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合同

 通常訓練。フィアの番が来た。


 俺は列の後ろにいる。五メートル離れている。手首は掴んでいない。目も閉じていない。昨日の深い修正が残っていれば、接続なしでも当たる。残っていなければ、壁に穴が開く。


 フィアが的の前に立った。袖を直している。こちらを見ない。


「フレア!」


 掌サイズの高温球が一直線に飛んで、的の中心を焼き抜いた。


 煙が上がる。焦げた匂いが広がった。壁に穴は開いていない。的の真ん中に、丸い焦げ跡が一つ。


 残っていた。


 フィアの目が見開かれている。自分の手のひらを見て、的を見て、もう一度手のひらを見た。俺の方は見なかった。


 グレイが記録盤に何か書いて、消して、もう一度書いた。





 同日の午後。大訓練場に移動した。


 F組訓練場の三倍はある。的も新しい。壁に穴は一つもない。A組が先に並んでいた。制服に皺がない。靴が光っている。


 F組が入ってきた時、A組の何人かが顔を見合わせた。声は聞こえなかったが、口の動きで「あいつら」と読めた。ガドが舌打ちした。ミアが顔を伏せている。フィアは壁に寄りかかって腕を組んでいた。こちらを見ていない。


 A組の射撃が始まった。


 火が飛び、氷が刺さり、風が的を叩く。中心付近に集中する。ブレが少ない。安定した魔法だ。的を外す者がいない。当たり前のように当たっている。


 銀髪の女が前に出た。背が高い。目が冷たい。制服の襟を正して、片手を前に伸ばした。構えに無駄がない。


「アイスランス」


 氷の槍が的を貫いた。音がしなかった。煙も上がらない。的の中心に穴が開いて、周囲に霜が広がっていく。穴の断面が凍っている。一切のブレなし。狙った場所に、狙った形で、刺さった。


 拍手が起きた。A組の生徒が当然のように頷いている。


 目を閉じた。ターミナルに断片が走る。距離があるからノイズだらけで中身は読めない。だが何かが違った。フィアの断片はいつもばらついていた。ガドの断片も毎回散らばっていた。この銀髪の断片は——同じに見える。ノイズ越しだから確信は持てない。だが流れ方が一定だった。


 F組の番が来た。


 ガドが「ブレイズ!」と叫んで前髪を焦がした。A組から笑い声がした。ミアのヒールは光っただけで的に届かない。


 フィアの番。


 A組の端から声が聞こえた。「あの暴走女だ」「F組の壁壊し」。


 フィアが片手を前に伸ばした。袖をめくっていない。手首が見えない。俺は五メートル離れた列の後ろにいる。触っていない。


「フレア!」


 掌サイズの高温球が的の中心を焼き抜いた。


 大訓練場が静まった。A組の笑い声が消えている。焦げ跡から煙が一筋、まっすぐ上に昇っている。壁に穴は開いていない。的の真ん中に、朝と同じ丸い焦げ跡ができている。


 A組の誰も声を出さない。さっき「暴走女」と言った声の主が口を閉じている。


 フィアが肩をすくめて列に戻った。いつもの仕草だ。だが歩き方が違う。少しだけ背が伸びている。





 実技が終わった後。的の並びを見て回っている生徒がいた。


 銀髪の女だ。自分の氷の的ではなく、フィアの焦げ跡を見ている。しゃがんで、焦げの深さを指で確認している。霜の付いた自分の的と、焦げた的を交互に見比べていた。


 俺の横を通り過ぎる時、視線がこちらに来た。一瞬だけ。冷たい目だ。何かを測っているような。感情が読めない。


「F組の火、おかしくない?」


 独り言のように言った。誰に向けたのかわからない。歩いていった。銀髪が揺れて、大訓練場の出口に消えた。





 帰り道。フィアが少し離れて歩いている。昨日より近い。


「当たった」


 フィアが小さく言った。前を向いたまま。


「ああ」


「あんたが触らなくても、当たった」


 三年間、的に当たらなかった女の声だ。震えていない。静かだ。拳を握っていない。並木の影が二人の上に落ちている。風が吹いて、フィアの前髪が揺れた。


「......ねえ」


「何だ」


「あの銀髪の女。A組の。あいつの氷、見た?」


「見た」


「あたしより上?」


 正直に答えた。


「わからない。あいつの方が安定してた。だがお前の方が威力はある」


 フィアが黙った。数歩分の足音だけが聞こえた。


「......そう」


 それだけ言って、寮の方に歩いていった。


 あの銀髪の声が頭に残っている。「F組の火、おかしくない?」。あいつの断片は何かが違った。ノイズ越しだからはっきりとは言えない。だがフィアの断片とは流れ方が違う気がする。確かめるには、触るしかない。


 あの中身を見たい。


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