体操服
携帯で夏に連絡を入れる。
〈体操服、間違ってる!〉
〈俺も今見た!保健室で交換しよう〉
すぐに既読がついた。
返信を確認して勢いよく教室を飛び出した。
目指している保健室は1階。
女子は教室で更衣をするが、男子は1階にある更衣室で着替える。
私のいた2年1組の教室は2階にあり、夏を待たせてしまうので走って保健室を目指す。
コンコン
一応保健室の扉をノックして中に入った。
「木村...くん、います...か?」
少し走っただけで息が苦しい。
言葉も途絶えながら先生に尋ねた。
「い、いるけど...花白さん大丈夫?」
「大丈夫です」
先生が指したベッドのカーテンを開ける。
すると、ベッドの上に正座している夏がいた。
「ごめんなさい。俺が朝焦って逆の方渡しました」
「いいよ。気が付いてよかった...」
体操服を交換して、着替えようとブレザーのボタンに手をかける。
しかし、夏の手で阻止された。
「体育さ、サボらない?」
あの夏が体育をサボる提案をしてくるなんて...珍しい。
「私はいいけど夏はいいの?体育好きじゃん」
「いいの。屋上行こう」
「屋上って鍵かかってるじゃん」
まあまあ大丈夫だって、と言いながら手を引かれて屋上まで連れて行かれる。
結局、屋上には入れた。
夏の部活の先輩が合鍵を作っていたらしい。
冬が近づいて来ているこの時期の屋上は冷たい風が頬を撫でた。
「眼鏡と髪取ってよ」
私と夏以外、屋上に誰もいないので眼鏡を外し髪を解く。
「んー、解放!」
グラウンドで体育をしているクラスメイト達を眺める。
手すりに寄りかかっていると何かが肩に掛けられた。
「やっぱ寒いな...もうちょいこっち来て」
夏のベンチコートに2人で入る。
ベンチコートのおかげか、夏が隣にいるからか、寒いはずなのに不思議と暖かかった。
「昨日、美怜が店継いでから学生のお客さんが初めてきたじゃん?」
「うん」
「これからもっと増えると思う。店を続けるためにさ、」
「私も同じこと考えてた。大丈夫、次からはちゃんとお金もらうよ」
おばあちゃん達のためにも、常連さんのためにも継いですぐに店を潰す訳にはいかない。
「私の我儘に付き合わせて、ごめん」
「何言ってんだ。俺も好きでやってんだから」
お礼を言う前に授業終了のチャイムが鳴った。
「みんなが来るので戻ろうか、花白さん」
「そうだね。木村くん」




