表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

クロがリュウなら、私はニーナ

 『クロ』改め『リュウ』は、考えていた。

 このみずきさんは、本当に良い人だ。

 こんな人に拾ってもらえて、僕は本当に幸せ者なんだ。


 でも、シロはどうなったんだろう?

 キャリーに入って獣医さんに行く途中は、途轍もなく寒い。

 今僕は、朝から晩まで暑くもなく寒くもない所で、暮らしている。

 ご飯も、今まで食べたことがないような美味しいものばかり、朝と晩にもらっている。

 お昼の間にも色々なものを、おやつと称してもらっている。


 この寒い中、リンプーとシロが寒さに震えて、お腹を空かせているかもと思うと、心がキュッと締まる思いがする。


 お願いだ!

 シロもこんな、みずきさんみたいな人に、拾われていて!


 シロを探しに行くためにも、早く元気にならなくちゃ。




 リュウの体力も随分回復した。

 そろそろ点滴も終わって良いかも、という所まで来た。


 その日も、リュウは自転車の前かごの上でキャリーに入っていた。

 公園の前を通った時、リュウはシロとリンプーを発見した。

 キャリーに開いたスリットから、はっきり2匹が見えた。


「みずきさん、気付いて!」

 リュウは必死で、スリットの部分を叩いた。

 より大きな音を立てるために、キャリーの中で転げまわった。


 みずきが自転車を止めた。

「リュウ、ダメだよ。

 大人しくキャリーには入ったのに、点滴が嫌なんだね。

 きみが、元気になるためなんだから。

 今日の検査で異常が無ければ、もう点滴はいいからね。

 もう少しの辛抱だよ」


「違うんだ、みずきさん。

 あそこ、あそこにいる白ねことトラねこ。

 あの2匹を、助けてあげて欲しいんだ」

 リュウの言葉は、人間のみずきには通じない。


「仕方ないねー。

 多分今日1日だけだから、我慢してね」


 みずきは、自転車をまた走らせた。


「あ、ああー。

 シロ、リンプー、こっちに気付いてー!」




 獣医で、リュウはしっかり回復していることが分かった。

 容態の急変が無ければ、点滴はもう必要ない。

「リュウ、良かったね。

 行きも嫌がってたけど、もう痛い目をしなくていいよ」




 帰り道、リュウは目を皿のようにして外を見た。

 公園の所に来た。

 2匹とも、まだいる。


 リュウは必死で、スリットの部分を叩いた。

 また、キャリーの中で転げまわった。

「みずきさん、お願い!

 あの2匹を助けて! お願い!」


 みずきが自転車を止めた。

「リュウ、行きもここで騒いだよね。

 点滴が嫌な訳じゃなかったの?」


 リュウが叩いている側の延長線上を見る。

 白いものが見える。


 自転車を押して、公園の中に入った。

 近くで見ると、白いねこだった。

 リュウの時のように、ぐったりしている。

 首にも変な腫瘍が出来ている。


「リュウ、この子を助けたかったんだね。

 さすが、私の飼いねこ。

 優しいんだね」


「リンプー、リンプーは何処?」

 リュウは周りを探した。

 自転車の反対側にいた。

「リンプー、おーい僕だよー」


「ああ、クロかい」

「うん、今は『リュウ』になったけどね」

「そうかい、シロを頼むよ、リュウ」

「えっ、リンプーは?」

「あたいかい?

 あたいには、飼いねこは似合わないよ。

 好きな所で、気ままに生きていくのが、性に合っているんだ。

 短い間だったけど、世話になったね。

 幸せになりなよ」


 みずきは、片手でシロを抱っこして、もう片手で自転車を押した。

 リュウを見てもらった獣医に引き返して、急患で見てもらった。

 自転車を漕いで行くのに比べて、倍くらい時間がかかった。




 翌日、シロは首の腫瘍を取る手術になった。

 体へのダメージは、リュウの怪我の半分くらいで、すぐ直るそうだ。


「一匹目のオスねこが、ドラゴンと戦う勇者リュウだからね。

 君は、その相手パートナーでニーナだよ。

 リュウとも、私とも仲良くしてね」

 そう言いながら、みずきはニーナをモフモフした。


「あ、それから、きみたちの治療費が沢山かかちゃったから。

 私のお小遣いが、3ヵ月間半額にされちゃったからね。

 責任を取って、2匹ともしっかり私をいやしてよ」




 それから1週間ほどして、ニーナも話せるようになった。

 ニーナもみずきのベッドで一緒に寝たことで、回復した気がする。

 ニーナも、あんなに柔らかい寝具で寝たことは、無かった。

 そして、全く敵意の無いみずきの体温で温められる。


 人間の体温は、ねこよりも低いはずだが。

 『死にそうで心細かった時に、心が温もった』

 これが、リュウとニーナの命が助かった最大の要因だろう。




 お散歩が出来るようになった。

 散歩先の公園で、リュウはニーナに聞いた。

「シロは、ニーナになっちゃったけど、良かったのかな?」


「私は、クロに会うまで辛いことしかなかった。

 でも、クロに会ってからは、空を見ようとワクワクしてた。

 一緒に空を見れたら、命なんていらないと思ってた。

 でも、でもね。

 今は、リュウと一緒に本当に幸せな日々を送っている。

 私の幸せは、あなたとじゃなきゃ意味がないの。

 クロがクロなら、私はシロ。

 クロがリュウなら、私はニーナ」


「今まで、話せなかった分、随分雄弁だね」

 リンプーがいる。


「リンプー!

 リンプーも元気?

 リンプーが居なかったら、僕たちの今もなかったんだ。

 本当にありがとう」


「クロ、シロ、いや今はリュウとニーナか。

 あたいは、大丈夫だからね。

 いい人に拾われたみたいで、良かったね。

 幸せになるんだよ」

 リンプーは、振り返らずに走り去った。


 ねこ達の頭上に、青い空が広がる。

 リュウとニーナが、本当に見たかった空。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ