中央府(ポラリシア)に帰ります
いつものわちゃわちゃうるさいチームが戻ってきたかと思ったら酒に溺れて臭い奴らになりました。
いい年とった大人が最低!
「うぇ…気持ちわる」
「看護婦長さんに打たれた麻酔がまだ効い…
忍、なんか臭い」
「そんなに顔をこわばらせなくてもいいじゃん
ニコルだって、吐き戻しの薬飲んで」
「「きもちわるい」」
「ん?」
「気がついたよねティナ
忍は病院を抜け出して、イプシロンさんとハルウェルさんと徹夜して飲んだんだよ
それで二日酔いじゃなくて生酔いしてるの」
「あーっ、おばかなのかな?
整列しろこのダメ親父ども」
「「「うぇー」」」
「…」
「…瑠香姉さんが息してねぇわ
エルブスさんに頼んで、吐き戻しの薬を調達した方がいいなぁ」
「アリシアの口が悪くなった
どうしよう、親父」
「うぅ、気持ち悪い
ごめんマリウス、」
「親父もか!
なんでなんだよぉぉぉぉおぉ!!」
早朝のプロキシマ街。
精霊府での調査を終えて一路、中央府へと帰還することになった。
帰還する理由は簡単。
今回のヒドゥラ盗賊団の襲撃の背景に、エストラゴ共和国が関わっていたという事実が判明したからだ。
情報元は妖精状態だったウィルムを襲った張本人。
ジャスことジャスパーなる精霊使いが、ヒメネス本人から聞いたという。
ヒメネスが力を得てプロキシマを襲った後が、1番の問題点であり今現在の情報を求める魔神の要請で帰らなければならなくなった。
「本当だったらこのまま門を出て、緩衝地帯に突入する予定だったんだが
そうじゃなくなったんだっち」
「ぴぴぃ?」
「そんなに怖がることないぞシェリル
でも、不思議なんだよな
瑠香がこの門の外、緩衝地帯から何かあったかい風が来るって言ってるし」
「みんな行こうか…
ところでレイラさんとココさんは?」
「れ…レイラ様!
大丈夫ですか!?
酒くっさ!」
「ごめんなさいね、ココちゃん
忍さんとイプシロンさんとハルウェル君とエルブスさんと徹夜飲みして気持ち悪い」
「なんでだよぉぉぉ!!」
ここで全員思った。
あれ、年上の大人達だけどこの人たち。
酒に溺れならダメ人間になるの?
レイラさんは過去に一国の女王だったんじゃ
と。
「はい、五トン半トラックに乗った!
お尻激痛、いぼ痔いぼ痔ドライブの始マリダヨ
コノバカタレ!」
「なんか急に、瑠香がカタコトになったね」
「精神崩壊してるんじゃない?
あれ、リリー?」
「お姉ちゃん!」
ニコルの父と母に手を繋がれて、半泣きのリリーが手を振り解きニコルの元に走り出す。
姉に久しぶりに再会できたというのに、別れのために姉に対する甘えが最高潮に達した。
そんな情景に瑠香やティナは涙を流し、二日酔い共は一気に酔いが覚め、死んだ顔をしていたアリシアやマリウスの眼には光が灯る。
だがウィルムとシェリルは違う。
リリーの魂胆がなぜか透けて見えているのだ。
何故だかわからないが見え見えなのだ。
「お姉ちゃん忘れ物してるよ!
はい、これ…ティナばくはつ日記!
忘れたらダメじゃん、大事なんでしょ!?」
「これは、その!
おっきい声で言わないでよ!
…あっ!」
「おいゴルァァァ!
なにが、爆発日記だぁ!?!?」
「ちが、これは!
ねぇ、瑠香姐さん助けて!」
「何やってんの?
友達じゃないの!?」
「このサイコパス!」
今にも吐きそうなイプシロンの隣で、こいつダメだという表情を浮かべながら、看護婦を彷彿とさせるような白いドレスに白い縦長の帽子をかぶる女性が立っていた。
ティナと同じ淡いピンク色の髪がなびき、淡い黄色の奥にはイプシロンに対する怒りと、ティナに対する優しさが垣間見える。
女性は帽子を取るとゆっくりとティナに近づき、そっと抱きしめる。
「また、中央府に行くのでしょ?
寂しくなるわ
お母さんもお父さんも、ティナの活躍をずっと聞いてた
ずっとここにいて欲しいけど、そうはいかないのよね」
「うん」
「会えてよかった…
ニコルちゃん、瑠香さん、アリシアさん
マリウスさん、ウィルムさん、シェリルちゃん
ティナをいつもありがとう
レイラ様、ココ様…本当にありがとうございます」
「謙遜なさらないでください、アシュリー看護婦長
ティナさんがいなければ、私たちはここまで辿り着けませんでした
お礼を言わなければいけないのは、私たちです」
レイラが深く頭を下げて、ココやニコルも頭を下げ瑠香も頭を下げる。
ぱっと顔をあげ、気がつけば瑠香の目線には真っ白な世界と石鹸の匂いが全身を包んでいた。
「ティナのお友達になってくれてありがとう
びっくりさせてごめんなさい
ハグはティナと友達になってくれた女の子にはやってるの
…あなた…そう」
「…ありがとうございます」
「あと忍さんはダメね
というか療養院でお礼は言ったから今回はなしで!」
「あざっす」
どこか含みのある言い方にニコルとティナは互いに顔を見合わせ、何かを察したかのように瑠香の顔色を伺う。
表情はヘルメットを目深に被っているせいで見えないが、わずかに肩が震えているのを見て、確信に変わりつつあった。
「それではみなさん
さようなら、またここに来ますから!」
ありがとう!
またプロキシマに来てね!
大好きだよ!
暖かな歓声を受けて瑠香達は五トン半トラックを動かし、中央府に向けて前進する。
イプシロンが率いる門の一族のおかげで、ヒメネズが率いていたヒドゥラ盗賊団が壊した転送門が復活し、中央府直通が可能になった。
これで本来のパイプラインが復活し、ものや人を運ぶのが容易になった。
「でもまあ、難点は禁足地とプロキシマ街の中間ってところだよね」
「それを除けば、すっごく便利だよね」
運転手の瑠香と助手席に座るニコルが和気あいあいとしながら車に揺られながら、転送門への道順を追っていた。
本来、忍が助手席に座る予定だったが生酔いと吐き戻しの注射を打たれ死亡し荷台に乗せられたまま動かなくなったのだ。
(恥ずかしいけどごめんね
俺も気持ち悪い…うぇ)
(なんであんたも飲まれたのよ旦那ぁ!)
見送られる際ずっと顔色が悪く、ふらついていたマリウスに声をかけることをやめて叱責するアリシア。
荷台の折りたたみ椅子に毛布やクッションを置いてお尻ガードにクッション代わりに酔っ払いを固定し動けなくしたのだ。
気持ち悪いコールが荷台を貫通して聞こえてくるため呆れて何も言えない。
「ねぇ聞いた?
ウィルムが妖精ウルムになった原因」
「捕まったジャスパーが関係してるんでしょ?」
「そっ!
ウィルムは精霊使いで、ジャスパーがかけた人間と精霊を融合させる呪いの解除をやってたんだって
だから解除されないように、己の好奇心が影響して
ウィルムと使い魔のシェリルちゃんを融合させたらしいよ」
「「最低やろう」」
ウィルムの身の上話が盛り上がることなく、しばらくの沈黙が続きニコルは重い口を開いた。
「ねぇ、瑠香のお母さんってどんな人なの?」
「お母さん?
優しいけど怒ると怖かったよ
二日酔いのお父さんをしばき倒してたってお父さんが言ってたね
看護師さんだったから、余計にだってさ」
「…そっか」
「ティナのお母さんにいい子いい子された時に、泣いてるの見られていい加減、私のことも言わないといけないなって思ったのよ
ティナとニコルが思った通りだよ」
「ごめん、聞かれると嫌じゃないかと思ったからね」
「いいんだよ別に
もうお母さんのことは、昔にカタはついたから」
「…ねぇあそこ誰か飛んでる」
「うそん」
転送門到着まで残り15キロと迫った時、何かに追われるように飛び続ける人のようなものが視界に入る。
転送門までの道中は、大型車両はなんとか通行できるがガードレールのない崖道が続く。
その下は樹海のようになっており、魔物や凶暴な野生動物の宝庫になっているがゆえに、崖道を通らなければならない。
もう一つ回避できるとすれば、飛翔しながらの移動になる。
そんな人もいるのかと思ったが、雰囲気が違う。
「なんか後ろから変なのが飛んだ来てるよ!」
「なんだ、私のいる世界で見たことのある天使に見えるけど頭が三つに腕が4本ってきも!」
「最悪なことに気がついたんだけど、あれ…
ルーシーかもしれない」
「は!?!?
ルーシーって、私たちが探してる!?」
「あり得るよ!
あの甲冑とあのマントの色、間違いない…
ルーシーが飛んでる!」
「理由はなんでもいいから、助けないと!
荷台側の忍さん聞こえたか!
戦闘だ戦闘!」
トランシーバー越しに荷台側の忍を叩き起こし、慌てたかのドスドスと音を鳴らしながら激しく揺れ始めるトラック。
『悪いがもう、ここからでも射程圏内だ!
どう見ても気持ち悪い敵が出てきやがった
撃つぞ!』
空を飛ぶルーシーらしい存在の体から時より赤い何かが空中に浮遊するのを見てたまらず忍は引き金を引いた!
瑠香とニコルとティナは無事にお酒に飲まれることはなく、というよりも一滴も飲んでいないので何も起きませんでした。
忍とハルウェルとイプシロンというかいい年した大人達が酒に酔っ払い次の日に無事、死亡するという最低な結果になりました。
レイラやエルブスももれなくダメ人間です。
ティナ「本当に酒臭かった」
ティナとニコルは勘づいてましたが、瑠香は2人と違って母親が…。
理由はいつか明かされる日が来ます。
転送門に向かう最中、空を誰かが飛んでいました。
しかも何かに追われているようです。
ティナとニコルがいうには、なんと探していた皇女。
ルーシー・アストライオスその人なのだとか!
次回救出作戦決行です




