ep.61 修学旅行5
林がハイテンションな様子で両手をあげながら叫んだ。
「二問目は私やな、じゃあ、すごいの出すで~」
「おっしゃこ~い、なんでもこ~い!」
一文字ら、男連中も負けじと打ち返してやった。
『自分のこんなところがカッコイイというところはなにか?』
「なあ、なあ、このフリップ小さ過ぎると思わへん?」
「お前、そんなにええとこないやろ」
心配そうにフリップを見やる一文字に永嶋は冷ややかな目で言い放った。
「はい、フリップ・オープン!」
①永嶋 『何もなし』
②棚橋 『彼女が作れないのではなく、作らない硬派な俺』
③一文字『バッティングセンターの剛速球でバントするブレイブハート』
④正輝 『全身皆凶器』
林『①』 川本『②』 佐那『④』
「永嶋君の自分をよく知ってるのがポイントやわ」
「やかましいわ」
「棚橋君の自分を知らない発言もなかなかやと思うけど」
「知っとるわ!」
「佐那はなんかそんなん好っきやな~」
「そ、そう?」
横目でチラリと一文字を見やって林はぼそりとつぶやきやがった。
「岡君のはイマイチやな」
うつむき加減の一文字をよそに林が早い口調で進める。
この女はなにをそんなに急いでいるのだろうか、下痢にでもなって、早くトイレに駆け込みたいたいのか?
「はい、次は佐那の番やで」
「うん、じゃあ、三問目はこれ」
『おばあちゃんからのお年玉、何?』
「なんやいきなりジャンル変わりよったな」
「なんか、ノスタルジックやな?」
「いや、そういう次元の話とちゃうやろ」
「やっぱ、あれが期待されてるんやろうな」
「おお、あれやな」
一文字と正輝は互いにうなずきあった。
「ハイ」と一斉にフリップを開く。
①永嶋 『じじいからの結婚指輪』
②棚橋 『三百万円』
③一文字『金の入れ歯』
④正輝 『金の入れ歯』
「マジでかぶるん!」一文字と正輝は顔を見合わせて驚いた。
林『①』 川本『①』 佐那『①』
「もっと大事にせえって思わされる発想がいいと思うわ」
「ほんまやね」
「岡君と白山君のは、かぶってるのは滑稽やけど、内容はイマイチやわ」
「じゃあ、次は私やね」
川本が次のお題を出す。
『付き合ったときの特典はなんですか?』
「特典か~、俺といられるっていうのが一番の特典やと思うけどな~」
「一、そう思ってるのはお前だけや、女やったら、皆、俺と居たがってるんや」
「別に私は居たないで」
「やかましわ!いらん、ツッコミすな!」
「ハイハイ、じゃあ、フリップどうぞ!」
①永嶋 『一緒にショッピング強盗』
②棚橋 『少尉と呼んであげる』
③一文字『君はもっと素敵になれる』
④正輝 『金の入れ歯』
「あ、やべ、さっきのフリップ出してもうた」
林『④』 川本『①』 佐那『①』
「あかん、白山君の妙な慌てっぷりがおもろかったわ」
ゲラゲラ笑う林は、苦しそうだ、よっぽどツボにはまったのであろう。
「棚橋君の少尉って呼ばれるのはちょっと遠慮したいわ」
「川本少尉!」
棚橋は大声で叫びつつ真顔で敬礼しやがった。
「え、え、」と躊躇する川本。
「第十三空挺部隊、イツデモ出撃デキマス!」
「わかったから落ち着け」と一文字が羽交い絞めにすると苦しそうにもがきながら叫ぶ。
「少尉、小官ゴト撃ッテクダサイ!」
「怖っ、じゃあ、私は②に変更するから、」
「敵艦隊沈黙、我、攻撃ニ成功セリ、繰リ返ス、我、攻撃ニ成功セリ」
おみやげの船長帽を被り、真顔で敬礼する棚橋は、異様な奴だった。
「棚橋君があんなに軍人好きとは思わんかったわ」
「軍人というよりは変人やろ、」
「じゃあ、最後、佐那いっちゃって」
「それでは、最後のお題です、デデ、デン!」
『熊に襲われたときの対処法』
「最後にきついの来たな~」
「俺は得意分野やな、中学時代は熊殺しの岡って呼ばれてたからな」
①永嶋 『撃ち殺す』
②棚橋 『フットワークで背後に回りこんでチョークスリーパー』
③一文字『喉輪』
④正輝 『金の入れ歯』
林『①』 川本『①』 佐那『②』
「あかん、白山君、二度目はないわ、最悪やわ」
「最悪!」
「個人的には逃げると思うけど、体術で戦うんやったら棚橋君のが一番、現実味があるように思えるわ、でも、相当の腕力がいると思うで」
「いや、どんなに腕力あっても嫌やけどな」
「お前が書いたんやろ」
林は腕を組みながら横目使いで一文字を見やると上から言いやがった。
「で、あえて聞いてあげるけど喉輪、どうすんの?」
「こう、腰をおろして一足で懐に飛び込み、喉輪で一気に後方に押し倒す、倒れたところを、全体重を掛けて熊の頚動脈を圧迫し、失神させる」
身振り手振りを添えて熱っぽく説明する一文字に、林が興味なさげに問う。
「それが熊殺し岡流の方法なん?」
「そうや、これで十二頭の熊を打ち倒し、奴等からは修羅と呼ばれ畏怖されとる」
「へえ~、で、虎にも?」
「そう」
「蛇にも?」
「そう」
「ライオンにも?」
「いや、それがどういう訳か、ライオンからは羅刹と呼ばれとんねん」
「ふ~ん、はい、結果発表~」
「ぴードンドン、パフパフ~」
「第三位、4番白山君、3ポイント、おつかれさま~」
「ぴードンドン、パフパフ~」
「第二位、2番棚橋君、4ポイント、おしかった~」
「ぴードンドン、パフパフ~」
「第一位、1番永嶋君、ダントツの8ポイント、おめでとう~」
「ぴードンドン、パフパフ~」
「はい、じゃあ、審査委員長の上原さんより賞状の贈呈です」
(え、私が審査委員長やったん!)
「じゃ、じゃあ、はい、永嶋君おめでとう」
永嶋はうやうやしく賞状を受け取りやがった。
その背後でうつむき加減の一文字が弱々しく手をあげた。
「すいません、僕が呼ばれていないみたいなんですけど・・・」
「あ、岡君、いたん?」
一文字はいたたまれなくなり、うつむき、思わず永嶋にすがりついた。
永嶋は一文字を冷淡に払いのけると見下していった。
「さわるな、馬鹿がうつる」と、
これ程の屈辱を受けては男一文字は黙っていられない。
突如、土下座するや泣きを入れる。
「林様、お願いします、もう一度だけ、もう一度だけチャンスを下さい!」
あ~あ、土下座しちゃった・・みたいな空気が辺りを包む中、林が仕方なく拾ってあげた。
「しゃあない、そこまで言うんやったらええよ。
じゃあ、お題は自分はちょっと変態やったかなと思うことでどない?」
「上等じゃ!」
場の流れから、永嶋ら他の三人も渋々付き合うこととなった。
「はい、じゃあ、フリップオープン!」
林の掛け声と共に男達が一斉にフリップを出した。
①永嶋 『トランクスを裏返して履いたまま登校』
②棚橋 『一人隠れて、好きやった子のリコーダをなめたとき』
③一文字『誰もいない教室で可愛い子のリコーダを吹いたこと』
④正輝 『放課後、こっそり好きな子のハーモニカをくわえた』




