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異世界転生したらハズレスキル【ターミナル】だったが、俺だけ使い方を知っていたので最強になった  作者: どみさん


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 跡の踵の方向へ、視線が、ゆっくり、動く。


 踏み台の前から、書架の間の通路、書架の入り口の方向まで、視線の道筋が、薄く、続く。


 踏み台の前から書架の入り口までの床、その薄い埃の上を、視線が、追う。


 埃の厚さは、踏み台の前と、書架の入り口の側で、同じくらい薄い。


 埃の上に、足の運びの跡は、ない。踏み台の前に残った二つの跡の外側で、床の色は、書架の入り口まで、同じ薄さで続いている。


 俺の靴底の跡は、踏み台の前の、跡の隣に、薄く、残っている。爪先は跡の方向、踵は書架の間の通路の方向。


 それ以外の靴底の跡は、ない。書架の入り口の側の床は、誰の足の運びの跡もなく、薄く、続いている。


 書架の入り口の側の明かりは、踏み台の前の明かりより、もう一段、明るい。明るい方へ行くほど、床の埃の縁は、見やすくなる。だが、その見やすい縁のどこにも、爪先の切れ込みも、踵の丸みも、残っていない。


 床板の継ぎ目は、入り口の方へ、まっすぐ、並んでいる。継ぎ目の細い影は、どの線も、途中で崩れていない。誰かの足が乗れば乱れるはずの薄い粒も、継ぎ目の脇で、そのまま止まっている。


 踏み台の前の跡から、入り口の方向へ続くはずの道筋は、床の上に、出ていない。二つの跡の踵の先にあるのは、乱された床ではなく、何も起きていない床だけだった。


 書架の入り口の柱の手前まで、視線を送る。そこでも、床の薄い埃は、均一なまま。誰かが急いで通ったなら残るはずの、擦れた弧も、踵だけが沈んだ丸みも、見えない。明るい側は、何も隠していなかった。


 跡は、入り口の方からは、来ていない。


 入り口の側の床の埃に、爪先が書架の奥の方向を向いた跡は、ない。踵が入り口の方向を向いた跡も、ない。


 視線を、逆の方向へ、動かす。


 書架の奥の方向。棚の列が、奥へ、続いている。入り口の方で止まっていた明かりが、そこでは、もう一段、低くなっている。


 棚の脇に、薄い通路。通路の幅は、書架の間の通路よりも、もう一段、狭い。棚の脇の通路の薄い明かりは、書架の入り口の側の明かりよりも、もう一段、暗い。


 棚の脇の通路の床、その薄い埃の上に、薄い乱れ。


 乱れの始まりは、踏み台の脇の床の、棚の側面の根元の位置。踏み台の前の跡の横から、半歩ぶん、ずれたところだった。


 乱れは、踏み台の前の方向から、棚の奥の通路の方向へ、薄く、続いている。まっすぐな一本線ではない。薄い埃の流れが、何本か、同じ向きに揃っている。


 乱れの幅は、靴底の幅より、もう一段、広い。靴底の輪郭は、はっきり、見えない。


 乱れの中の埃の流れは、棚の奥の通路の方向へ、薄く、揃っている。流れの向きは、踏み台の前の方向へは、向いていない。


 乱れの幅は、棚の奥の通路の方向で、もう一段、狭く、変わっていく。踏み台の脇では、靴底ひとつ分より広かった幅が、奥へ行くほど、衣擦れひと筋分の細さへ寄っていく。


 棚の脇の通路の薄い乱れは、書架の奥の方向で、奥へ、続いている。


 乱れの先は、棚の脇の通路の薄い明かりの中で、もう一段、暗い場所へ、消えている。暗い場所の手前までは、埃の流れの向きが、まだ読める。だが、その先では、棚の影と床の影が重なって、線の続きが見えなくなる。


 通路の片側は、棚の側面。木の色は、正面の棚板より、もう一段、暗い。もう片側の壁は、書架の列の終わりに沿って、細く、続いている。人が一人、体を横にしなくても通れるくらいの幅はある。だが、踏み台の前よりも、身じろぎの余白は少ない。


 壁際の低いところには、薄い埃の溜まりが、切れずに続いている。その縁だけが、乱れの流れに沿って、ほんの少し、内側へ押されていた。足そのものの輪郭は見えなくても、そこを空気ごと通ったものの向きだけは、床の上に残っている。


 その狭い通路へ入るように、乱れは、奥へ向いている。入り口の明るい方へ戻る流れではない。踏み台の前で止まり、そこから向きを変えた痕でもない。最初から、暗い方から来て、踏み台の前まで出た流れに見えた。


 踏み台の前に残った二つの跡と、棚の脇の薄い乱れは、切れていない。別の場所で始まった二つの痕ではなく、同じ足の運びの途中と、その前後に擦れた埃の流れが、別の形で残ったように見える。


 踏み台の前だけが孤立しているのではない。床の上に残った薄い差は、奥の暗がりまで、同じ向きで続いている。そこだけが、この書架の中で、誰かが通った道になっていた。


 エルナは、まだ振り返らない。


 エルナの足元の床は、視線の端で、動かないまま。エルナの立つ位置から、踏み台の脇の通路へ続く床にも、新しい乱れは、足されていない。いま、この場で動いた者はいない。


 その人は、書架の、もっと奥の方から、来た。


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