7話
それから次の訓練所での訓練の日になるまで俺は修行をしていた。
記憶図書館で魔法や聖法の練習を魔力が無くなるまで行ない、魔力がなくなれば記憶図書館で武聖の知識が書かれた記憶の本で勉強を行なう。
記憶の本で覚えた内容通りに記憶図書館の中で行なってから、改めて現実世界で身体を動かして肉体を鍛える。
身体を動かすのもしんどくなるくらいに動かしたら、魔法と聖法の両方を使って傷付いた筋肉の超回復を促し、それが終わればまた回復した魔力を使って魔法と聖法の練習を行なっていく。
朝から晩まで身体を鍛えて、魔法と聖法を使える状態にする。時折り休憩として双子と遊んだり、両親からそれぞれ2人のジョブに関する知識を実践も込みで教えて貰いながら過ごした。
そして今日はいよいよ訓練の日。
今日は模擬戦で俺と全く同じジョブを持つアークスと戦うことになる日だ。
「逃げなかった様だな!」
「なんで?」
本当になんでアークスは俺に喧嘩腰なのだろうか?まあ、そう言う奴だと分かってるが逃げる訳ないだろうに。
アークスのジョブは俺と全く同じトリプルジョブでの対決。これまで訓練所での自主練すらもやらないアークスと戦ってどちらが強いのだろうか気になるところだ。
続々と訓練所に人が集まっていくと、アークスは俺から離れて他の子供たちのところに向かった。
その中にはアークスが俺に模擬戦をしようと言ったあの時に近くにいた神父の娘のサーヤが居るのも確認できる。
アークスはサーヤが居たから向こうに行ったのかな。と思いながらストレッチをして体を温めておく。
そうして始まった2回目の訓練。
まずは走り込みからだ。
2回目の訓練日までに毎日俺は身体を鍛えた。魔法や聖法も使用してだ。
1週間の間に俺が思っている以上に体力が増えていた。初めての訓練の日よりも走り終わった時の体力が残っている。
呼吸を整えながら模擬戦相手になるアークスはどうだと見てみたら、どうやら疲れている様子を見せずに走り切っていた。
アークスは村長の息子だからか良いものを食べて肥満体型だ。
そんなアークスが疲れていても走り切れていることに驚きを隠せない。
よく走れたな。と思って見ていると俺が見ていることに気付いたアークスが鼻で笑う仕草をしてきた。
なんだアイツ?と思いながらも武器の素振りを行なう前には若干の荒れていた息は整った。
俺が息を整えてから少しして最後に走っていた者が走り切ったことでそれぞれ武器庫から素振りと模擬戦用の武器を持っていくことになる。
今回も俺は木剣を使うことにした。
武器庫を出る時に見えたがアークスも木剣を使う様だ。
素振りの時間は整列して並んで素振りを行なうことになり、俺の左前にアークスが見えた。
素振りをしながらもアークスの様子を伺う。
初めての訓練だと言うのにアークスの振るう木剣は綺麗な素振りだった。
見本にしたいくらいには綺麗な素振りをするアークスに、前々から訓練所を使わずに素振りをしていたのではないかと思ってしまうくらいな綺麗な素振り。
俺でもあそこまで綺麗な素振りは出来ない。
これは同じジョブでも補正される力に違いがあるのではないかと疑ってしまうほどだ。
同じジョブでもジョブの補正は変わらないと聞いたことがある。
ジョブが同じでも強さに違う場合は大抵レベルの違いや才能の違いにギフトを持っているからなどの理由がある。
そう考えると俺よりもアークスの方がレベルが高いか、才能があるのか、戦闘系のギフトでも生まれた時から持っているかだ。
俺もあの神様からギフトを貰っているが戦闘系のギフトではないし、アークスの方が才能があるとは思いたくはない。
村長の息子だからこそ秘密裏にレベル上げをしていてもおかしくはない。
アークスはレベルを上げた。だからこそ自信満々に俺と模擬戦をしようとしているのではないだろうか。
でもまあいいか。
レベルだったり、才能だったり、ギフトだったりしても、アークスが俺よりも強かったとしても俺は強くなることを諦めないんだから。
とりあえず格上の相手との模擬戦と言うだけだ。
アークスとの模擬戦での経験も糧すれば良いだけなんだから、今はアークスのことは気にせずに素振りをするのに集中する。
そして、素振りの時間が終わって休憩に入った時にアークスが俺の元までサーヤを含めた取り巻きを連れてやって来る。
「おい、分かってるだろうな。次の模擬戦逃げるなよ?」
「分かってるよ。」
「ふん。ここでお前と俺の格の差を見せてやるよ!おい行くぞ!」
それだけ言って俺を睨み付けるとアークスは取り巻きを連れて去っていく。
何か気に障ったことを言っただろうか?
普通に返答しただけだが。
真剣に素振りを行ない、その前のマラソンでも疲労している体を魔法と聖法を使って癒しておく。
身体を休ませながら次の模擬戦でどうやって戦おうかを考えるが、今の俺では思い付かない。
こう言う時は記憶図書館を利用しよう。
記憶図書館に意識を向かわせた俺は、そこで対武聖に必要な知識を検索し記憶の本を呼び出していく。
「おお、結構あるな。」
呼び出した記憶の本の数が多かった。山の様になっているほどだ。
アークスが使うのは木剣だからと検索する情報を絞っていき、それでも10冊は超えている記憶の本を読み込んでいく。
武聖のジョブだからこそ対武聖用の知識は多く、それでもこれは俺に対しての対策として取られる可能性があるからこそ学び甲斐がある。
そうして全部の記憶の本を読んで覚えて記憶図書館の中で意識体を動かして動きを確かめる。
「とりあえず付け焼き刃だけど準備は出来た。あとはアークスに勝つだけだ。」
記憶図書館から意識を戻した俺は少し身体を動かして覚えた知識を活かす身体の動きを行なっていく。
対武聖を意識した動きをしていると休憩は終了して模擬戦が始まる。
それぞれ模擬戦相手を探す中で俺はアークスの元へと向かった。
「俺を見下すお前は生意気だ。お前は俺より下なんだってわからせてやるよ。」
「見下すって……した覚えがないんだが?」
アークスの奴は俺をそう思っていたのか。気付かなかった。俺としてはアークスなんてどうでも良い相手でしかなかったんだけど。
そんな風に思っていたからこそ見下されているとアークスは思ったんだろうか?




