シェアト峠
筋肉の妖精はいます!
でも助けてくれません
己から筋肉の妖精になる必要があります!
「一気に雰囲気出てきたね
エリダヌス街を出て今で2日経ったけど
なんか急に空気が重くなったと言うか」
「アリシアはこの辺りあんまり来ないものね
タリタウス山の南側、精霊府の住民はこぞってこう言うの」
魔のシェアト峠と
「何それ怖い!
無理無理無理無理!
筋肉の精霊様、アリシア・ヴェロナーに筋肉の加護を!」
「そんな妖精いないでしょ?
ニコの記憶にはそんなのいないよ?」
「今、勝手に作った」
「勝手に作ったな!」
「アリシアが作ったんだ!
いるに決まってるでしょ!」
「「うるせーよマリウス!」」
「大声出さないで…気持ち悪りぃ」
ティナとニコル・アリシアとマリウスにルイスが乗った高機動車と後衛を瑠香と忍が高機動車で挟み込んでマスティとヨーゼフ名乗る牛車がシェアト峠の入り口に差し掛かっっていた。
相変わらず前衛メンバーのうるささは異常で、乗り物酔いを起こし、他のメンツは心配するどころか騒ぎ出す始末。
後続に続くマスティ達やその後ろにつく忍もトランシーバー越しに聞こえてくるうるささに元気すぎるなぁと頭を抱える。
それは上空から警戒するレイラやココ、通信兵役のウルムも一緒だった。
『空から見てっけど、前うるさいっちぃ
車だっけ?
めちゃくちゃ揺れてるぞー』
などという忠告も虚しくさらに車は激しく揺れ、あまり怒らない忍ですら少しちくっと言わなきゃかなぁと言い出した時だ。
前方の高機動車が止まり、シーンと静まり返る。
何事だとマスティが気にし始めると同時に、荷台でくつろいでいたヨーゼフの唸り声が響き始める。
「何がどうなってる?
おっ…ティナが出てきたぞ?」
扉を開け放ち、空に向かって手を伸ばした時だ。
淡い光がティナの手の中に集まり、何かを語りかけたあとその光はふわりと空へ舞い上がり、彼方に消えて行く。
その場にいた全員が何をやっているのだと疑問に思うと同時に、瑠香とアリシアは高機動車の天井ハッチを開けて重機関銃に手をかけていた。
「今さっき連絡があったの
魔神様が『今までの呪具と攻撃にエストラゴが関与している』って
そしてもう一つ、この事を伝えにきてくれた精霊なんだけど」
「ティナちゃん乗って!
あいつらがきた!」
アリシアが叫び、全員が声の方向を見てたまらず瑠香は重機関銃の槓杆を目一杯引いて放ち、引き金に指をかけた。
全員が攻撃魔法を繰り出そうと躍起になるが、何かに気がついたかの様に瑠香は、呆然と見つめていた。
「なんで、ここにいるっしょ?
関係ねぇはずなのに、なんでここに?」
瑠香達が高機動車を、走らせてきた方向からゴブリンやならずものを携えて何かが走ってくるように見えた。
だがその後ろに誰も気がついていないのか。
それとも瑠香だけに見えているのか、日本でしかいないはずの人物がにっこりと笑って見つめていた。
じっとりと獲物を狙うようにゆっくりと近づいてくるのを、嫌悪感と吐き気の両方が襲い掛かろうとする。
「か…る…おい瑠香!
急いで前に走らせるぞ!
あいつら、ハルウェルさんが言ってた連中だ!」
「あっ…うん!
全速前進、こいつらから距離を離す!
機関銃発砲!」
空気を弾き飛ばすような爆音が鳴り響き、一斉にエンジンを吹かせてシェアト峠に向かい駆け抜け始めた。
それは集団もの同じで、機関銃に装填された魔法弾を喰らってもなお走り続けてきた。
その後を何かを試すかのように、瑠香の見た幻影がゆっくりと追いかけ始める。
「空からも防護しないとまずいわね!
ココちゃん、思いっきり炎を吐いてあげなさい!」
「あいよぉ、我が王!
行くぜ行くぜ…豪炎龍牙風!!!」
「あちぃっちぃ!」
魔力を込めて炎を生み出したかと思ったココ。
炎を口の中にしまい込んだかと思えばヂリヂリと音を立てて煙を吐き、一気に地面に向けて放つ!
そしてウルムはココの頭の上に乗っていたせいで巻き添えを喰らう!
瑠香の後方500メートルまで迫った盗賊集団が、一目散に逃げ始めたかと思えば空に向かって、弓を弾き始める。
「させるか!
重機関銃の餌食になりたくなかったら逃げろよなぁ!
発動、普通科機関銃…効力射!」
「いきなり本気出すなぁ!」
雷鳴が鳴り響き、一撃の雷光が集団に向かって弾き飛ばされて行く!
逃げ惑う盗賊集団もいたが、追いかけるように弾道が動き回り足や腕に当たったと思えば、一気に敵は感電し動けなくなった!
すごいと驚愕し手を叩こうとしたルイスだが、天井ハッチから躍り出たマリウスが弓を弾いて進行方向に向かって放った!
「前に回り込んで攻撃しようなぞ100年早い!
一閃破魔!!」
マリウスの放った鏃が四方に分裂し、炎をあげて前方から来る敵に向かって突進する!
予期しない斥候だが、マリウスの機転で撃破され悔しそうに雄叫びを上げて敗走し始めた。
「なんという事だ
あの荒くれ供を倒したというのかい?
ヨーゼフ爺さんの孫はすごいなぁ!」
「何を言っているんだい!
当たり前だわな
…でも、後ろを守ってくれている女の子
あの子がずっと後ろを向いたまま固まってるんだよなぁ」
瑠香の見た幻影は、敗走する盗賊集団に一瞥もせずただ瑠香達を見つめていた。
気が済んだかのように消えたかと思ったが、ほんの一瞬だけ紅光を灯して遠く彼方に音も立てずに消えて行く。
一度被害を確かめよと、姿隠しの魔法を発動させキャンプを設置し、宿泊の準備をしようとしていたレイラがぼーっとする瑠香を見つめて駆け寄る。
「どうしたの?
何か嫌なものを見た顔をしているわ?」
「盗賊集団の中に幻影を見たんです
そいつの様子が知り合いにそっくりで
なんで、ここにいるんだと思ったんです」
なんで、なんで恵子ちゃんの旦那さんのような。
なんで花岡白バイ隊長さんがあの場にいたんだよ!
魔のシェアト峠です。
ここから先、なんでもありな盗賊が山ほど出てくる!
ってことではありません。もののけもいれば盗賊もいれば幻影もありです。
走り始めたら早速盗賊とエンカウントしてしまいました!
追い払う前に瑠香がやばい幻影を見たようです。
でも追い払わなきゃいけませんからね!
盗賊の目的は何であるのか、ティナが言おうとしたことはなんだったのかまだまだ波乱は続きます。
そして幻影は前にルーシーと、出会った警察官の姿をしていたのはなぜでしょうね!
次回もお願いします




