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異世界転生したらハズレスキル【ターミナル】だったが、俺だけ使い方を知っていたので最強になった  作者: どみさん


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隙間

 乱れの先の、暗い場所の境界を、もう一度、見る。


 棚の脇の通路の薄い明かりが届く範囲、その縁の輪郭が、薄い影の中で、まだ判る。


 暗い場所の中には、いくつもの縦の線が、薄く、立っている。


 書架の奥の壁の縦の線。棚の側面の縦の線。そして、その二つの縦の線の間に、もう一本、別の縦の線が、薄く、立っているように見えた。


 最初に視線を投げたとき、その縦の線は、書架の奥の壁の続きの一部に、見えた。壁の縦の影が、棚の脇の通路の奥で、ほんの少し深くなっただけのように見えた。


 だが、薄い明かりの届く範囲を、もう一度、追っていくと、その縦の線の角度は、壁の縦の線とは、わずかに違う。


 書架の奥の壁の縦の線は、棚の脇の通路の床に対して、ほぼ直角に立っている。棚板の縁の線と平行に並んだ壁の縦の継ぎ目が、薄い明かりの中で、その直角を示している。


 棚の側面の縦の線も、ほぼ同じ角度。棚板の縁の線とは直角、床に対しても直角。棚の側面の木目の縦の流れが、その直角を、もう一段、はっきり、見せている。


 暗い場所の中のもう一本の縦の線は、その二つの縦の線の、間にある。


 角度は、わずかに、ずれている。床に対する角度が、棚の側面の縦の線よりも、もう一段、深い側に寄っている、ように見える。


 幅も、違う。書架の奥の壁の縦の線は、棚板の縁の幅と同じくらい。棚の側面の縦の線も、それに近い。だが、暗い場所の中のもう一本の縦の線は、それらよりも、もう一段、細い。


 線の中の暗さも、別の濃さ。壁の縦の影の中の暗さは、棚の脇の通路の暗さに、滑らかに、続いている。棚の側面の縦の影の中の暗さも、同じくらい。だが、もう一本の縦の線の中の暗さは、その滑らかさから、外れている。線の縁の内側で、暗さが、もう一段、深く、落ち込んでいた。


 ふたつの縦の線の、間。


 壁では、なかった。


 棚の脇の通路の奥に、もう一列、棚の側面が立っている。最初の棚の側面と、奥の棚の側面の、ちょうど境目の位置に、薄い隙間。


 その隙間の縦の線が、薄い明かりの中で、書架の奥の壁の縦の線と重なって見えていた、ように思えた。隙間の縦の影が、壁の続きの輪郭に、紛れ込んでいた。


 最初の棚の側面の端と、奥の棚の側面の端は、棚板の縁の線の高さで、ほぼ揃っている。だが、棚の高さの中ほどから下、棚板の段差の数を数えていくと、二つの棚の段差は、わずかに違う段数で並んでいる。奥の棚は、最初の棚と比べて、棚板の数が、もう一段、多い。


 隙間の幅。手のひらを縦にして、半分の指の幅くらい。本一冊の厚みより、もう一段、狭い。人ひとりが正面のまま通れる広さではない。体を横に向けても、肩の厚みが残れば、つかえる。


 隙間の中の暗さは、棚の脇の通路の暗さよりも、もう一段、深い。視線の角度の中で、隙間の奥行きは、見えない。光の届く端は、隙間の縁から、半歩分も入っていない。その先は、棚の側面の影と、書架の奥の影が、重なって、ひとつの暗さに、なっている。


 隙間の縁、棚の側面の端に、薄い埃が残っている。埃の縁の角度は、棚板の縁の線と、ほぼ平行。だが、その縁の中の一部だけが、棚の脇の通路の床の乱れと、同じ向きに、薄く、撫でられている。


 撫でられた縁の幅は、隙間の幅の半分くらい。隙間の右の縁の側に寄っている。隙間の左の縁の埃は、棚板の縁の線と平行のまま、崩れていない。


 誰かが、隙間を、右の縁の方に体を寄せて、通った。撫でられた埃の縁の幅は、人ひとりが横向きで、肩の片側を縁にこすりつけながら抜けた幅と、揃っている。


 撫でられた縁の中の埃の流れの向きは、隙間の奥から、棚の脇の通路の方向へ、薄く、揃っている。逆の向きの流れは、その撫でられた縁の中には、ない。


 棚の脇の通路の床の乱れの流れの向きを、もう一度、確かめる。流れは、隙間の方向から、踏み台の前へ向かって、薄く、揃っている。乱れの始まり、踏み台の脇の床の根元の位置は、隙間の右の縁の側の、その続きの線の上に、ある。


 隙間の縁の埃の押され方と、棚の脇の通路の床の乱れの流れと、踏み台の前の二つの跡。それらは、別の場所で別に残ったものではなかった。同じ向きの一本の線として、書架の中に、続いている。


 踏み台の前の跡の踵の側、書架の間の通路の方向には、続きの線はない。乱れの流れの逆方向、踏み台の前の方を超えた先には、足の運びの跡が、出ていない。線は、隙間から、踏み台の前まで、出てきて、そこで、止まっていた。


 エルナは、まだ振り返らない。エルナの足元の床にも、踏み台の脇の通路にも、隙間の手前にも、新しい乱れは、足されていない。エルナの立つ位置から、隙間までの間の床の埃も、誰の足の運びの跡もなく、薄く、続いている。


 その人は、棚と棚の隙間から、出てきた。


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