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歌の力

歌って書いてますが私たちの知ってるロックやレゲエとは違います。



牛乳商人や牛飼いや貴族に罪人など多岐に渡る護衛任務が本格的に始まって2週間は経った。


門の一族がもうすぐプロキシマに到着するとプロキシマ防衛隊長のエルブスの耳に届くまで時間は掛からなかった。

しかしプロキシマと禁足地とされる場所までやく30キロ。


魔法を使えばすぐに到着するが、魔力を出せば隣国を刺激しかねない。

もっと言えば、禁足地に魔力が吸い取られるという話もあるくらいだ。






「下手なことはできないんだべ?

魔力を持たない人間でもそこにいけば気がふれるとも言われてるらしいし」


魔術士(マジリスタ)詠唱士(アリアテスタ)の等級関係なくやられるからね」


「そう言えば忍は?

と言うかマリウスさんとアリシアはどこに行ったの?」


「そう言えばレイラママンとココネキもいねぇ」



「「「どこ行ったの?」」」







名のある冒険者パーティがプロキシマに到着し始め、瑠香達はしばらくの間、護衛任務から外される事になった。


瑠香達の本当の目的は失踪中の皇女、ルーシー・アストライオスの保護にある。

本格的に捜索範囲を限定して、山狩を行う必要を考え中央府(ポラリシア)に拠点を構える皇国軍と司法局がプロキシマ街に到着するまで瑠香達はしばしの休息を取る事になった。



「ハルウェルさんが来ようとしてたよ

瑠香の雷攻撃が観たいんだって」


「…いやです」


「おねえちゃーん!

ママがお菓子焼いたから食べようだって!!」



「「今行くよ

マイフェアリー、リリー・ヴォルフガング」」


「私の妹、取らないでくれる?」





草原で寝転がりながら駄弁っていた3人。

リリーの声で我に帰り、ニコルの静止を無視し瑠香とティナはニッチャニチャの笑顔で手を繋ぎ、ニコルの実家に向かう。


ニコルの実家は詠唱士(アリアテスタ)の家系でありながら果物農園を営み、絶品と太鼓判を押され、過去に魔神へ献上されたと言う。


特にりんごが名産で、林檎パイやジャムを作って出店で販売しすぐに完売する。


お忍びでやってきた魔神が買い占めに走り、過去にルーシーや息子のクロノ。

参謀のオリオールや皇国軍兵士からしばかれているらしい。




「ママが作った林檎ケーキ美味しいんだよ!」


「「そうなんだぁ」」


「そうだよ!

あっ、お姉ちゃん

2人のお歌作らないの?」


「お歌…作ってないわ」


「存在すら忘れてた」


「歌…歌ってくれるの?

作るって何?」


「瑠香、ここに座って」




小高い丘に腰掛けるように促され、ティナに羽交締めされニコルが胸に耳を押し当て、目を瞑って何度かうなずく。

数秒後ティナに丘に座るように促し、数秒ほど胸に耳を押し当てたかと思えば一瞬怪訝な表情を浮かべる。


よっしゃと声と共に、ニコルは立ち上がりスッと息を吸い込んで歌うように口パクで歌い始める。



「瑠香ねぇちゃんとティナねぇちゃんのお歌綺麗だねー」


「ニコル…一瞬嫌な顔してなかった?」


「してないよ」





ニコルがティナに対して浅はかな嫉妬を抱いたことを瑠香もわかるぞとばかりに頷く。

そんな醜い嫉妬をしらないリリーは尻尾を揺らして楽しそうに鼻歌を歌い始める。




「歌って言ってたけど、何も聞こえなかったでしょ?

私たち獣人には聞こえるけど人には聞こえない音域で歌ってたからなんだ」




「ニコルや聖獣族の人たちはね

戦闘能力も凄まじいけど、誰かを讃える歌を作れるの」


「すごいなぁ

ちなみに私はどんなイメージなの?」


「すっごく雑な言い方になるけど

瑠香は、青空を飛ぶ爽快感と勇気と決断がある感じ

ティナは、森の中で魔法に満出されながら優しさが溢れる感じかなぁ」



「「原曲できたら教えて」」


「もちろん

あっ忍…なんかマリウスとアリシアに挟まれてるんだけど

何やってるのあれ?」






マリウスとアリシアを探す手間が省けたと喜ぶティナ。

だが忍の両手はアリシアのもつ聖女の鎖で縛られ、マリウスのマントを頭から被り俯きながら近づいてくる。


逮捕されて警察に連行される被疑者のような状態に瑠香の頭の中で違和感が消されそうになる。


そんな状態を瑠香以外はおふざけて喜んでいたのをなんとも言えない表情で見つめる。






「忍おじちゃんもお歌作ってもらった?」


「お歌ってなんだいリリーちゃん」


「とりあえず座ろうや」


「え!?

マリウス君、アリシアさん

お父さん、2人の婚約の宣言の場にいた仲だよね?

証人のところに署名した仲だよね?」


「黙るが良い」


「なんで!?!?」





突然座らされ、肩を抑えられ鎖で縛られ逃げられないようにマリウスとティナにメンチを切られ、ニコルは胸に耳を押し当てて頷く。

忍の謎の絶望感に瑠香の頭の回転は停止し、逆回転を始めるがニコルの怯えように気がつき慌ててニコルと忍を引き剥がした。




「ねぇ忍、本当に忍は何者なの?

歌ってねその人の過去も未来も、全てを理解して作るの

さっきティナと瑠香の歌を作った時と全然違う」


「どうゆう事?」



困惑する忍に、ニコルの家系や歌の力を伝え今の状況をティナが話し出す。

マリウスやアリシアも作ってもらった事があるようで、歌の存在を思い出しそう言えばとどこか懐かしんだ。

だがニコルの引きつった表情に戸惑いを隠せず、ぎゅっと抱擁し頭を撫でた。


泣きそうになるニコルだが、リリーの耳をアリシアに塞いでもらうように頼んで、空に向け口パクで歌いはぁっとため息をつく。



「リリーには聞かせられない

忍の音は…

平和な世界を生きている私たちから、考えられない音なんだ」


「…」


「地獄のような苦しみと痛み、自分に向ける憎悪と呪い

そして敵には畏怖と絶望を叩きつける感覚」



「ねぇ本当に忍は何を見てきたの?

何を忍は隠しているの?

瑠香もあまり話したがらないし、龍生府(ラードーシア)

でみた身体中の古傷と何か関係があるの?」


「…俺の過去を見てしまったのか

いつか話さないといけないって思っていたんだ

いいよ…一回、ニコルの家に帰ってから話そうか」





ニコルの実家に到着し、庭でニコルの母謹製林檎ケーキに舌鼓を打つ。

甘い林檎ジャムがたくさん載せられ、スポンジ生地もしっとりしているが甘味を抑えら、紅茶との相性は抜群だった。


ニコルの浮かない顔と母の忍に向けられる辛そうな顔に、どこか居た堪れなくなる。

今までの旅で勝手に父親モードになって周りを驚かせる存在が、目の前にいるのはアルメリアでも現代日本でも見ない、死を纏った1人の軍人が座っていたのだから。


ゆっくり休んで次の作戦に備えるはずの瑠香達。

冒険者がプロキシマまで来たことによって、護衛任務の回数が減りました。

減ったと言っても実力が問われるわけですが。


リリーの思いつきとニコルの思い出しのおかげか瑠香とティナの歌が作られました。

イメージソングに近いものと思ってください。


瑠香の思いっきりの良さと、空挺隊員の力が歌になり

ティナの魔法と生まれ持った性質の歌ができました。

ニコルの家系はそう言った歌を作ることができるのです。


忍はそうはいきません。

彼はニコルの言う通り、絶望と恐怖を携えざるを得ない人物だったのです。

そのためか明るい2人と違う結果になってしまいます。


今回、妖精のウルムは出てきてませんが次回きちんと出てきます


次回もよろしくお願いします

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