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異世界転生したらハズレスキル【ターミナル】だったが、俺だけ使い方を知っていたので最強になった  作者: どみさん


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結果

 フィアが、詠唱を、まだ始めない。


 俺の指先が、フィアのベスト型の制服の上、肘の少し上から、離れない。布越しの体温が、指先に薄く乗ったまま。


 空気の中の薄い揺れが、まだ消えない。最初の位置から、わずかに右へ寄ったまま。輪郭は、ない。色も、ない。だが、空気の密度だけが、その場所でわずかに違うまま。


 フィアの呼吸が、もう一度、深くなった気がした。胸の輪郭が、上着の上で、わずかに上下する。


 俺は、指先を、フィアの肘の少し上から、ゆっくり、離した。布越しの体温が、指先から、薄く、消える。


 フィアが、振り返らない。視線は、机の方向のまま、俺の方を観てはいない。


 会議室の薄い光が、机の上の記録盤の縁で、もう一度、薄く反射する。革の表紙の縁の色は、朝の光の角度で、深い茶色のまま。


 「もう一人」の視線が、机の上の記録盤の方へ、もう一度、動いた。


 F組担任の視線も、机の方向。袖は、上着の手首まで下りたまま。


 二人の視線が、記録盤の中央で、止まる。


 「もう一人」が、机の方へ、半歩、動いた。机の脇で、足が止まる。


 記録盤の脇に、ペンが置かれている。革の表紙の縁が、朝の光の中で、薄く反射する。


 「もう一人」の手が、ペンの方へ、動いた。指先が、ペンの軸の中ほどを、薄く挟む。ペンを、机の上から、取った。


 ペンの軸の色は、革の表紙よりも、もう一段、深い黒。


 ペンの先が、記録盤の紙の上、空白の行の方へ、ゆっくり、下りる。


 俺は、応答しない。視線は、机の上の記録盤の方向のまま。


 フィアも、振り返らない。視線は、机の方向のまま。


 空気の中の薄い揺れが、まだ消えないように見えた。


 ペンの先が、記録盤の紙の上に、触れた。紙の繊維の上で、ペン先の角度が、わずかに沈む。


 紙の上で、インクの音が、低く、短く、響く。


 文字が、書かれる。


 「規定外」


 三文字。インクの色は、紙の地の色よりも、もう一段、深い。


 ペンの先が、紙の上で、一度、止まる。次の行の方へ、動いた。


 別の文字が、書かれる。


 「記録対象」


 四文字。最初の三文字よりも、インクの線が、わずかに、細い。


 ペンの先が、もう一度、紙の上で、止まる。インクの色は、革の表紙の色よりも、もう一段、深い黒。


 「もう一人」が、ペンを、記録盤の脇に、戻した。ペンが、革の上で、低い音を立てる。


 記録盤は、まだ開いたまま。書かれた文字の上で、朝の光の角度が、また別の影を作る。


 F組担任が、机の方へ、半歩、動いた。


 「もう一人」と F組担任が、視線を、もう一度、交わした。袖の動きが、二人で揃ったように見えた。


 F組担任の声が、低く、短く、会議室の空気の中で、響く。


 「F組のフィア、規定外。F組のレン、最低評価のまま」


 声は、いつもの朝より、もう一段、低い気がした。文字を読み上げる動作の延長で、息継ぎは、最後の一字の後で、一度、止まる。


 俺は、応答しない。視線は、机の上の記録盤の方向のまま。


 フィアが、振り返らない。袖は、手首まで下りたまま。視線は、机の方向のまま、俺の方を観てはいない。


 「もう一人」の視線が、机の上の記録盤の方から、こちらの方へ、もう一度、動いた。すぐに、記録盤の方へ戻る。


 会議室の空気の中で、薄い揺れが、まだ消えない。形は、判らない。


 書いた一行とノートは、鞄の中で、肩の上の高さで、まだ動かない。


 F組担任が、頷いた。袖が、もう一度、手首の高さで、止まる。


 「下がってよい」


 俺は、応答しない。視線は、机の上の記録盤の方向のまま。


 フィアが、振り返らない。


 俺の足が、机の手前から、半歩、後ろへ動いた。フィアの足も、半歩、後ろへ動いた。靴底が、床の上で、低く、短く、音を立てる。


 距離は、握り拳二つ分のまま。


 机の上の記録盤の方を、もう一度、視線で確認する。


 「規定外」の文字。「記録対象」の文字。インクの色は、まだ、紙の上で、深い黒のまま。文字の輪郭が、朝の光の中で、わずかに、揺れたように見えた。


 「もう一人」の視線が、記録盤の上で、止まったまま。F組担任の視線も、机の方向。


 会議室の薄い光が、机の上の記録盤の縁で、薄く反射する。


 書字なし接続の試みの「揺れ」は、もう、消えていた。だが、紙の上の文字は、まだ動かない。


 記録盤の上で、「規定外」の文字が、まだ書かれたままだった。


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