ep.69 銀平杯4
そして迎えた決勝戦、小林銀平vs永嶋勝の一戦の幕が、切って落とされた。
「こ、これは・・・」
開始早々、永嶋が、皆の予想を裏切る行動に出たのだ。
守り守りの試合と思われていたのだが、未だ疲労感のある銀平に一気に詰めより、怒涛の連続攻撃を仕掛けたのだ。
小内刈り、小内刈り、背負い投げ、銀平が後方に重心を移して耐えようとすると、さらに押し込み小内刈り、小内刈りに続き体を回転させ背負い投げ、と思いきや右足で銀平の右かかとを刈り、その足を掴み掛かかった。
「へえ、永嶋の奴、背負い小内なんか持っとったんか」
虚を突かれた銀平は、トントントンと残った左足で後方に下がり凌ごうとするが、永嶋の前進力がそれに勝り、銀平は後方に倒れ込む、それでも宙で体を捻ったため、一文字が下した判定は「有効!」だった。
(休ませへん、一気に決める)
永嶋はすかさず横四方固めに取り掛かった。
「なんや永嶋の奴、やるやんけ」
「がんばれ、いけるで!」
林が口に両手をあてて声援を送る。
持てる限りの力で銀平を押さえ込む永嶋の顔は真っ赤に染まっている。
(永嶋が勝つかも知れん)
皆、一瞬そう思ったが、底力が違った。
(こなくそ!)
銀平は下から永嶋を揺さぶると、力強いブリッジで体を素早くひっくり返した。
(抑え込まれる!)
永嶋は銀平を払おうと両手を突き出したが、これが裏目に出た。
銀平は突出した永嶋の右手首を両手で取ると両足で腕を挟み込み、後方に倒れ込んで腕ひしぎ十字固めを極める。
「あかん、完全に腕が伸びきっとる。万事休すやな」
激痛の中、永嶋はたまらずタップする。
軍配は銀平にあがったのだ。
だが、誰もが予想もしなかった永嶋の善戦に驚かされていた。




