡君の近くかいな、迷惑な話やな、先生に言って代えてもらおっか」
「あほか!俺のどこが迷惑やねん!」
そんな一文字のツッコミをほったらかして林は佐那となにやら盛り上がっている。
そこに川本が村瀬を連れて合流した。
村瀬はイメチェンしたのか、うなじが露わになるほどに髪を短くしていた。
「はじめまして上原です、これからよろしく」
「こちらこそよろしく、村瀬友里です、友里って呼んでね」
「私は林優子、佐那の大親友やで、な、佐那」
「うん、せやね」
村瀬と佐那が、自己紹介を兼ねた挨拶をしている、こんな日が来るとは思わなかった、どこかぎこちない違和感のようなものが、一文字の心の中にくすぶっていた。




