ep.58 修学旅行2
第二学年 十月六日 火曜日
異国風遊園地
「絶対に帆船に乗りたい!」
「オルゴール見に行こ、オルゴール!」
「次はガラス細工!クリスタルガラスで作った巨大シャンデリアがあるねんで!」
といった林の強力な主張に押された一文字、佐那、正輝、永嶋、川本は「ほんまに、しゃあないな」と言いつつもノリノリで付き合っていた。
中世ヨーロッパの情景の中をアチラコチラと歩きまわった末、少し落ち着こうと展望塔にやってきていた。
展望スペースからは、中世の街並と大村湾を一望できる絶景のビュースポットであった。
くるくると回るミニチュアの風車を指差しながら川本が楽しそうに話しかけてきた。
「ここから見てると、人も建物も模型みたいに見えへん?」
「見えへん!」
「なんで、なんで、模型みたいに見えるやん」
「見えへんわ!」と言いつつでこにツッこみ、川本の振りをあえて台無しにした一文字は、隣にいる永嶋に向かって可愛らしい口調で言った。
「ここから見てると、人も建物も模型みたいに見えへん?」
「見えへん!」
「なんで、なんで、模型みたいに見えるやん」
「見えへんわ!」と言いつつでこにツッこんでくる永嶋の手をフットワークでかわし、カウンターざまに永嶋のでこに掌底を叩き込んだ。
でこを抑えながら悶える永嶋が「限度無しか、限度無しか、」と繰り返していたのが一文字にとって大いに笑いだった。
コントトリオみたいな一文字達に構わぬ素振りで佐那、林、正輝の三人は目下に広がる景観を楽しんでいた。
「なんやここだけ見てたら、海外に来たみたいな錯覚がせえへん?」
「ほんまやね、って言うても私、海外に行ったことないねんけどな」
林と佐那のやり取りを聞いていた正輝が若干大げさな素振りで入ってくる。
「ほんまか佐那!今時、高校生にもなって一度も行ったことが無いってのは、かなり希少価値があるで」
「そ、そうなん?私、海外どころか飛行機に乗ったこともないねんけど、」
「ほんまか?それは天然記念物みたいモンやで」
「正輝君は、海外、どこ行ったことあるん?」
「小豆島!」
(イマイチ!)
背後で聞いていた一文字と永嶋は顔を見合わせて笑いに身を震わせた。




