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異世界転生したらハズレスキル【ターミナル】だったが、俺だけ使い方を知っていたので最強になった  作者: どみさん


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帰り

 廊下と演武場の境界——演武場の方向の入り口の手前から、足が動いた。


 俺は鞄を肩にかけたまま、廊下の中ほどへ半歩、後ろへ動いた。フィアも、俺の一歩横の位置から、半歩、後ろへ動いたように見えた。


 距離は、握り拳二つ分のまま。


 廊下の入り口の手前で、エルナがまだ家のものの方を見ている。家のものの背の高い影が、エルナの隣で、動かないままだった。


 俺は廊下の中ほどから、入り口の方向へ歩き始める。フィアも、俺の一歩前の位置で、入り口の方向へ動く。エルナと家のものは、廊下の入り口の手前で、まだ動かない。


 廊下の壁の向こうから、声の縁は、もう漏れていない。エルナの言葉の余韻も、もう薄い。


 廊下の入り口を、俺もフィアも抜けた。家のものの背の高い影の脇を、半歩、離れて通った。





 学園の通路は、廊下よりも幅が広い。F組生徒とA組生徒が、別方向へ流れる。


 俺はフィアの一歩後ろの位置のまま、F組寮の方向へ動き始めた。フィアも、俺の一歩横の位置で動く。距離は、握り拳二つ分のまま。


 通路の分岐で、足音が二種類に分かれる。F組寮の方向には、別々の階段が二つある。一つはF組生徒の主な動線、もう一つは反対側の階段。


 フィアが、半歩先に、F組生徒の主な動線の階段の方へ向かった。


 俺は、もう一つの、反対側の階段の方へ動いた。


 距離が、握り拳二つ分から、廊下の幅の倍ほどに、広がる。


 階段の手前で、足が止まった。


 フィアの背中が、F組生徒の主な動線の階段の上の方へ消えていく。視線は前のまま、こちらに向かないように見えた。


 俺は、反対側の階段を、上る。階段の薄い明かりが、靴底の角度を変える。


 通路の分岐——あの場所で、何が動いて、何が動かなかったか、まだ判らない。





 寮の階段を上る。階段の各段の薄い明かりが、肩の角度を変える。


 寮の階段の最上段で、足が止まった。


 廊下の天井が、演武場の廊下よりも、また低い。寮の廊下の幅は、生徒が一人通れる程度。


 自室の扉の前で、足が止まる。


 鍵を回す動作。鍵が回る音が、寮の廊下の薄い明かりの中で、目に立たない高さで響いた。


 扉が押された。自室の薄い明かりが、机の輪郭を見せる。


 机の上に、何かが置かれているように見えた。


 俺は扉を、半歩、内側へ動いた。扉が閉まる音が、寮の廊下の薄い明かりの中で、目に立たない高さで響く。


 鍵を、内側から回した。鍵が回る音が、自室の薄い明かりの中で、もう一度、響いた。


 机の上の何かが、薄い明かりの中で、まだ動かない。





 自室の中で、俺は鞄を肩から下ろさない。


 机の方へ、半歩、近づく。机の上の薄い明かりが、紙の輪郭を見せる。


 白い紙が一枚、机の中央に置かれていた。


 紙は、机の中央に、まっすぐ置かれている。紙の四隅が、机の角と同じ向きで揃っている。誰かが置いたのは、判る。だが、誰が、いつ、どうやって置いたのかは、判らない。


 紙の上に、何か書かれているかどうかは、机に近づかない位置からは、まだ見えない。


 俺は、鞄を肩から下ろした。


 鞄が床の上に、まっすぐ立つ。鞄の口は、最後に一度、閉じたまま。書いた一行とノートが、鞄の中で、いつもの位置のまま、動かない。


 鞄が床の上で、止まる。


 俺は、机の方を、まだ見ている。机の中央の白い紙は、まだ動かない。机に近づく動作は、まだ取らない。


 近づけば、紙の上の文字が見える。近づかなければ、紙は白いままだと観察できる。


 決まっていなかったことが、また一つ、机の中央の白い紙の上にあったように見えた。





 自室の薄い明かりが、机の中央の白い紙の上で、止まったまま動かない。


 机の中央の白い紙の上に、何が書かれているか、まだ判らない。


 鞄が床の上で、最後に一度、閉じられたまま立っている。書いた一行とノートが、鞄の中で、いつもの位置に並んだまま、動かない。


 俺は、机の方を、まだ見ている。窓の外で、薄い明かりが、夕方の空気の方向で、傾いていく。


 机の中央の白い紙の上で、薄い明かりが、また別の角度で止まった。


 決まっていなかったことのうち、一つだけ、決められる。


 俺は、机に近づかない。机の中央の白い紙の上で、薄い明かりが、また止まる。


 夕方の空気の中で、机の中央の白い紙が、まだ置かれたままだった。


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