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通常訓練。合同実技から二日経った。
フィアの番が来た。俺は列の後ろにいる。触っていない。
「フレア!」
火球が飛んだ。的に当たった。壁に穴は開いていない。だが中心ではなかった。右にずれている。拳一つ分。二日前の合同実技ではど真ん中だった。昨日もど真ん中だった。今日、初めてずれた。
フィアの肩が一瞬上がった。自分でも気づいている。金色の目が的の焦げ跡を見ていた。拳を握って、開いて、列に戻った。こちらを見なかった。
目を閉じた。ターミナルでフィアの記録を確認する。三日前に深く書き込んだ修正がまだ残っている。だが輪郭がにじんでいた。方向指定は読めるが、着弾点指定がぼやけ始めている。深く書いたのに、三日で消えかけている。
深い修正でも、永続はしない。
◇
放課後。F組訓練場にフィアがいた。
壁に寄りかかっている。腕を組んでいる。袖は下がったままで、手首が見えない。
三日前と違う。三日前は何も言わずに手首を出していた。その前の日も。その前も。今日は腕を組んでいる。最初に訓練場に来た時と同じ姿勢だ。あの時は「別にどうでもいいから」と言っていた。
「修正が薄くなってる。書き直すか」
「別にいい」
間が空いた。
「当たってたし」
「中心からずれてた」
フィアが黙った。壁に背中をつけたまま、的を見ている。あの的にはまだ朝の焦げ跡が残っている。中心から拳一つ分ずれた焦げ跡。
「......わかってる」
声が小さかった。だが腕は組んだままだ。手首は出てこない。
「書き直さなくていいのか」
「......明日まだずれてたら考える」
それだけ言って、フィアが壁から背中を起こした。腕を組んだまま、訓練場を出ていく。出口のところで一瞬足が止まった。振り返るかと思った。振り返らなかった。
一人残された訓練場で、的を見ていた。朝の焦げ跡が残っている。中心から拳一つ分。三日前に深く書いた修正が消えかけている。明日にはもっとずれる。明後日には的を外す。その次には——壁に穴が開く。三年間、そうだった女に戻る。
フィアが手を出せば書き直せる。だがフィアは出さなかった。
◇
本棟の裏手に回った。二階の窓からA組の訓練場が見える。
エルナがいた。銀髪が訓練場の照明に光っている。的の前に立って、片手を伸ばしている。
「アイスランス」
声は窓越しに聞こえた。氷の槍が的を貫く。音がしない。霜が広がる。二日前の合同実技と同じだ。
目を閉じた。ターミナルに断片が走る。距離がある。窓越しだ。ノイズだらけで何も読めない。合同実技の時と同じだ。断片の流れ方が一定に見えるが、ノイズが多すぎて確信が持てない。
目を開けた。エルナがもう一度撃った。同じ場所に同じ穴が開いた。霜の形まで同じに見える。三度目も同じだ。的の中心に三つの穴が重なって、一つの穴になっている。
目視でわかる。この女は毎回同じ場所に同じ結果を出す。フィアなら三発とも違う場所に散る。だが断片の中身は、触らないとわからない。
窓から離れた。指が太腿を叩いている。あの中身を見るには触らないといけない。A組首席の手首を掴む方法がない。
◇
部屋に戻ってfireを打った。四発目で花びらが混じった。五発目で水滴。頻度は変わらない。
ノートを開いた。
フィアの深い修正は三日で消え始めた。明日には着弾点指定が読めなくなる。明後日には方向指定も消える。そうなったら——通常訓練で壁に穴を開ける女に戻る。
フィアは書き直してくれと言わなかった。腕を組んで、手首を隠して、「別にいい」と言った。合同実技で自分の力で当てた。あの感覚が大事なのかもしれない。だが修正は消える。感覚ではどうにもならない。
エルナは毎回同じ結果を出す。フィアの火は毎回違う場所に散る。俺のfireには花びらが混じる。
ノートに書いた。「エルナの結果は毎回同じ。フィアと俺は毎回違う。中身を見ないとわからない」
その下にもう一行。「フィアの修正 → 残り一日か二日。書き直すには触らないといけない。フィアは出さない」
ペンが止まった。二つの問いが頭の中にある。フィアの修正が消える前に、もう一度触るべきか。エルナの中身を見る方法はあるか。
fireを打った。花びらが混じった。俺のfireは毎回違う。フィアの火も毎回違う。エルナだけが毎回同じ結果を出す。
三種類の魔法が頭の中で並んでいる。だがエルナの中身は触らないとわからない。答えが出ないまま、問いだけが増えていく。




