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異世界転生したらハズレスキル【ターミナル】だったが、俺だけ使い方を知っていたので最強になった  作者: どみさん


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向こうから

 視線の角度は、そのまま。


 擦れの色の位置を、もう一度、空間的に、確かめる。


 擦れの色は、棚の側面の縦の線の中で、隙間の縁に寄った位置に、薄く、乗っている。


 視線を、隙間の縁から、棚の側面の正面の方へ、ずらしていく。


 隙間の縁から、指の二本分の幅の中だけに、別の色の薄い膜が、残っている。


 指の二本分の幅を、もう一段、超えた位置から先は、棚の側面の木目の色が、いつもの色のまま、続いている。別の色は、見えない。


 視線を、もう一段、棚の側面の正面の方へ、伸ばす。棚板の縁の色も、いつもの色のまま。書架の壁の縦の継ぎ目の色も、揃ったまま。


 書架の他の棚の側面の色も、視線の角度の中で、確かめる。棚の側面の縦の線の色は、どの棚も、いつもの色の家族の中。別の色の薄い膜の縁は、どの棚の縦の線の中にも、見当たらない。


 擦れの色は、隙間の縁の内側だけに、止まっていた。隙間の縁の外側、棚の側面の正面の側へは、薄く、延びていない。


 視線を、床に近い位置に、下ろす。


 撫で痕の位置も、もう一度、空間的に、確かめる。


 撫で痕は、隙間の右の縁の、内側に寄った位置にだけ、薄く、残っている。隙間の縁から、書架の中の方へ、視線をずらしていく。


 撫で痕の幅を超えた位置から先は、踏み台の前の床の薄い埃が、いつもの色のまま、続いている。踏み台の前の二つの跡の周りにも、別の色は、見えない。


 視線を、もう一段、書架の中の方へ、動かす。棚の脇の通路の床も、踏み台の前から書架の入り口までの床も、書架の列の間の床も、いつもの色のまま、続いている。


 書架の入り口の側の床、書架の列の間の暗い線の中、棚の脇の通路の薄い明かりの中。視線で、もう一度、巡る。床の埃の色は、どの場所でも、いつもの色の家族の中。


 踏み台の上面の埃の色も、確かめる。踏み台の脚の根元の床の色も、確かめる。どちらも、いつもの色のまま。


 書架の中のどの床にも、別の色は、付いていない。


 棚の側面の木目の色の中、書架の入り口の側の床の埃の中、踏み台の前の床の埃の中、棚の脇の通路の床の埃の中を、視線で、一度、巡る。


 どの場所の色も、書架の中の色の家族の、いつもの位置のまま。


 擦れの色も、撫で痕の中の薄い色も、書架の中の側には、出てきていない。


 擦れは、書架の側には、無かった。


 色が、書架の中の何かから付いたものなら、書架の中のどこかにも、同じ色の痕が、残るはず。


 棚の側面の他の場所、棚板の縁、書架の壁、踏み台の上面、書架の中の床のどこかに、薄い膜の縁が、残っているはず。


 だが、そのどこにも、同じ色は、見えない。


 書架の中の側から色が付いたのではない。


 色は、肩の片側を縁にこすりつけた人が、隙間を抜けるその瞬間、既に肩に乗せていた色。


 肩の片側が、棚の側面の縦の線にこすりつけられたとき、肩の色だけが、縦の線の縁に、薄く、移っていた。肩の側に色が無ければ、棚の側面に色が移ることもない。


 その人が、隙間の向こうから、出てきたとき、肩には、既に、色が、付いていた。撫で痕の中の薄い色も、同じ。靴底の縁か、靴の縁の側に、既に、色が、付けられていた。


 肩の色と、靴底の縁の色は、同じ場所で、その人の体に、薄く、乗せられた色。同じ場所が、隙間の向こうの側。


 色は、隙間の向こうの場所で、その人の肩と足元に、薄く、付けられたまま、ここまで運ばれていた。


 書架の中の側からは、来ていない。書架の中の他のどの場所からも、来ていない。色の出所は、書架の中に、ひとつも、残されていない。


 擦れの色は、隙間の縁の内側だけ。撫で痕の中の色も、隙間の縁の内側だけ。色は、書架の中に、置き場所を、持っていない。書架の中で生まれた色なら、置き場所のひとつくらいは、必ずある。


 書架の中の側に置き場所のない色が、隙間の縁の内側にだけ、薄く、残されている。色を運んできた体は、書架の中の側からは、来ていない。隙間の中の側から、こちらへ抜けてきた。


 紙の上の文字の色も、書架の中の家族の外、学園の通路の家族の外、寮の廊下の家族の外にある。同じ家族の中で、擦れの色と、近い位置に並んでいた。同じ家族の中にある二つの色が、同じ場所で、その人の体と、机の中央の白い紙の上に、薄く、置かれていた。


 エルナは、まだ振り返らない。エルナの上着の色は、隙間の向こうの色の家族とも、書架の中の色の家族とも、別の家族の中で、揃ったまま。エルナの上着の縁にも、袖の縁にも、隙間の向こうの色の薄い膜は、付いていない。エルナの肩のラインの脇の棚の側面の縦の線にも、同じ色は、移っていない。


 書架の中には、その色の場所が、無い。


 色は、隙間の向こうの場所のものだった。


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