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ポンコツ女王の1ページ漫画集  作者: 未知(いまだ・とも)


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7/10

ボーナスの使いみち

夏の陽射しが、フィナンツェ城の白い尖塔を眩しく照らしていた。


今日は、年に一度のボーナス支給日。

日頃から王国のために働いてくれている皆へ、女王から感謝を伝える大切な日だ。


「みんなー! ボーナスを支給するわよー!」


「わーい!」


謁見の間に、歓声が響き渡った。

 

ブルは拳を突き上げ、ベアも珍しく満面の笑みを浮かべている。

ニーサとイデコは手を取り合い、キャッキャッとはしゃいでいた。


女王はみんなの笑顔を見渡しながら、満足げにうなずいた。


「……ところで、ニーサはボーナスを何に使うの?」


「夏休みは、旅に行ってきます!」


ニーサは、サッと旅行会社のパンフレットを取り出した。

仕事が早い。


というより、ボーナスが支給される前から行く気満々だったらしい。


「もちろん、残った分は投資に回します。

 でも、今しかできないことも楽しみたいので!」


「なるほど。積み立てもするけれど、今も楽しむのね!」


将来のために備えるのは大切。

でも、人生は将来のためだけにあるのではない。


青い海を見たり、美味しいものを食べたり、知らない街を歩いたり……。

ニーサはお金だけではなく、思い出にも投資するようだ。


「では、イデコは?」


「老後のために積み立てます」


イデコは迷いなく言い切った。


「全部?」


「はい。全部です」


「若いんだから、少しくらい今のために使ったら?」


「老後の私が安心して暮らせることが、今の私の楽しみですので」


なんという鉄壁の守り。

老後に向けて堅牢な資産の砦を築き上げようという意気込みだ。


同じボーナスでも、ニーサとイデコの使い方は正反対。


けれど、どちらも自分の幸せを考えて決めたものだ。

きっと、正解は一つではないのだろう。


——そのとき。


「よし! 全部株に突っ込むぜ!」


ブルの豪快な声が、謁見の間に響き渡った。


「ちょうど狙ってた銘柄が爆上がり中だからな!」


それを聞いて、ベアが眉間に皺を寄せる。


「おい待て、暴落が来たらどうするんだ?

 今は現金で待機だ!」


「そんなこと言ってたら、いつまでたっても買えねーだろ!」


「お前こそ、天井で掴んで泣きを見るなよ!」


「なんだと!?」


「やるか!?」


二人は今にもぶつかりそうな距離で睨み合う。


二人とも、見ている株価のチャートは同じはずなのに——、


ブルにはそれが上昇の始まりに見えて、ベアには暴落の前触れに見えるらしい。


相場とは、なんとも不思議なものだ。


「まあまあ。二人とも落ち着きなさい。投資方針は人それぞれよ」


「陛下に言われたくありませんな」


隣に立っていた軍師が、静かに口を挟んだ。


「な、なんでよ?」


「ところで女王は、ボーナスを何に使うおつもりですか?」


その質問を待っていました、とばかりに、女王は得意げに言い放った。


「私は、新しいネックレスと指輪を買うわ!」


王都の宝飾店で見つけた、金細工のネックレス。

中央にはピジョンブラッドのルビーが輝き、揃いの指輪まで用意されている。


女王がいつも身につけている、真紅の宝玉を頂いた王冠にも、きっとよく似合うことだろう。


「やはり……また全部使ってしまうおつもりですか!?」


軍師の声が裏返った。


「違うわ!」


女王は胸を張り、ピッと人差し指を立てた。


「これは、ゴールドへの投資だから!」


金は、昔から価値を失いにくい資産。

しかも身につければ、とても可愛い。


女王にとっては、資産価値と美しさを兼ね備えた、まさに究極の投資先だった。


「宝飾品には、加工費や職人の技術料も含まれています。

 金そのものへの投資とは効率が変わってまいりますぞ」


「でも、美術品としての付加価値が付くかもしれないじゃない」


「それはそうですが……」


「私が身につけることで『女王の首飾り』というプレミアがつくわ!」


「ご自分で仰いますか」


軍師はやれやれという顔でため息をついた。


「それに、見ているだけで毎日心の豊かさという配当が得られるのよ♪」


「その配当を受け取れるのは、陛下お一人でございますが」


「じゃあ、私への投資ね!」


「言い換えても、浪費は浪費です」


「浪費じゃないってば〜!」


ニーサが吹き出し、イデコも口元を押さえる。


言い争っていたブルとベアまで、こちらを見て笑っていた。


「……では軍師。予算内に収まるように宝石商と交渉をお願いね!」


「結局、お買いになるのですか!?」


「もちろんよ!」


今日もフィナンツェ城には、軍師のため息とみんなの明るい笑い声が響いていたのであった——。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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