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ep.60 修学旅行4

「グラバー園には絶対行きたい」

 林の主張は時間切れという現実の前に脆くも崩れ去った。

 慌ててお土産を買い、集合場所へと急ぐ。


 全員集合すると早速、バスで門司港へと移動、家路に向かうフェリーターミナルに到着した時には夕日は既に沈もうとしていた。


 フェリー内はレストラン、ゲームセンター、展望大浴場と設備は万全であったが、あてがわれた部屋が女子は『二等指定B』と呼ばれる八人部屋だったのに対して、男共には『二等室』と呼ばれる大人数収容の雑魚寝広場が提供されていたのが、若干不服であった。


(まあ、こんな時は大人数の方が楽しいわ)

 とみんな自分に言い聞かせ納得したものだ。


 棚橋が自分用土産の船長帽をきりりと被り一文字らに自慢していると、佐那、林、川本がなにやら紙袋を持ってやってきた。


 林は、「はい、どいたどいた」と、あたりの男共を追いやり、人の寝間にずかずかと上がり込んできやがった。

 ペンペン草も生えなくなったその後を「おじゃましま~す」と、遠慮がちに佐那と川本が続いた。


「さてさてお待ちかね、イマジネーションクイズ大会~!」

「ぴードンドン、パフパフ~」


 林のノリノリの掛け声にイマイチ乗り切れない一文字、正輝、棚橋、永嶋が下火で続いた。


 ここでいうイマジネーションクイズとは林、佐那、川本の三人の出す質問を一文字ら男共がフリップで回答し、女子が気に入った回答にポイントを与えて、最終的に一番ポイントの高い人の勝ちとかいうバラエティー番組でありがちなものであった。


 一文字が手を上げ林に質問した。


「で、優勝者の賞品は?」


「賞品・・・そうやね、じゃあ、佐那のちゅうでどう?」


(え!)


 皆の視線を一斉に浴びた佐那は顔を真っ赤にしながら両手を必死に振り否定した。


「そ、そんなん、絶対嫌やで、される方も嫌やろうし、」


「いや、俺は別にええで」

 とさらっと言う棚橋に佐那はより激しく手を振り否定する。


「棚橋君、冗談言わんといて、とにかく私は嫌やで、」


 林の冗談を本気に受け止めて、大いに怯み頑なに否定する佐那を見て林は愉快気にニヤついていた。

 佐那が少し気の毒のような気もしたが、普段、冷静な佐那の取り乱す様子が微笑ましく一文字は好きだった。


 林が困ったようなように両手を開き、わざとらしくため息をつきながら次の提案をする。


「じゃあ、私のちゅうにしとこか」


(え!)


 唇を尖らす林に、皆、正直怯んだ。


 そんな中、一文字が遠慮がちに手を上げた。


「ちょっと、よろしいでしょうか?」


「はい、岡君、何?」


「林さんとちゅうすると、なんか、痰が絡みそうで・・・」


「それもそうやね。じゃあ、棚橋君の唇を力ずくで奪う権利ってのはどう?」


「金貰っても嫌じゃ!」


 一文字と正輝はガンを飛ばしつつ、二人ががりで棚橋の胸倉に掴みかかった。


(棚橋君、被害者やのにかわいそ・・)

 思ったが、口にはしない川本。


「もう~、わがままやな~、これもあかんか・・・」

 と言うと、う~ん、う~んとしばらく考え込んでいた林がいきなりキレて一文字の頭をひっぱたいた。


「なにが痰がからみそうや、ものっそイメージダウンやわ!」


(今頃!)

 あまりの時間差に、一文字はかわすことも出来なかった。


 ともあれ、賞品は優勝を称える女子からの手作りの賞状に決定した、というかしていた。


 なんとも安上がりな賞品だ。

 ともあれ、筋金入りの負けず嫌い達によるゲームが開始されたのだ。


「じゃあ、一問目行くで」

 一問目の出題者は川本だった。


『あなたが女やったら、どんな告白を受けたいですか?』


「告白文句か・・・俺はロマンチストやから、ポエムみたいなんがええなあ」


 そう言う棚橋を一文字は横目でみやり言ってやった。


「ポエムって、どの顔がポエムやねん」


「あほか、岡、ポエムは顔で書くもんちゃうんじゃ、心で描くもんやねんぞ」


「うわ、気持ちわる、とにかく分かったから、二人ともさっさと回答を書く」


「では」と顔を見合わせてから、みんな一斉にフリップを出した。


 ①永嶋 『いつも通りの廊下ですれ違いざま、不意に好きだといわれる』


 ②棚橋 『星降る夜、夜景を見下ろしながら、耳元で好きだとささやかれる』


 ③一文字『トイレの落書きに紛れて、さりげなく好きだと書かれている』


 ④正輝 『ラブレターの中のカミソリに好きだと彫ってある』


 林『①』 川本『②』 佐那『④』


「棚橋君、古!正直、ろくなんないけど、永嶋君のがまだマシやわ、恥ずかしいけど」


「やかましいわ」


「棚橋君の古いかな?こん中やったら一番まともやと思うけど・・・」


「まともて、俺のポエムはその程度なんか!」


「佐那はなんで正輝のやつなん?」


「私は正輝君の好きなんか嫌いなんか、どっちやねんていうのが、面白いと思うわ」


「いや、百パーセント嫌がらせやろう」


「そ、そうなん?」


「俺のは、俺のは?」


「アンタのは、女子トイレに侵入して落書きするんやろ、ただの変態やん」

 フリップを揺らして執拗にねばる一文字を林がバッサリと斬った。


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