ep.66 銀平杯1
第二学年 十一月十四日 土曜日
宝塚ゆずり葉高等学校 二年三組教室
二限目と三限目の間の休憩時間だった。
佐那は二限目の一文字の行動を不思議に思い、素朴な疑問を投げかけてみた。
「なあ、一君、授業中、熱心に柔道の解説書を読んでたみたいやけど、どないしたん?」
「おお、見つかってたか、実は明日な、柔道で決闘があるんや」
「柔道の決闘?なんか大会にでも出るん?」
「いや、そんなんやない、俺のライバルとの一騎打ちやねん」
「ライバルって?」
「言うならば、俺が龍なら奴は虎や」
「虎?虎って誰なん?」
「銀ちゃんや、ここんとこ連敗続きやからな、ここらでギャフンと言わさんとあかんねや」
「へえ~、おもろそうやな」と、応じたのは佐那ではなく、いつの間にか現れた正輝だった。
周りには、これまたいつの間にやら林や川本までいた。
「なんやお前ら?ゾロゾロと集まりやがって」
「こらこら、人をゴキブリみたいに言うな」
「せやけど、岡君と銀ちゃんの柔道の試合っておもろそうやね、見に行ってもええの?」
「おいおい、川本、俺らは常に真剣勝負やねん、見世物やないねんぞ」
「あほう、一、俺は見に行くなんてぬるい事は言わん、俺と永嶋も参戦するで」
「はあ!ごぼっ」一文字の後ろの席で外野気分でやり取りを聞いていた永嶋は、チューチュー飲んでいた牛乳を思わず噴出しやがった。
「よっしゃ、決まりやね、私らは応援にいったげるわ、可愛い女の子がいるほうが、きっと銀ちゃんも盛り上がるわ」
「決まり、決まり~!」
林の無責任な発言に川本もノリノリで続く、困った一文字は助けを求めるような瞳を湛えて佐那の顔を見た。
視線に気付いた佐那は悪戯っぽい笑みを浮かべて言ってくれた。
「私も見にいってもええかな?」と、
観念した一文字は放課後、早速、今日の出来事を銀ちゃんに電話で連絡した。
銀ちゃんは予想の他、ノリノリで承諾した上でほざきやがった。
「そうか~、それやったら、銀平杯を開催やな」
「銀平杯ってか?」
「そうや、これで世界一強い男が決まるんや、明日が楽しみやな。じゃあ、一さん、俺は明日に備えて準備があるから、いい夢見ろよ」
電話は一方的に切れた。
何はともあれ、とんでもないことになったものだ。
俺も明日に備えて寝ようと一文字は布団に滑り込んだ。
闇が訪れ、戦いの日を迎えるのだ。




