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ep.59 修学旅行3

 第二学年 十月七日 水曜日

 大浦天主堂


 雨多き街の名を返上するような秋晴れの下、異国情緒溢れる街並みが、一文字らいつもの六人の旅路を華やかに飾ってくれる。


 一文字達は食べ歩きを満喫した新地の中華街からしっとりとした石畳を辿り孔子廟へ、そこから大浦天主堂へと向かった。


 大浦天主堂は元治元年(1864)に建造された日本最古のゴシック式教会であり、洋風建築で唯一の国宝指定を受けている貴重な文化財である。


 一文字達は、白く清廉なマリア像に出迎えられ堂内へと歩みを進めると、そこでは、厳粛な堂内で虹色に輝くステンドグラスが神々しい気迫を放っていた。


「ここ大浦天主堂は洋風建築で唯一国宝に指定されてる建物でな、本名は日本二十六聖人殉教者聖堂って言うねんで」


「二十六聖人って何なん?」


「二十六聖人っていうのは、秀吉の禁教令で捕まって処刑された外国人宣教師とキリシタンの日本人の併せて二十六人のことで・・・」


 林が正輝や川本らになにやら熱弁を振るっているようだったが、ウンチクよりもこの場の雰囲気を味わいたかったのであえて放っておき、神の威厳と厳粛さを感じる中、一文字は中央大祭壇へと進み、イエス・キリストが十字架刑に処された場面が描かれた正面のステンドグラスを見上げた。


 普段、芸術とは程遠い一文字であったが、本物の芸術が持つ計り知れない魅力にしばし囚われていた。


 ふと人の気配を感じた一文字が隣を見やるとそこには同じステンドグラスを見上げる佐那がいた。

 神秘の光に照らし出されたその横顔は気高い美しさを放ち、神の奇跡の産物にさえ思えた。


 一文字の視線を感じたのか佐那も一文字に目をむける、二人の視線は一瞬出会い、すぐさまステンドグラスに戻った。


 一文字は平静さを装ってはいたが、まるで、はじめて出会ったあの日のように心は高鳴っていた。


(将来、こうやって、ここで二人が並ぶ日が来るのだろうか?)


 祝福の光の中で一文字は期待を帯びた疑問を勝手に抱いた。

 そして佐那も同じことを考えていてほしいと思った。


 逆隣に永嶋さんがいたことは、記憶の片隅にも残らなかった。


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