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ep.50 合宿2

 定められていた練習が終わり、残った時間は自習ということになった。


 この炎天下、これ以上の練習は、ぬるい生活を送り続けてきた永嶋には即、死を意味するということにして、一文字達は道場近くにある滝つぼ探検に行くことになった。

「別に死なへんわ」と抗議する永嶋の声など誰の耳にも届かなかった。


 うっそうと茂る草木を掻き分け、未開の地に挑む一文字達一行の到達する先には・・・

 実は何度も行った事のある佐那を除く三人は、そのワクワクした気持ちを抱きながらの行進だったのだ。

 草の汁が足について妙に痒い、そんなこと気にならないくらい冒険心が揺れていた。


 しばらくすると歩くことだけに飽きてきた一文字は、落ちていた草で前を歩く正輝の首筋をそっと撫でてみた。

 反応は予想以上だった、蛇がまとわり付いてきたと勘違いした正輝はビクンと背筋を伸ばし一瞬硬直した、その顔は真っ青であった。


「おいおい、正輝、これやこれ」

 と笑いながら草をみせる一文字に正輝は真顔でキレた。

「あほか!いらん事すんな、ボケが!」

「すまん、すまん、そんな怒るなや」

 とりあえず怒りを抑えた正輝だったが、視界の端っこで永嶋が「ぷっ」と小さく笑ったのが妙に殺したかった。


 その後、しばらく行進が続いた時だった。

 懲りもせず正輝の首筋に何かがまとわり付いてきた。

 さっきのさっきだけに、さすがに頭にきて、振り返り叫ぶ。

「一、ええ加減にせえや、しつこいっつうの!」


 正輝の視界に映る一文字は真顔で怯んでいた。

 いや、おかしい。

 佐那や永嶋までもが怯んでいるようだ?


「正輝君、へび・・・」

「え!」

 佐那の指摘を受けた正輝は横目で自分の首筋を見やると、絡みつく蛇がそこにはいた。

 血の気が引くとはこのことである。

 正輝は太い両手でせわしなく宙を掻き、おたおたしながら、叫んだ。


「へ、へび!誰かへび取ってくれ!」


 その場に笑いはなかった、全員、へびがおっかなく、真顔でひいていたのである。


「取ってくれ!取ってくれ!」


 とりたいが触れず混乱する正輝に影はすっと近づき、巻きつくへびの首元を掴んで素早く引き離し、遠くへぶん投げた。

 佐那だった。

 その顔は正輝以上に青ざめていた。


「正輝君、大丈夫?」

「お、おう、なんとかな、ありがとな、ていうかお前も大丈夫か?」

「う、うん、なんとかね、」

 と言う佐那は引き攣りながら微笑んでいた。


 アクシデントもあったが、なんとか一行は未開の地、滝つぼまでやって来たのである。

 危険を乗り越えてきた錯覚があるだけに、達成の喜びは大きく、迎え入れてくれた自然に胸が膨らむ。


 さてと、期待を抱き前人未到の滝つぼを見やるとそこには白装束に身を包んだ男が木刀を正眼に構え滝と向かい合っていた。


 何者という疑問が二割、うんざりした気持ち八割で一文字達は男の方に近づくと正体はすぐに分かった、師範・哲彦だ。

 哲彦は目を閉じ剣先を滝に向け、微動だに動かない。一文字は当然の疑問を口にした。


「佐那、先生は何してるん?」

「あ、あれは、精神を集中させて、高度かつ強大な気力をもって滝の流れを制することを試みているらしいねんけど、」

「おいおい、そりゃ無理やろ・・・」

「多分、私もそう思う、お父さんが言うには、あの修行をもって研ぎ澄ました気力を持ってすれば、戦わずして相手の動きを制することが出来るらしいねん。

 二階堂平法の心の一方を再現させたいとか言ってたわ」


「ふ~ん」

 佐那の説明を聞いていた三人ともが同じ反応であった。

 そしてみんな思った、冒険心、台無しじゃ・・・


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