未来を見れなかった父親
投稿をずらすほどにタイムリーなお話です
中には嫌悪感を抱かれる方もいらっしゃると思いますので、一目見て無理って思ったらお逃げください。
それでもええでって言う方はゆっくり見てくださると幸い。
「さてリリーちゃんはお昼寝でいなくなったおかげで話しやすくなったな
ウルムも手伝いお疲れ様」
「いやぁ、マスティさんから採れたて野菜山ほど貰っちまったし
アイテムボックスに仕舞えるか心配だったんだっち」
「採れたて野菜…」
「採れたて野菜…」
「採れたて野菜っしょ…」
「採れたて野菜…」
「採れたて野菜…」
「採れたて野菜…」
「狂気じみてるからやめろ!」
全員の顔からガンギマリ臭と、採れたて野菜に対する謎の執念がウルムに恐怖を植え付けたことにより、縁側でリリーと昼寝をしていたニコルの母であるエリーの尻尾が縮み上がったのをニコルは見逃さなかった。
(ニコル、いつの間にかこんなにも)
(ごめんお母さん!)
「エリーさんには後で謝らないとなぁ
じゃあ本気で俺が何者で、瑠香のことを瑠香と言い続ける関係なのか
それを伝えよう」
時は日本の歴史における1913年。
忍は故郷の、千葉県船橋市で生まれた。
生まれたと言っても寺に捨てられ、生みの親の顔も知らず寺の住職とその妻に育てられた。
その後、小学校・中学校を経て旧陸軍に入団し1938年ごろには伍長、瑠香と同じく三等陸曹とほぼ同じ階級までに順当に登っていた。
だが全てが立ちいかなくなったのは、これからすぐのことだった。
心の奥底で起きないと思った戦争が勃発してしまったのだ。
「そこからは悲惨だったよ
最初こそ、勝ち戦って言われていたが俺はそう思わなかった
俺は元いた部隊から放り出され、気がつけば挺進隊に所属していた
瑠香と同じ落下傘部隊ってやつだ」
忍が所属した挺進連隊。
今の空挺団の先祖に当たるが、華々しい活躍が当時の世間では取り沙汰されていた。
南印と呼ばれる地域を落下傘で強襲し敵軍から奪い取り、ティナ達が乗っている高機動車のような車の燃料を確保していた。
だがそれも戦局の悪化と大勢の仲間の死が度重なって、忍の心は疲弊を超えていた。
「その頃に俺の娘が生まれた
トメ子って言うんだよ
そう、瑠香のおばあちゃんだ」
「この前、缶ビール片手に船橋競馬場行ってたなぁ
90歳になるのにすごいよね」
「「「「「…え?」」」」」
「トメ子、競馬場に行ってたのか」
「歯抜けの酔っ払いを成敗しに行くって言ってたよ」
「「「「「忍の血筋って感じがする」」」」」
「親が俺だからな
…挺進兵の血筋がこれなのか」
話を戻す。
戦局がさらに悪化し敗戦待ったなしの1945年。
忍が軍曹、陸自で言うところの2等陸曹に上がって少し経った頃だった。
あるお触れ書きがとうとう発動した。
その名を義号作戦、己の命を持って敵に侵略された飛行場を機能不全、奪取するのが目的の攻撃であり死は免れない作戦でもあった。
若くて18歳、忍のような30超えた古参の兵隊も志願してその日を迎え、5月の某日に決行された。
「飛行場…この前、レイラさんたちがコカトリスに追い回された時に変身したでしょう
敵もアレとは違うけど、飛行場に山ほど駐機させていたんだ
俺たちは、俺たちの乗っている飛行機で強行着陸して敵のを壊しまくった」
「それでどうなったの?」
「…俺は敵の飛行機に爆弾をくっつけて壊して回った
そして敵と出会って、後は察してくれないか
あまりにも悲惨すぎて言えないよ
アリシアにも応えるかもだしね」
「嘘でしょ」
敵の度重なる攻撃と味方が死にゆく地獄を見ながら、ひたすらに走り回り攻撃してを繰り返し、忍は凶弾の雨霰を受けて倒れた。
享年31歳。
娘の成長も妻との幸せな生活を全てを未来に託し、己の全てを憎悪と忌避の中に埋もれて行かざるを得ない。
未来を見れない父親の1人となってしまった。
「不思議なことに俺は、瑠香に出会った
俺が死んですぐに未練タラタラな俺はひたすらに故郷を目指して歩いた
それは仲間や上官も同じ歩いて歩いて、何十年と過ぎた 3歳の頃の瑠香に出会ったんだよ!
みんながよく聞く習志野空挺団でさ!」
「瑠香は覚えているの?」
「覚えてないんだよ、ティナ先生
でもお母さんが言ってたんだ
銅像のおじちゃんに頭のヨシヨシされてたって」
習志野駐屯地には挺進連隊の功績を語り継ぐために様々な遺構が残されている。
その一つの銅像と似たような姿をした、忍が当時3歳の瑠香に出会い未来で家族と再会したのだ。
それと同時期に忍は空挺隊員たちから神格されて、祭り上げられる存在になっていく。
「今になって俺には二つ名がついた
出会った隊員は幸運がついて回る
空挺の神様が、見守ってくれるとね」
「だからマーガナルムがあの時言ってたのね
『神に近しい者』って」
「あながち間違いじゃないね
瑠香が空挺降の基礎課程期間中に、何度も現れては愚痴聞いたり応援したり、甘やかして教官の長に当たる叔父貴殿にブチギレられたりしたんだ
幸運を運びすぎるなって!」
「それお父さんも言ってた
『俺の時は、木の陰で鼻くそほじくって擦り付けてるだけ』
『修の時は、枕元に立ったかと思ったら子守唄歌って甘やかして、最終的には仲間呼んでみんなで寝かしつけられてたって』
って文句言ってたよ」
「シュウ?
瑠香のお兄さんが弟さんがいるの?」
「あたいのお兄ちゃんだよニコル
日本にきたら、紹介するよ
どことなく忍さんに似てるから
でもアリシアには教えられない…筋肉マッチョだから」
「筋肉やっほい!」
「会わせててあげなさい!
アリシアのご所望だぞ!
筋肉だぞ筋肉!!」
忍の暗く辛い過去の話を聞いて、軽蔑するかに思えたが全てを受け入れ仲間としてようやく腑に落ちた全員の顔を見て安堵する。
途中で話を聞いていたレイラとココが、忍に対して敬礼に近い深いお辞儀をする。
「レイラさん、ココさん
やめてください…水臭いですよ」
椅子から立ち上がり、深く帽子を被り右手を挙げて敬礼する。
「本当にマリウスはアリシアに甘いっちぃ!
アリシアがすごいホクホクした顔してるっち」
「あなたも十分に甘いわよ!
ウィル…じゃなくてウル吉!」
ウィルと言った瑠香が間違えた瞬間。
揚げ足を取るように誰だと、にやけて聞くアリシアをよそに駅前英会話の先生とふざけて答える。
なんだそれと言っていたマリウスが、何かに気がついたように押し黙る。
街の方から半鐘が鳴り響いていたのだ。
「まさか」
「坂道超えて、ルイスさんが走ってきてる…
前線基地にいたはずなんじゃ?」
「さすが私のココ!
よくわかったわね!」
「みんなぁ、大変だぁぁあ!!
街が、街が盗賊に襲われた!!」
街に戻る準備を手荒く始め、まずいまずいと慌てていた時だ。
確かにマリウスは見たのだ。
ウルムのどこか思い詰めたような、何かを必死に思い出そうになる姿。
「ウルム…どうし」
「何か大事なことを俺は忘れているような気がするっち
俺は一体何者だったんだ?」
小難しさNo.1なお話です。
忍は挺進連隊、今で言う第一空挺団に所属していました。
様々な戦局で戦っていたり、ミリタリー好きな人が聞けばアレかなってなるパレンバン強襲作戦に関わっていたという設定です!
あくまで!
最後は義号作戦に己を捧げて…。
帰りたくても帰れない。
家族がいても未来に託して、彼はその生涯を閉じたのです。
後の未来で神格化され、仲間と共に後輩にちょっかいかけまくり、瑠香が空挺基礎課程(空挺隊員になるための訓練)で怒られたりと無茶苦茶してます。
安心した瞬間、プロキシマの街が襲撃されてしまいます!
助けに行こうとする一団ですが、ウルムが何か呟いてました。
次回もお願いします




